呟怖〜拾得物

#呟怖
#拾い物
『余り物に福がある』と昔から言われる。
では『拾い物』には一体何があるのか？
之は『拾い物』に関するお話である。

或る青年が道端で光る物を発見した。
近づいてみてみると其は五百円硬貨だった。
而も一寸変わった硬貨だったのでそのまま
家に持ち帰り調べてみるとレア硬貨である
事が解り青年は迚嬉しくなった。

そういう物を専門に扱っている店では高額で
買取してくれるらしく早速今度の週末硬貨を持って行ってみようと思い床についた。

だがその夜迚嫌な夢を見てしまった。

其は青白い顔をした男が一生懸命手を伸ばし
その硬貨を返せ返せと言って奪おうとする夢

折角の金の成る木を逃してなるものかと青年は懸命にその男から逃げようとするのだが、
男はどんどん近づきて遂に青年に追いついて
青年の首を思い切り締め其処で目が覚めた。

随分嫌な夢を見たなと思い
それから一睡も出来ず朝を迎えた。

それから毎日青年は同じ夢を見る様になり、
段々寝不足が重なり疲労が重なりやせ細って
仕事でも失敗する事が増えていった。

それでも週末になれば大金が手に入るからと
懸命に週末になる迄何とか耐え抜こうとした

そしていよいよ週末を迎えた。

其迄も夢を見続け青年の体力も気力も限界に
来ておりフラフラになりながら硬貨を買い取ってくれる店へと足を進ませていた。

店迄後僅かな所迄来て歩行者信号が赤になり
男は何とか電柱に掴まり青になるのを待った

青になりフラフラになりながらも歩を進める
青年の横からいきなり大型のダンプカーが信号を無視して突っ込んできて青年を跳ねた。

青年は空高く跳ね上げられ
そのまま地面へ激突し即死状態であった。

その時、何故かポケットに仕舞われていた
あのレアコインは姿を消していたという。

或いはレアコインは次の獲物を狙って又、
何処かの道端に落ちているのかもしれない。

皆さんも拾得物は隠匿せず交番に届けましょう。