ウマ娘から競馬を見始めたオタク、推し馬のG1勝利を見届けること

よくきたな、おれはハバネロだ。おれは最近ライブ配信の視聴のあいまに動画の進捗を進めたいがまったくおぼつかない。今週もアイドルマスターミリオンライブ7thライブの配信を見ていたら週末が終わってしまった。このことにそこはかとない危機感をおぼえているが、おれの進捗は脚質が「追込」なのでまぁだいじょうぶだとおもっている。そしてそんな心配がどうでもよくなるくらい、ライブは素晴らしかった。6月26日からアーカイブが視聴開始になるそうなので、リアタイを逃したおまえも安心してみるといい。

さて、今回のテーマはそんなライブの感想ではなく、今はやりの「ウマ娘」から競馬を見始めた一オタクが推し馬のG1勝利を見届けてこうふんしている……というそれだけの話だ。

今日は優駿牝馬、俗にオークスとして知られるレースが開催され、ユーバーレーベンという競走馬がめでたく勝利をおさめた。オークスというのはいわゆるG1という最高レベルのレースであり、かつ3歳馬における牝馬最強決定戦である。

こないだまで競馬の「ケ!?」も吐かなかった人間がこんなことを言うようになっているのだから、ブームとは恐ろしいものだと思う。
おそらくさいきん、おまえのフォロワのオタクたちも突然週末に競馬の話をするようになり、競馬をやめる本田未央やツインターボ師匠の画像が以前にもましてリツイートでまわってきていることだろう。

おれもそういう流行にのまれたオタクのひとりだ。おれは別の世界ではアイドルのプロデューサーでありWINGやGRADの流行にはひときわ敏感だが、今回のブームに触れるまで競馬とは縁のない人生をおくってきた。それこそ小学生の頃にほうそうされていた「みどりのマキバオー」のアニメを見たことがあるとか、高校生のころにハルウララブームをけいけんした程度の縁しかなかったのである。

そんなおれだが、1月から放送を開始したアニメ「ウマ娘 プリティーダービー2ndシーズン」を見たことがきっかけで、ずぶずぶとハマってしまった。最近は刀剣だの戦艦だので擬人化はやや食傷気味なのではと思っていたが、そこで繰り広げられる熱いレースや人間模様は優れたスポ根作品のそれであった。

また、アニメの放送中に長い事前とうろく期間を経てサービスインしたアプリの出来もすばらしく、おれはすっかり聖蹟桜ヶ丘にある283プロダクションとお台場にある765プロライブシアターと府中にあるトレセン学園を往復する毎日を過ごすようになってしまった。

そして、何より驚いたことは、アニメで繰り広げられたトウカイテイオーとメジロマックイーンのライバル対決、天皇賞でのライスシャワーの歓喜、オールカマーでのツインターボ師匠の大逃げ、そして三度の骨折を経て有馬記念で奇跡の復活を果たしたトウカイテイオー……これらの熱いドラマはすべて「史実」だということ。

つまり、これらに比肩するようなドラマが、現在進行系で毎週末レース場で生まれているということだ。もともとスポーツを応援することはおれの趣味でもあるし、これは見てみない手はない。そう思った。
しかし、競馬は野球やサッカーとはちがい、地元にチームがあるわけでもない(レース場はあるが)。何を指針として競馬を見ていくべきだろうか?一瞬悩んだが、答えは簡単であった。「ウマ娘の推しキャラの血を引く競走馬を見る」ことだった。

ところで、ウマ娘におけるおれの推しはメジロマックイーンエアグルーヴの二人である。マックイーンはアニメを見てたいへん好きになり阪神の試合のたびにマックイーンになっている(#Vやねんマックイーン でツイッタを検索してくれ)くらいだし、エアグルーヴはゲームをプレイしてそのうつくしいヴィジュアルと高潔な在り方に惚れ込んでしまった。
この二人のモデルとなった競走馬は現在に至るまでその血脈を繋いでおり、その孫や曾孫たちが現役で走り続けていることも、おれにとっては幸運だった。

さて、エアグルーヴの血をひく馬たちについては、これまでG1では悔しい負けばかりが続いている。弥生賞で勝ったタイトルホルダーが皐月賞で惜しくも2着。福島牝馬ステークスの勝利からヴィクトリアマイルへ向かったディアンドルは入着にあと一歩届かず4着。フラワーカップを勝ったホウオウイクセルは桜花賞で11着に終わり、雪辱を期したオークスは負傷のため回避。ストライプは桜花賞、オークスともに奮闘虚しく振るわず。この間一ヶ月半、応援のためにJRAのネット投票で勝った馬券が電子の藻屑になるのをなんどとなく見ることになった。ダービーを控えた世間の注目は、皐月賞を勝ったエフフォーリアと桜花賞からダービーに向かった牝馬サトノレイナスの対決に向いているようだが、おれはダービーでのタイトルホルダーの勝利を心から願っている。

