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ばんえい競走馬の「鞭打」について

ばんえい競馬で見られる、馬に気合を入れるための「鞭打」

迫力があってカッコイイですよね。

でも、見方を変えると、

「鞭で打たれてかわいそう」

「虐待だ」

何て声が聞かれるのも仕方ないと思っています。

果たして、あれは「痛くてたまらないから」走っているのでしょうか?

答えは「NO」です。

本当に痛かったら、馬は後ろ脚を蹴り上げて反抗するか、前脚で立ち上がろうとするはずです。

この「鞭打」に対し、馬がどれほどのストレスを感じるのかという研究を帯広畜産大学の教授が発表したことがありまして、実際、鞭打に対するストレスはほとんど認められなかったそうです。皮膚の厚いばん馬ならではなのかも知れませんね。

しかしながら、どうしてもあの所作自体にアレルギーを覚える人も中にはいますから、

「馬は痛くないんだよ」と、わかりやすく教えてあげる必要がありますね。

ただ、ばんえい競馬を少しかじったことのある人や、なんとばんえい競馬関係者の一部の方までもが、

「あれは鞭じゃなくて手綱の余った部分で叩いているから」

などと言って納得させようとするのです。笑止千万ですよね。叩いてることに変わりはないじゃないの?って。

「じゃあ叩かないで競走させればいいのでは」

と思います。しかしこれが簡単ではないのです。

サラブレッドの平地競馬で、手ごたえの良い馬が一発も鞭を打たれないままゴール!なんてことはありますが、ばんえい競走の場合、よっぽどの軽馬場(馬場水分が多かったり雪が降ったりで、ソリの滑りが軽くなる馬場状態)でない限り、馬は第1障害~第2障害間、そして第2障害の手前でいったん息を入れ、馬を「止める」という所作を入れることになります。

競走馬には「前進気勢」というものがあり、いったん走り出してしまえば、強いブレーキングの扶助を出さない限りは、通常の馬はある程度走り続けるはずです。

ばんえい競走の場合は、上記の所作で「前進気勢」を止めるということをし、そして再び走らせ(歩かせ)なければならないのです。

乗馬姿勢(人が馬にまたがっている状態)では、馬への脚や座骨での扶助、持っている手綱の拳を譲ったり、副扶助として鞭打を使用すれば、止まっている馬を再び前進させることが出来ます。

ばんえい競走の騎手は、乗馬姿勢での扶助を使うことが出来ません。一旦止まってしまった馬を再び動かすには、鞭打をして馬の前進気勢を促すか、バイキ(銜を思い切り引いて馬に後退姿勢を取らせ、その後銜を開放して前進気勢を促す)の体勢から馬を前進させるといった方法しかないのです。

現状のばんえい競走のルールでは、鞭打は致し方ないのかもしれません。音を聞かせるだけなら、ソリを叩くという方法もあるでしょう。将来、例えば鞭打の回数制限等、ルールが改正される日も来るかもしれません。


最後に一言。

ばんえい界では、馬の銜受けを過剰に敏感にするために、馬の口角を切るということをしている関係者がいまだにいるのですよ。こちらのほうがはるかに「虐待」だと思いませんか?

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