邦ロック好きなオタクのおまえは、NACHERRYを聞いてライブにいけ

よくきたな。おれはハバネロだ。
昨日は天皇賞(あき)だったが、イクイノックスとジャックドールのニ頭軸ながしだったおれの馬券は、パンサラッサの果敢な逃げにより1000mをつうかした時点で紙くずになることを悟った。しかしあのレースは後世に語りつがれるべき名勝負であり、それを思えば馬券代などやすいものだ。パンサラッサの驚異的な逃げ、そしてそれを差し切ったイクイノックスの爆発的な末脚――まさに究極の勝負だったといえる。

さて、おれはこのレースをどこで見ていたかというと、ライブ物販の列だった。競馬のオタクになって一年あまり、おれの中でGⅠレースの観戦より優先される週末の予定は基本的にライブしかない。
何のライブだったかというと、なんばHatchにて開催された声優ユニット・NACHERRY1st LIVE「Let's start the party!!」である。

これは今年鑑賞したライブの中でもなかなか上位に来るたのしいライブだった。はしゃぎすぎた結果、現在両腕と首の筋肉痛にさらされながらこれを書いているくらいだ。終演後も帰りの電車に揺られつつTwitterでだいぶはしゃいでいたのだが、選り抜かれたおれのフォロワーの間にも、NACHERRYというユニットの存在が思ったより届いていないことを痛感した。
昨日のライブも当日券が出ていたし、ライブのMCでも「ぜひ周りのみんなにNACHERRYを広めて下さい!」(要約)と言われた。したがっておれは今、ひとりでも多くの人間にNACHERRYの存在を届けるべくこれを書いているというわけだ。

いささか前置きがながくなったが、つまるところこのきじはNACHERRYというユニットの魅力を、主にサウンド面から紹介しようというものである。
きのうライブの後ではしゃいでいたら、主にフォロワーの音楽好きオタクたちからけっこう反応があったので、そっち方面から攻めるのがよかろうということになった。これを見て興味をもった人は、ぜひ来月19日に開催される横浜公演のチケットをにぎってZepp Yokohamaへ赴いてほしいと思う。

さて、まずはユニットの概要から語っていこう。
NACHERRYは村上奈津実と田中ちえ美という二人の女性声優による音楽ユニットである。「なつみ」と「ちえみ」という二人の名前からユニット名がとられていることは一目瞭然だろう。

この二人の名前を見てピンときたおまえは、おそらくお台場という土地に思い入れのあるオタクだと思う。この二人は「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」という作品で共演している。なっちゃん(※村上さんの愛称)演じる宮下愛と、ちぇみー(※田中さんの愛称)演じる天王寺璃奈というキャラクターは、ひじょうに親密な先輩後輩コンビといってさしつかえない。アニメでもゲームでも、あいりなの尊さには非情なメキシカンマフィアのボスすら葉巻を取り落とし涙する……という声があるくらいだ[※要出典]。

おれも声優業界をウォッチしてながいこと経つが、同じ作品で共演したキャストをセットにしてユニットを組んだり番組を作ったり……という試みはトレンドになってひさしい。
したがって、おれも二人がユニットをくむという話になったときは、「はいはいよくあるやつね」という感じの反応だった。

ところが、さいしょにはっぴょうされたMVを見て、おれはひっくりかえった。

イントロのベースラインをきいた瞬間に、ロックな魂をもつ人間ならすさまじく体に馴染むそのリズムに気づくこととおもう。
そして作曲者の名前を見て、思わずおれと同じ声をもらすだろう。
「山田貴洋ってあの山田貴洋!????アジカンの山田貴洋!!!???」
このベースラインが異常に体に馴染む理由が一瞬でわかった瞬間だった。
これはとんでもないユニットが送り出されようとしている。そうおもったおれは、一日千秋の思いで1stEPの発売をまった。

