双星演舞あとがたり~後編・カクサバの巻~

雨でいろいろ大変なところもある中、皆様いかがお過ごしでしょうか。ハバネロです。私は「ザ・スーサイド・スクワッド ~"極"悪党 集結~」を見に行くのが楽しみすぎて、会社に傘を忘れてきました。気付いたのは家に帰ってからでした……

さて、こちらは前回に引き続いて双星演舞の振り返り記事です。今回は1記事使ってカクサバについてやっていきます。前回記事はこちら。

また、結果発表動画も公開になっていますので、よろしくお願いいたします。

今回の企画を主催したファミエリさんから私にオファーがあったのは昨年10月の話。まず「カクサバ!?カクサバを今やるの!?2021年だよ!?」とビビり散らした記憶があります。だって前回が12年前だぜ?

そして私に与えられたポジションは、前回のオーキドPと同じ第三軍の長。しかもシンデレラvsミリオンの戦いにシャニマスを率いて殴り込むという美味しすぎるポジション。どうするべきか考えるより前に、脳内になんだか耳馴染みのある声が聞こえた気がしました。
「やってみせろよ、ハバネロ!」(CV.津田健次郎)
「なんとでもなるはずだ!」(CV:私)

283プロの天井社長の声が言うならしょうがない。やってみせようじゃないですか。(BGM:閃光/Alexandros)

■メンバーおよびアイドル、テーマの選出について

さて、参戦が決まったら次にやることはメンバーの召集。今回は「ハバネロ一門」としての出場なので、「シャニマスの静止画MAD」を視聴者は期待するだろう……というところで20名ほど候補メンバーを選出。双星演舞の他企画との兼ね合い等もありましたが、最終的に私以外のメンバーは以下のようになりました。

・ととろP:一門を名乗って出る以上、門下生の筆頭格として絶対に出てもらいたかった。
・いをさん:技術力・数字共にシャニマス公式曲MADといえばこの人。ちょうどソロ曲が一通り出揃ったタイミングだったのも追い風。
・明P:技術力・表現力共に高く、かつ私やととろさんとは違った方向からのアプローチが出来る。
・寺崎P:破門されてる人が一門にいたら面白くね?という悪ふざけが三割、実写素材の多用や彩度低めの画面作りが他にはないスパイスになるのが七割。

「ハバネロ一門」ではなく「シャニマス軍」ならば、伝手をたどって象ちゃんですPをなんとかして召集していたと思うのですが、今回はあくまで「ハバネロ一門」なのでシャニマスで一大勢力を誇る音MAD勢の召集は見送りとしました。

続いてはお題シャッフル用のアイドルとテーマの選出。
アイドルはチーム内で、お題は出場者全員でのシャッフルになります。
シャニマスにおける私の担当アイドルは夏葉と円香ですが、今回は円香を選出しました。夏葉は阿羅他さん主催のR@ndom Scoutで一度出したのと、今回のメンツは円香のほうが料理しやすい人が多そうだな、という戦略的判断によります。結果的にこの読みが大当たりだったのはまた後ほど書きます。
テーマは「伝」を選びました。「伝説」とか「伝統」とか「伝える」とか色々解釈ができるので作りやすいかな……と思ってのことなのですが、「伝説」ってテーマが別で出てたのはちょっと頭を抱えました。そんなことある???
ともあれ、実際にこのテーマを引き当てたファミエリさんが作りやすかったのかどうかは、ちょっと気になるところですね。よしんばクレームがあったとしても受付窓口はございませんが……

■アイドル・テーマ決定から製作まで

テーマとアイドルの割当は参加者のdiscordサーバーにて、厳正なる抽選のもと行われました。私の担当は、アイドル「黛冬優子」・テーマ「熱」と決まりました。
この時の抽選で春香さんを引き当てたメカPが、「もう春香で面白いことなんて10年前にやり尽くしてるよぉ~!!」と唸っていたのが印象に残っています。あと、ファミエリさんが担当である春日未来を引き当てていますが誓って八百長はありませんでした。本当です。

