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「風の歌を、いつまでも」~ソングオブウインドのサードキャリア~

皆さん、ソングオブウインドという馬を知っていますか?

エルコンドルパサーの産駒で、菊花賞をレコード勝ちし、わずか一年に満たない競走馬生活の中で輝かしい成績を残した馬として知られています。

そんな彼は若くして種牡馬となり、第二の馬生を送りました。

地方競馬の重賞勝ち馬等活躍馬を出し、アイファーソングという後継種牡馬を得て、7シーズンの種牡馬生活に終止符を打ち、功労馬として余生を送ることになりました。

ですがこの時点でソングオブウインドはまだ10歳そこそこ。「功労馬」と呼ばれのんびりさせるにはあまりに元気過ぎました。

まだ老け込む歳でもありませんし、もうひと花咲かせてあげたいと考え、行き着いたのが「乗馬」への道でした。

中央競馬のG1馬が種牡馬生活を経て、その後乗馬ウマとなったというのはあまり例がありません。種牡馬を経験した馬は得てして悍性が強く、たとえ去勢したとしてもその悍性が残ってしまい、乗り手の指示に従わないことがあるかもしれないからです。

でもソングオブウインドは違いました。

乗馬クラブに引き取られ、乗馬ウマになるためのリトレーニングもそつなくこなし、つい先日ドレッサージュ競技デビューも果たし、彼は再び「輝き」を取り戻したのです。今は乗馬クラブのスタッフや会員さんに可愛がられ、「本当にG1馬?(誉め言葉)」と思ってしまうほどの可愛らしさです。(スタッフさん注:実はとても我が強く、G1馬としてのプライドは失っていないようです)

最近「馬生」について、いろいろなところで語られるようになりました。

「馬にものんびりした老後を」とか「年老いてるのに働かせるのは可愛そう」とかいう声を私もよく聞きます。

私も確かにそうだとは思います。でも、人の手を借りて産まれ、人に育てられ、人の周りで生きてきた馬たちにとって、年老いてから野山に放されると、馬たちは却って不安がってしまうということが多いようです。

馬たちは、人の近くにいるほうが安心するのです。

そして、人の役に立つことが幸せと思えるような環境を、人もつくってあげることが大切だと思うのです。もちろん過酷な労働を強いることはいけませんが、馬にとって、いつまでも人に寄り添い、少しでも良いから仕事(生き甲斐)を与えてあげて生かしていくことも、立派な「余生」だと思うのです。

元気にサードキャリアを送るソングオブウインドに会って、改めてそう感じました。

ソングオブウインドの余生が、幸せなものでありますように。

そしてまた、すべての馬の余生が、寄り添う人たちと共に楽しくありますように。

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