そうして発表された1stEP「CANDY SUNDAY」の収録内容を見て、おれはふたたびひっくり返った。

01.フォーチュンテラー
作詞:岡田マリア / 作曲・編曲:山田貴洋
02.silly silly silly
作詞:岡田マリア / 作曲:TAXMAN / 編曲:TAXMAN、山森大輔
03.リブラ
作詞:岡田マリア / 作曲・編曲:TAXMAN
04.HAPPY NACHERRY BIRTHDAY
作詞:岡田マリア / 作曲:山田貴洋 / 編曲:山田貴洋、山森大輔
05.パールを落としたマーメイド
作詞:岡田マリア / 作曲・編曲:山森大輔

「えええええええ!!!??TAXMANってThe BAWDIESのTAXMAN!!!???そもそもROCK'A'TRENCHの山森大輔がガッツリ絡んでるやん!!!!!!!!!」
もう完全に大輔である。山森でなく宮川の方。
だれが声優ユニットでこんな布陣が敷かれることを想像しただろうか。
確かに近年、UNISON SQUARE GARDENの田淵智也や、元SOUND SCADULEのオーイシマサヨシを筆頭に、アニソンにガチのバンドマンが曲を提供する機会はふえている。だとしてもアジカンにBAWDIESにロッカトレンチはちょっと想定できない。あまりにも2000年代~2010年代に青春を過ごした邦ロックのオタク狙い撃ちのメンツである。

続く2ndEP「Now Loading!!」では、作家陣がさらにたいへんなことになっている。

01. Catch me⇄Catch you
作詞:岡田マリア / 作曲:SHOGO / 編曲:山森大輔
02. Brave?
作詞:岡田マリア / 作曲・編曲:山田貴洋
03. MY FIRST DAY
作詞:岡田マリア / 作曲:TAXMAN / 編曲:TAXMAN、山森大輔
04. ナチェリのWa!!
作詞:MICRO、岡田マリア / 作曲・編曲:山森大輔、MICRO

「SHOGOって175RのSHOGO!!!?????いや確か昔電王の劇場版の主題歌歌ってたけどこんなん想定してへんって!!!!!しかもMICROってHOME MADE家族の?????エウレカセブンめっちゃ好きだったんだが!!!!?????」

もうただのやかましいオタクである。すまない。
そしてこれのなにがすごいかというと、作家陣の名前を見て想定される通りのメロディーが楽しめるのである。
山田貴洋の書いた曲はきちんとアジカンっぽいベースラインとメロディラインだし、TAXMANの書いた曲はBAWDIESらしい50年代~70年代のロックを彷彿とさせるパワフルなイメージのままだし、MICROによる曲はとうぜんラップがバチバチにかっこいい。
ガチで女性声優にロックナンバーをうたわせようとしているのである。真剣と書いてマジとよむ、そんな気概がうかがえるではないか。

加えて、全曲で歌詞に関わっている岡田マリア氏の仕事ぶりが素晴らしいの一言。作曲陣がややイカつい感じのサウンドを得意とするぶん、ポップでキュートな歌詞世界がちょうどいいバランスを作り出すことに成功しているのだ。このあたりのバランス感覚は、サウンドプロデューサーを務める山森大輔氏の手腕によるところが大きいのではないかとおれはにらんでいる。
また、2ndEP「Now Loading!!」には「なっちゃん盤」と「ちぇみー盤」が存在し、各メンバーが作詞に挑戦した楽曲「Let's Roll.」「We Fly We Sing」がそれぞれ収録されている。これらはそれぞれお互いに相手に向けた歌詞になっており、これがまたエモい。

そして二人が作詞に挑戦するという試みは、先日発売されたシングル「エクリプス」収録の「Melodious days」にて共作という形で結実する。ぜひ二人のソロ曲を噛み締めてから、もういちどこの「Melodious days」を聞いてほしいと思う。そこではまた違った「エモさ」が味わえるはずだ。
ちなみに全曲サブスクにて配信されているので、興味をもったおまえは、これまで貼ってきたリンクから今すぐ任意の配信サービスにとぶとよい。

