Valorantはなぜ日本では流行らないのか?

ヴぁロ

こんにちは、はちQです。

鳴り物入りで登場したValorantも正式サーボス開始から3週間ほど経ちました。まだまだ試行錯誤の中だとは思いますが、個人的にプレイしていて見えてきた点をレビューしたいと思います。

【CS:GOとOverwatchを足したゲームである、という言説は間違っている】

当初はこう説明する意見が散見されていましたが、正直これは嘘です。正確にはCS:GOに少しOWを加えたゲーム、というのが正しいと思います。ValorantはほぼCS:GOです。

OWのゲーム性はピック&スキルに大きく偏っています。体感でいえば個人技能:ピックの比率はよくて3:7、もしくは2:8にもなり得ます。まったく歯が立たない相手に対して、一人がキャラ変更をしただけで突破できてしまう、ということが頻発するのはゲーム性の比重がそれだけキャラ性能に偏っているからです。

一方のValorantは、その勝敗はつまるところエイム勝負です。スキルは状況を動かし有利を作り出すためのスパイスであり、勝敗を決定づける要因ではありません。CS:GOでいうところの投げものでしょうか?それ以上でも以下でもないと思います。

もしValorantがピック比重に偏ったゲーム性であるならクソゲーもいいところです。ピック時点で勝敗が決まるのにキャラ変更できずに最低13ラウンドを戦わねばならないことになるのですから。でも、実際はそんなことはありません。

ValorantのCS:GO要素とOW要素を比較すれば、9:1もしくはそれ以上の比率になると感じます。ですから、ValorantはほとんどCS:GOであり、そこにスパイスとしてOW要素が少しだけ加わっている、と言ったほうが正しいと思います。

【日本ではCS:GOは人気がない】

日本におけるCS:GO人気の低さは異常と言っていいほどです。日本プレイヤーは世界一売れているFPSを世界一遊ばない人たちです

いくつか考察は存在しますが、もっとも大きい理由は日本が世界でほぼ唯一のコンシューマハード産出国だからでしょう。日本は世界でも例外的な、ゲームはゲーム機でやるもの、という文化です。対戦型FPSがCS機で整備され普及したのは実質的に(PS2の007を除けば)PS3のCOD4MWからであり、日本のFPSはPS3時代から始まったとも言えます。

一方PCを基本ハードとする各国のゲーム事情では、対戦型FPSは64時代にはすでに存在していました。FPSはマウスとキーボードでプレイすることを前提に発展した文化ですが、それは結果的に日本人にだけFPSをはじめる機会を失わせる結果をもたらしたわけです。

日本プレイヤーにとってFPSのビッグタイトルとはCall of Duty か Battle Fieldですが、この2つはそれまでにすでに確立されていたスポーツシューター系に対するカジュアルシューターとしてのFPSであり、誤解を恐れずにいえば脇道の一つであり、FPSとしては本流ではありません。CSシリーズの開始が2000年に対し、CoD4MWの発売は2007年末。7年というのはコンシューマハードでいえば1世代分もの差があります。いわばPS2時代からバリバリにFPSをやってきた国々に対して、PS3からはじめた日本はそもそも同じ前提を共有していないのです。

カジュアルシューターから目覚めた日本プレイヤーは、リスポーンなしの5on5攻守爆弾マッチというルールすら馴染みがないわけです。多くのR6Sプレイヤーは、シージの特徴とされるあのシステムが、実はFPSとしては伝統的でオーソドックスなルールの3次元版オマージュである、ということすら知りません。それくらい、日本のFPS文化は特殊な歴史をたどっています。

【CS:GOに人気が出ない日本でValorantが売れる理由がむしろ存在しない】

個人的にはこれに尽きると思います。歴史的にも環境的にも、日本プレイヤーはValorantをやる動機がつかみにくい状態にあります。

5on5の爆弾マッチ、短いマッチを多数繰り返す勝敗システム、これらがまず馴染みがありません。カジュアルシューターに慣れ親しんだプレイヤーからすれば、ストレスばかり多いハードコアなゲームということになるでしょう。

さらに対戦相手である各国のプレイヤーは、CS:GOをはじめとしたこの伝統ルールでの経験をすでに持っています。当然慣れていない日本プレイヤーはいいカモでしょう。このディスアドバンテージは大きく、参入障壁は非常に高いと言わざるを得ません。