そんな中で今回のオークスで勝ったユーバーレーベンは、メジロマックイーンの曾孫である。というよりも、ウマ娘でもきっての個性派キャラとして描かれているゴールドシップの子、と言ったほうが通りがよいかもしれない(だれだ、シロイアレノムスメとかいったやつは)。したがっておれはエアグルーヴの孫・曾孫達同様に、ゴールドシップの子供たちも気にかけてきたわけだが、これまでG1勝利には恵まれてこなかった。
ユーバーレーベンとのファーストコンタクトは、フラワーカップでホウオウイクセルの三着に入った時に名前を知り、「かっこええやんけ……」になった記憶がある。オタクはみんなドイツ語が好きだからしかたがないのである。
しかし、その一ヶ月後、フローラステークスで彼女はおれにとって特別な馬になってしまった。

初めて馬券の的中をくれたのである。

オタクはちょろい生き物なので、初めての体験をくれた存在にはよわい。これを読んでいるおまえも、ゲームではじめて来てくれたSSRのキャラクターにはなんらかの愛着めいた感情を抱いたおぼえがあるだろう。したがって、フローラステークスでの3位入着によりワイド馬券の的中をくれたユーバーレーベンのことを、おれが特別視するのもしかたのないことなのだ。
そんなわけで迎えた今回のオークス、当然おれはユーバーレーベンを絡めて馬券を買い、ネットで有料で競馬がみれるグリーンチャンネルに登録してレースを見守ることになった。ウマ娘にハマりおよそ4ヶ月、ここまで落ちるとは思っても見なかった。

そして、18頭が2400を走りきった時、歓喜の瞬間が訪れたのは最初に書いたとおりである。
おれにとって、はじめて応援している馬がG1を勝った瞬間であった。

ユーバーレーベンが大外をじりじりと上がっていき、一着でゴール板を駆け抜けた時、阪神が勝ったときのようなガッツポーズをおもわずきめてしまった。勝利を信じて馬券を買った馬がG1を勝つというのは、こんなにもあついものだったのだと知った。そして、メジロマックイーンの血を引く馬が、かつてエアグルーヴの制したオークスを勝ったのだ。はからずもおれの推しウマ娘に縁深い勝利となった。

ひとりのファンにとっても大きな勝利だったが、ユーバーレーベンにとってはさらに大きな意味のあるものだったにちがいない。自身にとって初の重賞勝利だし、ゴールドシップ産駒としては初のG1タイトル、さらに二歳時のレースで三度負けていたソダシへの雪辱も果たした。また騎乗したミルコ・デムーロ騎手にとっては今年初のG1タイトルになる。加えて、3月に亡くなったユーバーレーベンの生産牧場の主である岡田繁幸氏の悲願であったクラシック初勝利達成をも成し遂げた、とのこと。一頭の馬の勝利に、これだけの意味とドラマがついてくるのだから、なんて深い世界なのだろう。

「競馬はなんかギャンブルの匂いがして不健全だ」
おれはこれまでの人生そう思ってきたが、たしかに競馬はギャンブルである一方、レースにはあついドラマと騎手や調教師、馬自身の研鑽の結果が込められている。ウマ娘に触れなければ、この世界についてしることはなかっただろう。

ここからまだG1戦線は続いていく。
エフフォーリアとサトノレイナスの対決にタイトルホルダーが割って入ることを期待したい日本ダービー。
絶対のマイル女王・グランアレグリアにNHKマイルカップを制したシュネルマイスターがいどむ安田記念。
そして春のG1戦線を締めくくるグランプリ、宝塚記念。

また夏になればスプリントレースの時期がやってくる。桜花賞で「出遅れ」と「掛かり」がいかなるものか、ウマ娘から入ったファンに教えてくれた暴れん坊お嬢様メイケイエールは、名手武豊とともにキーンランドカップにいどむとのこと。こちらも期待大である。

そしてまた夏は新馬のデビューの時期でもある。
先程名前を出したディアンドルの全弟・コンジャクションもデビューに向け着々とじゅんびをすすめているようだ。

趣味やそれにまつわる知識というものは、世界に対する解像度をあげてくれるものだとよくいわれるが、おれはウマ娘と競馬を通じて、今まさにそれを体験している。これだから、オタクはやめられないのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?