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嘘と栞の季節

昔は(自称)読書家で通っていた自分も、受験・進学で読まなくなって早1年。2022年度はラノベ除いて3冊しか本読んでないらしくそろそろ顔がありません。読書習慣をつけるべく感想でも軽く置いておこうという所存です。

私が敬愛する米澤穂信の新刊「栞と嘘の季節」です。「本と鍵の季節」の続編です。前作の内容半分忘れてたけど大丈夫でした。著にしては珍しい長編、この人の真価は短編にあり、長編は割と間延びしてしまう印象があります。その点では今作は物語の起伏がはっきりしており一気に読めました。題材は短編向きな気がしました。

お話は、図書委員の二人が身の回りでおこる奇怪な事件を解決していくというもの。これも著が得意とする日常における違和感とそこから生まれる謎であり、言うならば「日常に溶け込むミステリ」と呼べるだろう。 彼は日常に向ける観察がとても上手くだからこそ短編が抜群に上手いのだと思う。今回のエピソードは主人公二人が毒花であるトリカブトが使われた栞を見つけ、その秘密を探る。ストーリー全体の感想は、二人の掛け合い、少しずつ真相に近づいていく展開力、嘘のつき合い等惹き込まれるには十分であった。一つ惜しかったのは最後の結末だろうか。もう10ページほどあっても良かった気がするが、その足りないと思わせる終わり方こそが米澤穂信ワールドなのかもしれない。瀬野さんが良いキャラし過ぎている。シリーズ化するならば準レギュラーでお願いします。登場人物の頭が良すぎて著も相当頭良いんだろうなと思った。

先程も述べたように、彼の長編は間延びしてしまう傾向にあったと思う。しかし今作は米澤穂信ワールドを全面に押し出しつつも、散りばめられた謎と嘘、息もつかせぬ展開により一気に読めるような作品となっている。元々の作品に惹き込む力・感情を破壊する結末に作品の面白さを継続させる力が加われば鬼に金棒である。久々に良い本を読めました。

この人の作品って、謎解きに重きを置くのではなく主人公たちと同じ目線で推理の過程を踏んでいくことだと思うから長編の形としては完全に正確を見つけたんだよな

追記
オタクの皆さんは知ってる方もいるかもしれませんが、米澤穂信さんは「氷菓」の原作者様です。アニメーションになるにあたって魅力的なキャラクターデザインが付き、巷ではミステリー要素のあるかわいい娘が活躍するアニメに見られがちですが原作は純ミステリです。ストーリーが面白いと思えた方はぜひ続きを読みましょう。5巻,「ふたりの距離の概算」6巻,「いまさら翼といわれても」は本当に面白いです。
それとは別でただの布教ですが「追想五断章」が1番の傑作だと思っているのでぜひ読んでくれ。

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