そもそもCoDやBFといったカジュアルシューターは、スポーツシューターに欠けていた操作の快適さやアクションの楽しさを売りのひとつとして成功した作品です。要するにカジュアルシューターのほうが動かしていて楽しいのです。これは間違いありません。

Valorantが、移動速度が非常に遅い上に足止めを強要されるという、もっさりで薄いアクション性を抱えている以上、触りたてでの楽しさはCoDよりはるかに劣ります。スルメゲーの類だから噛みはじめはなにもおいしくない、といってもいいかもしれません。

多くの日本プレイヤーはそこでプレイをやめてしまうでしょう。Apexをやってるほうがゲームをしている感覚はあって楽しいのは間違いありませんから。

【CS機の不在やVC前提も別要因としてのしかかる】

Valorantのコンシューマ移植はぶっちゃけないと思います。それはRiot Games のコンシューマ開発経験の有無や需要もありますが、なによりCS:GO系のエイム特化ゲーをコンシューマで出すこと自体に相当な無理があるからです。マウスでもかなり難しいリコイルコントロールをパッドで再現しろと言われても、お金をもらってもやりたくない人がほとんでしょう。動かすだけならカジュアルシューターの劣化でしかないのですから。

VC前提となるチーム戦が日本人には合わないということもよく言われます。これは入り口でつまずくというより定着しない理由と言ったほうがいいですが、日本語のみでストレスなく遊べるゲームが潤沢にある日本の環境では、わざわざVC英語を学んでまでゲームをしなきゃならない理由がどこにもありません。

これらを加味すれば、日本プレイヤーの気質や環境からして、Valorantの楽しさを味わう前に挫折したり、他の選択肢がある中で無理にValorantを選ぶ理由が見当たらずにやめてしまう、という状況は想像に難くありません。日本人は低スぺPCに縛られながら無料ゲームをしなければならないほど貧乏ではありませんし、大会賞金などを夢見てのめりこめるほど夢見がちでも暇でもありませんから、Valorantのターゲットとする層に、そもそもほとんど被ってもいません。

【他の選択肢を凌駕する点がValorantには少ない】

Valorant以外のFPSの選択肢はいくつかありますが、Valorantがそれらに勝るのはエイム特化ゲーとしての完成度くらいです。一点を突き詰めたゲームとしての完成度では他を寄せ付けないものがありますが、それが訴求力になるかは別の話。囲碁の完成度がいかに高くとも、それを理由にはじめようという人など皆無でしょう。Valorantも似たような問題を抱えています。

アクション&ピックとしての楽しさはApexに、ピック&スキルとしての楽しさはOverwatchに、戦略&スキルとしての楽しさはR6Sに、カジュアルシューターとしての脳死プレイではCoDに負けています。

つまり既存のFPSプレイヤーが、わざわざValorantに移行するメリットが薄いのです。Valorantがもっとも刺さるのは既存のCS:GOプレイヤーです(CS:GOに勝てるとは言ってません)その既存プレイヤーが目に見えて少ないのが日本のFPSシーンであり、言い換えれば潜在顧客がほとんどいないに等しいです。

Valorantのβテストで日本が対象地域外であり、中韓キャラがいるのに日本キャラがいない理由(ここはRiotの中華関連問題も絡みますが)もとても明白です。そもそも開発自身がValorantが日本では売れないことをはじめから見越しているのです。

【まとめ】

CS:GOプレイヤーは否定すると思いますが、Valorantは正しくCS:GO系の系譜のゲーム性です。少なくとも日本で一般的なFPSタイトルに比べれば相当CS:GO寄りなのは間違いありません。

日本プレイヤーはCS:GOをプレイせず、開発は日本人向けに作っていない。この状況でValorantが日本で定着する理由はほとんど見出しようがありません。

プロゲーマーや有名配信者たちの中でだけ盛り上がっているか、盛り上げようという意識が存在しているだけで、別にValorantは非常に画期的であるとか、日本でも万人受けするビッグタイトルであるとか、そういう話では決してありません。CS:GOの次回作が出た、くらいに意味合いに捉えているほうが実際のところに近いのではないかと思います。


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