……さて、「冬優子」で「熱」という組み合わせ、黛冬優子というキャラクター自体が「熱い」人間なので、ストレートに作ればテーマ消化は難しくなさそうです。そうなるとあとは選曲をどうするか。
まず最初に思いついたのが、雨宮天の「Silent Sword」。歌詞に「振り回してる情熱の先 誰にも言えない誇りがある」というのも冬優子っぽさがありますし、pSSR「アンシーン・ダブルキャスト」のフェスアイドルはずばり刀を持っているイラストです。ただ、カード一枚分のネタだけで動画の尺をすべて引っ張るのは不可能なので早々とボツ。
続いては冬優子のソロ曲が「SOS」だったことにかこつけてゼノグラシアのOPである「微熱SOS」はどうか?と思いつきました。「笑顔で勝つでしょ だって笑顔は正しいの」というサビの歌詞は冬優子イズムを感じますし、ゼノのOPで出落ちと見せかけてからの「これはガチ動画……!」という展開も美味しい。加えて、あさひがロボットに乗っているpSSRが出たりして、「これは冬優子も同じようなカードが早晩来るだろうし、いい感じに合いそう」という期待もあったのですが、肝心の冬優子のpSSRカードが一向に来やしない。待っている間に締切を過ぎてしまってはどうしようもないので、これも春の時点でアイデアを破却しました(ちなみに待っていた冬優子のpSSRは8月実装だったので、はからずも判断は正しかったということに)。
こんな感じで候補を吟味したり消したりしながら、「キュートな中に強さや熱さがある」という冬優子のストロングポイントを表現したいな、というところに落ち着きました。そこで見えてきた候補曲は、虹ヶ咲の中須かすみソロ曲である「無敵級ビリーバー」と、杏奈の中の人こと夏川椎菜のソロ名義の楽曲「ステテクレバ―」の二択。
どっちもポップなメロディラインの中に、意志の強さを秘めた歌詞世界が特徴です。ただ、現在の冬優子のカードのラインナップを考えると、後者の険の強さが上手くハマりそう=作りやすそう……ということで「ステテクレバ―」を選択。
プラス大将戦のメンツだけは私vsファミエリさんvsどらつーさんで固定なのが決まっていたので、このコンセプトなら他の二人と被らないから不利を受けることもあるまい、という計算もありました。

そんなこんなで曲を決めてからは割とスムーズに製作が進みました。
経験上、一個のコンセプトだけで推し進めるとどこかで詰まったりすることが多い(虹ヶ咲コラボメドレーのASPTとかがまさにそうでした)ので、図形表現を多用するポップ路線+色ズレをアクセントに使うクール路線の2軸で推し進められたのは良かったかもしれません。
また、曲の方もメロディはクール、ボーカルはキュートなのですが歌詞世界は結構攻撃的なところがあって、演出やそういった部分も含めて冬優子の二面性にも繋げられたので、このときばかりは己の才能が怖かったですね(慢心)

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あとは、演出のアクセントとして「交通標識ぽいもの」というのが早々に思いついたのも良かったですね。これのおかげで3カット分助かりました。

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加えて、冬優子というキャラクター単体だけでなく、「ストレイライトのリーダー・黛冬優子」の要素をうまく入れることでバランスよく、カッコいいものに仕上げられたかなと思います。実際は作っていたら冬優子単体ではまとめきれなかったので、サビ後半に他のストレイのメンバーを入れ、それに伴ってAメロとかも調整を入れたみたいな感じなのですが……w まぁ、最初から全部うまくいくなんてことはないのです。

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このシーンは最初冬優子のアピールのみで作ってたのですが、3人にしたことで結果的にいい感じになりましたね。
そんなこんなで納得の行くものが仕上がり、締切もある程度危なげなくクリアできました(※完全にクリアできたとは言っていない)

■対戦順と結果

動画は完成しましたが、各チームの大将にはもう一つ重要な仕事が残っています。そう、対戦順の決定です。ここで他チームの面子を再度確認してみましょう。

○MSC軍(シンデレラ)
dragon2twoP(大将)、ニセP、兄裸P、阿羅他P、赤ペンP
○KAKU-Tail軍(ミリオン)
ファミエリP(大将)、しょじょんP、妖狐P、れのP、メカP

さあ、どう立ち回るべきか。そもそもミリデレがメインのイベントでシャニマスを掲げる我が陣営はある意味不利です。加えて曲者ぞろいのMSC軍に飛び道具も数字もあるKAKU-Tail軍が相手。これは対戦順がかなり鍵を握ります。基本的に他の参加者の動画は見れないので、自軍の30秒の切り出しのみを見て判断するのですが、様々なことを考えた結果、ハバネロ一門のオーダーは以下に決定しました。

