自己価値~あるセラピストの戦い~

#自己価値

男は胸ポケットからナイフを取り出し
壁に突き立てた、壁際に追いやられた
初老の男性は膝をガクガク震わせて
上も下も水を滴らせていた。

”生憎俺は自己価値が低くてね、
名誉だ地位だなんぞに興味がねえ。

てめぇの命にすら興味が薄くてなあ。

だがそんな俺でも守らなきゃいけない物がある、
てめぇみてぇに自らの地位を利用して
弱い立場の人間を虐める人間を見ると
虫唾が走る。

もしこれ以上彼女にセクハラだパワハラだ
しやがったら今度はその喉元にこいつが
刺さると覚悟しろ!

警察に通報したけりゃするがいい、
マッポに捕まるなんざ屁でもねえわな、
だがその後どうなっても俺は知らねえがな。

もう一度警告する、今後一切女に近づくな、
そして一切の権力行使を禁じる、
もしも破ったら…解るよなぁ、おっさん?”

ナイフを壁に突き立てた
男の目は完全にイッていた。

初老の男性はそのままその場で気を失った。

それから暫くして初老の男性は目を覚ました。
そこに人の姿はなくあれは夢だったのかと後ろを
振り返った瞬間、男は膝から崩れ落ちた。

そこにははっきりと壁に突き立てられた
ナイフがあったからである。

男は腰を抜かしたまま後ずさりその場を後にした

翌日、会社に出勤してきた男は昨日の悪夢を
振り払うように仕事に打ち込んでいた。

件の女性社員が判子を貰いにやってきた。
その書類に目を通しながら最後の頁を
捲った途端、男は椅子から転げ落ちた。

周りの部下が慌てて駆け寄るもそれを制して
何でもないと何とかその場を繕って判子を押し
書類を女子社員に渡した。

其の書類の最後の頁には付箋が貼られていた、
その付箋にはこう書かれていた。

”昨日の事、忘れないで下さいね”と。
それから二度とその上司は部下に対して一切の
パワハラセクハラはしなくなったそうである。

これは実話です。

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