そして二人のパフォーマンスも本当にすばらしい。なっちゃんとちぇみーはラブライブという現場で鍛えられているので、とうぜん歌唱力もダンスも標準以上のものがある。一度聞けば「やっぱりなっちゃんはノリの良い曲上手いなぁ……」「田中ァ!こんなかっこよく歌えたんかァ!!!」となることだろう。重厚さすら感じるサウンドに、けっして二人の歌が負けていないのである。

そのガチさはライブでも当然健在である。
現在1stライブの真っ最中であることはすでに述べたが、バンドメンバーがガチすぎるのだ。

Drums:マシータ
Bass & Band Master:MIYA
Guitar:キタムラチカラ(10月30日公演)
yu-ya(11月19日公演)
Guitar:山森大輔(ROCK’A’TRENCH、SKA SKA CLUB)

1stライブに際し、上記のようにバンドメンバーが発表された時、おれは三度ひっくり返った。
「ドラムにマシータ!!!????BEAT CRUSADERSのマシータ!!!!!?????しかもベースとバンマスがZAZEN BOYSのMIYA!!??????まじで???????」
まじでなんか発表があるたびに絶叫してるなこのオタク。
それにしたってガチすぎるメンツである。とくにおれはかつてBEAT CRUSADERSのファンだったのだが、一度も生ライブにいけぬままバンドが活動を停止してしまった悲しい過去がある。2022年にお面ついてないマシータがドラムを叩くのが声優ユニットのライブでみられるとは、誰が想像しただろうか。これはもう行くしかない。したがって、おれは地元関西での公演のチケットを最速先行でもうしこんだ。
その結果見られたのが「最高の景色」であったことはもはや言うまでもないだろう。

邦ロックの最前線を走ってきたメンバーたちによる生のバンド演奏に、それに負けないくらいパワフルなパフォーマンスをしてくれるなっちゃんとちぇみー。二人とバンドメンバーとのやりとりからも、いい関係性を築きながらステージを作ってきたことがうかがえた。
特にステージの下手側でギターを片手になっちゃんとちぇみーのわちゃわちゃを見守る山森さんの保護者のような優しいまなざしは、これまでの道筋を感じられてとてもよかった(どこ見てんの???)
客席の雰囲気もめちゃくちゃ良く、オタクライブとして光る棒を振っているものもいれば、ロックバンドのライブのように拳を振り上げるものも居た。おれはいちおうミックスペンラ(光る棒)をもっていったのだが、この空気感ならおれは拳振ったほうが楽しいなと思ってけっきょく使わなかった。ニジガクのブレードを振っているものもいたし、公式からもライトが発売されているので欲しいやつは現地で物販にならぶといい。
オタクスタイルとバンドスタイル、たぶんどっちも許容されるし、最高に楽しいはずだ。なのでライブの装備についてもとくに制限はない。強いていうならタオルを回す曲があるので持っていったほうがいいかもしれない……ということくらいだ。

とにかく、NACHERRYはガチの楽曲を作ってガチのバンドメンバーを揃えてガチのステージパフォーマンスが楽しめる、そういうライブをつくっている。邦ロック好きの声優オタクにとって、これが楽しくないわけがない。
そしてなんと、こんな素晴らしいライブの次回公演のチケットがまだ一般発売されているのである。くりかえしになるが、これを読んでちょっとでも興味をもったならば、NACHERRYの楽曲を聞いて欲しい。可能ならばぜひチケットをにぎって来月Zepp Yokohamaへ向かってほしいと思う。

そして少しでもNACHERRYにきょうみを持ったその瞬間から、これを読んでいるおまえも、おれたちと同じ「ナチェメイト」になるのだ。
ナチェメイトの輪は、声優好きのオタクも、邦ロック好きのオタクも、おれのようなどっちもかじっているオタクも、きっと受け入れてくれるはずだ。
きのうライブに参加して、おれはNACHERRYのつくる輪がもっともっと大きく、もっともっと盛り上がる未来を見てみたくなった。
どうかこの文章が、その輪が一センチでも大きくなる手助けになればうれしい。そんなことを思いながら、この文章を締めることにしたいと思う。

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