・先鋒:明P
敵軍の大将であるファミエリさんもどらつーさんもニコマス歴はかなり長い方です。となると、おそらく先鋒戦は手堅い選出=ダンスシンクロ系の動画になるだろうと予想を立てました。となると仮想敵はMSC軍:兄裸PKAKU-Tail軍はれのP or しょじょんPが濃厚です。KAKU-Tail軍がれのPの場合は、兄裸P同様緻密なシンクロを組んでくるので敵同士で票の食い合いを起こす可能性が高いと踏みました。KAKU-Tail軍がしょじょんPだった場合は、技術点で票を掻っ攫う力が十分にあります。ならばある程度インパクトを出せる人を置いたほうが良いはず……と考えて、「静止画MADの王道かつ目を引く力が強い」という点で明さんを選出しました。アイドルが私の送り出した円香だったのも強かったですね。とにかくあの子は目を引くものを作りやすいので。結果しっかり勝ってくれました。さすがです。

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・次鋒:寺崎P
ここに置いたのはとにかく「阿羅他さんと殴り合ってほしかった」という一点に尽きます。先鋒戦が手堅い選出ならば、次鋒戦はややひねった選出になるはずで、そうなるとMSC軍はおそらく阿羅他さんの可能性が高いはずと読みました。阿羅他さんは演出や画作りにかなり深い意図を入れるタイプなので、同系統かつ相手をよく知る寺崎さんの動画とガチンコ勝負をしてほしかったのです。
また、寺崎さんの動画がアイドルの姿が出ないかつ実写背景で進行する特殊なタイプだったので、KAKU-Tail軍なら妖狐Pあたりとぶつかってもコンセプトの違いで票を集められるかな、という期待もありました。
結果を見てみれば、阿羅他さんとのマッチアップまでは計画通りだったのですが、KAKU-Tail軍からメカPが突っ込んでくるという事故で完全敗北。それは想定しとらんのよ。

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・中堅:ととろP
ものすごいぶっちゃけた話をすると、消去法で決めました。他のメンバーの動画を見た時点で、次鋒:寺崎さん、副将:いをさんはほぼ確定だったので、あとは「楽曲が三月のパンタシア」かつ「アイドルがノクチルのメンバー」という偶然のコンセプトかぶり(※ここは本当に全く打ち合わせしていませんでした)が発生した明さんと&ととろさんの二本をどう配置するか、という問題になります。中堅戦の仮想敵は、MSC軍:赤ペンP、KAKU-Tail軍:妖狐Pで読んでいました。したがって赤ペンPの重油みたいなドロついた重さや妖狐Pの摩訶不思議な妖術を受け流すなら、ととろさんの爽やかさが適任であろう、ということでこの配置に。
結果、しょじょんPとニセPが相手と、ここの読みを完全に外したのは痛恨だったのですが、それでもしょじょんPに五票差の2番手は誇るべき健闘だと思います。一番弟子の面目躍如と言っていいでしょう。

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・副将:いをさん
ここが完全に勝負所と踏んでいました。身も蓋もない話をすると、うちの陣営で一番数字が取れるのは間違いなくいをさんです。したがって、いをさんには一番強いやつをぶっ倒してもらわねばなりません。そう、KAKU-Tail軍のメカPです。
これもまた身も蓋もない話ですが、大将戦が各陣営で一番数字の取れるメンバーでないことが確定している以上、そうなる可能性が高いのは副将戦です。MSC軍の方は、パッと人目を引ける=手描きアニメを作れるニセPをここに投入する可能性が高いと踏んでいました。そうした面子と殴り合ってもクオリティで確実に黙らせられるのはいをさんだろう、ということで確定。
さて、蓋を開けてみればここは赤ペンP、妖狐Pとのマッチアップ。「メカP来ないじゃん!!!」と思わず絶叫。それでも、強いやつを確実に斃すという目的はきっちり果たして勝利。赤ペンさんも妖狐さんも強かな曲者なので、この勝利はやはり大きかったです。そしてこの時点で、全体の勝敗は大将戦に委ねられました。

