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「くろとしろ」

生まれて初めて嘘をついた
心に小さなホクロが出来た

悪戯っ子が仔猫を弄んでいた
怖くて何も言えないわたし
冬の朝凍りついて動かない仔猫
心のホクロがシミになった

妹が鉄棒で遊んでいた
手放しで回れると言ったわたし
落ちて泣いた妹
母に言い訳をした
心のシミが滲んで大きくなった

宿題の漢字ドリルが嫌いだった
無くしたと言い訳をしたわたし
心のシミはますます
大きくなった

たくさん仲良く遊んだあの子
実はあの子が苦手だった
友達のいないあの子が可哀想だと
見下していたわたし
心のシミはより黒くなった

親にねだってリスを飼った
あれだけちゃんと世話をすると
約束したのに
手の中で震え続けだんだんと冷たくなり動かなくなった
ごめんねを言い続けたわたし
心が裂けまっくろな穴が空いた

大人になることは
心が汚れていくこと
そう思っていた

希望と現実の落差に怯え
自信を無くし
背を向けて

波風立てず楽に進もう
無関心で楽に進もう
目立たず埋れて楽になろう

後ろ向きな完璧主義
初めの一歩が踏み出せず
中途半端が積み重なり
まっくら、まっくろ
うつむいて

暗い想いに囚われて
まっくら、まっくろ
うつむいて


夏の夜のお泊まり会
咳き込み寝付けない私
先生のお膝の上におさまり
優しく背中をさすられた
虫の音と団扇の風
心が静まり白い花が咲いた

隣の大好きなお姉ちゃん
ランドセルを貸してくれた
背伸びをして写真をパシャリ
引越しでお別れの日
寝坊してパジャマ姿
泣きじゃくりながらお別れした
心に甘く白い雨が降り注いだ

ある日置いてけぼりにされ
トイレの窓から家に入り
さびしさに泣き暮れた
母猫がそっと寄り添い
スリスリなぐさめてくれた
心に白く温かい灯りがともる

卒業の時
先生から頂いた言葉
笑顔が素敵なあなた
これからも沢山笑って!
心がムズムズし白い波が立った

林の中で陽だまりをみつけた
空から光の柱が降りそそぎ
いつもと違う空気に包まれ
倒木に横になり温もりを感じた
とろけて広がり曖昧になる
心に澄み切った白い風が吹きこんだ

時間はあっという間に
手のひらをすり抜け
あふれ、こぼれて行く

大切なものをしっかりつかみ
心の白さに目を向けて
まっさら、まっしろ
うえむいて

動いて感じて
環をひろげ
出逢い別れて
環をかさね
まっさら、まっしろ
うえむいて


真っ黒に白い花びら
舞い落ちて
とけてにじんで灰色に

灰色に白い灯りが
降りそそぎ
とけてにじんで銀色に

銀色に白い風が
吹きぬけて
まっさら、まっしろ
真実の光あびて

幸せの白い絵の具で
こころに素敵な絵をえがこう

著者名:
【可児有紀子:海辺の部屋CDO】 ファッションデザインスクールを経てアパレル業界へ。パターンなどの基礎を学びながら、独学でWebサイト制作、ECサイト制作などを行う。医療領域で「医療事務」として10年従事。介護職員初任者研修取得、アロマセラピースペシャリストとして、高齢者、障がい者の介護職に従事。デザイン領域ではAdobe系(Photoshop、Illustrator、XD)を駆使し、マーケティングをベースに「UI/UXデザイン」に特化したWebデザイン、グラフィックデザインを生み出す。 大の「猫好き」で、保護猫3匹と暮らし、保護猫ボランティアの支援も行う。

海辺の部屋ホームページ
https://www.umibe.art/

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