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・大将戦:私
選曲のところで書いたとおり、大将三人は得意技が全く異なります。そこに勝負の分かれ目があると思いました。
ファミエリさんはニコマス伝統のストーリー系PVに自分独自の味付けをするのが、どらつーさんはパワポを使った可愛いイラストを動かすのがそれぞれ得意分野です。対する私はストーリーと歌詞重視の静止画MAD。このコンセプトの違いが、おそらく視聴者の興味の分散に繋がっていい勝負になるのではないか。対戦前はそういう読みでした。
さて、実際に大将戦の動画を開けてみると、ファミエリさんのはほぼ予想通り(中身には実際「おお!?」と思わされましたが、方向性の読み自体は間違っていなかったという意味です)。しかしどらつーさんのが予想外でした。いつもの可愛いイラストは鳴りを潜め、ダークでクールな世界観を表現しているではありませんか。
「やりやがったなパワポのおっさん!」(ルフィ)と歯噛みする私。ファミエリさんと私がポップ寄りの中でこういう画面は目を引くし、どらつーさんの新境地であるかっこいい路線に寄せられたら厳しいのは私の方では……という懸念が浮かび上がります。
ところが蓋を開けてみると、ノーガードの殴り合いを制したのはまさかの私でした。我々ハバネロ一門が勝利を掴み取ったのです。

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勝利の瞬間、思わず「やったぜ!!」と絶叫していました(※参加者のdiscord鯖で通話しながら見てたのでうるさかったと思いますごめんなさい)。
勿論上記の通り勝つつもりでオーダーを組んでいましたが、特にKAKU-Tail軍の面子がかなり強かったので、一勝でも拾えれば御の字だと思っていたところにこれは望外の出来事と言っていいでしょう。しかも勝負を決めたのが自分という、こんな体験はなかなか出来るものではありません。

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改めて、企画の運営をしてくださったファミエリさん&どらつーさん、ハバネロ一門の召集に応じてくれた明さん、ととろさん、寺崎さん、いをさんに深く感謝を捧げたいと思います。みなさんの力があって、最高の結果を得ることができました。本当にありがとうございました!!!!

■終わりに

12年前、新年会のカクサバを見ていた私は、「すげーな……でもあんなキラキラした舞台には私は絶対お呼びがかからないしな……」と思っていました。
それがまさか12年後、自身がカクサバの舞台に立ち、しかも一軍を率いて優勝するなんてことがあろうとは。
……そもそも日本ローカルの動画サイトの、いちゲームのファンコミュニティが12年経っても存続しているのが色々すごい話なんですけどね。
12年といえば、干支一周です。小学校に入学した子は高校まで卒業するほどの年月です。色んな変化が容赦なく襲ってきます。
この12年間、カクテルもMSCも主催者が変わりました。なんなら前回のカクサバで第三軍の長だったオーキドPに至っては、もう10年以上消息不明です。そもそも、この記事を読んでいる方で前回のカクサバをリアタイしていた人はどれくらい居るでしょうか。
どうあがいたところで時の流れは無慈悲なので、どんなものもいつかは失われます。きつねPからカクテルを引き継いだファミエリさんも、江頭PからMSCを引き継いだどらつーさんも、次回の企画開催は現状白紙とおっしゃっています。
つまり今回のカクサバが現状、伝統あるニコマスの二大企画の最後の一花、ということになるわけです。
それについては寂しいという思いもありますが、一方で形を変えて今日までニコマスが続いていることに嬉しさも感じます。そうでなければ、双星演舞というイベントも、カクサバの12年ぶりの復活もありえませんでした。
私事でいえば、2014年にミリオンライブでMADを作ろうと思っていなければ、2015年に静止画PV講座を書いていなければ。あるいは、シャニマス投稿祭の主催をやっていなければ……今回このような形で、勝利をおさめるということはなかったでしょう。

時はどうあがいても流れ行くものだからこそ、今楽しめることを楽しむのが一番良いのだと私は思います。それと同時に、何かを続けていれば思いも寄らない形で報われることも確かにあるのだな、と感じました。
次にこんな大きなイベントに関わるのはいつになるのか分かりませんが、そのときもまだ広大なインターネットの隅っこで頑張っていられたら、そして願わくば少しでも力を貸せる自分であれば良いな、と思います。

それではまた。
次は9月の第4回シャニマス投稿祭でお会いしましょう!


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