デルタ式で英語CVVCを作りたい

 日本語母語話者は、音素単位で発音を真似るのが一番やりやすいかと思います。つまり、単語ベースでやるとカタカナ英語につられちゃうので、この際だから発音記号のお勉強しちゃいましょう、ということです。

 この世の規格はとかくアメリカ英語準拠なものですが、イギリス英語(※ここでは基本的に容認発音(RP)をさします)でも多少工夫すれば対応可です。ただ、保守派なら母音は英米とても近いので、同じエイリアスは分けて録らなくてもいいです。今風の発音を志向するなら、「い」っぽい発音以外は録り分けるべきです。

 竜頭蛇尾になっていますが、発展途上の記事なので仕方ないです。少しずつ充実していきます。

 とりあえず、この記事は、デルタさんの記事を読んでも発音がよくわからず、「藁にもすがる」な人の藁です。もっといい他がありそうなら他を当たってください。何ならおれも知りたいです。

リストについて

 おれは英語を母語としないので、発音記号から攻略できるデルタ式で録りました。最小構成は7番なのでこれで録りましたが、母音連続はあった方がいいんじゃないかな、と思ったので3番のVVパートを改造して追加しました。一から撮る人は母音連続音を使いたいかどうかで考えて、必要なら3番、不要なら5番で録るといいと思います。ちなみに、使用頻度を考えると、別に母音連続音を頑張って録る必要があるかは怪しいところですが、その場合でも二重母音を母音連続で処理できるようにはしておきたいので、それはリストを改造してでも網羅してください。改造の仕方は後述します。

発音

 母音優先型のリストで大変ありがたかったのですが、間違いなく発音記号を知らないとつらいです。というわけで、IPAの図が読めるように準備から始めます。ちなみに、厳密にはおれの説明も怪しいところがあるので、細部は耳で聞きながら調整しましょう。

御託は要らない人:
①子音をリスト通りに録れ。
②母音は下記を録れ。
米英語: 標準リスト全部。
英英語: ガチガチの容認発音ならアメリカ英語と大して変わらん。ただし、
・eは日本語の「え」で録る。
・Oは日本語の「お」。
・oは要らんが、代わりにQは要る。

発音の準備(母音篇)

 まず、準備体操をしましょう。まず、前提として母音はグラデーションのように滑らかに繋げることができます。「い」から「う」、「う」から「お」を実際に発音してみるとこれはわかると思います。

①限界まで口を横に開いて声を出すとめっちゃはっきりした「い」[i]が出ます。口の中も狭くなっています。ここが一番狭くて浅いところです。

②浅さはそのままに横に開いていた口を緩めていくと、緩め切ったところで浅い「う」みたいなやつ([ɯ])になります。これはIPAの図でいうと右への移動に相当します。このまま口を蛸みたいに突き出せば英語の[u]が完成します。この口を窄めることを「円唇」と専門用語で呼び、窄めてないことを「非円唇」と呼びます。さっきの[i]は非円唇の母音です。

③[ɯ]から口を縦に開いていくと、浅い欠伸のふりをしたような「あ」っぽい発音[ɑ]になりますし、[u]から同じことをすれば、「お」[o]を経由して、マジのあくびした時のような「あ」([ɒ])になります。つまり、図の座標を下に移動していることになります。

④その限界に行き着いたら口を横に開いてみましょう。途中に「あ」([ä])があります。①と逆に左へ図の座標を移動することになります。

⑤縦も横も限界のところ([a])から縦を少しずつ閉じると、「え」([e̞])を経由して①に戻ります。

⑥あと、もう一つ、今までのどこの母音でも僅かな力みというかハリはあったと思いますが、今度はどの母音からでもいいのでそのハリを取って、ため息つく時の、「あ」や「う」に近いがなんともいえない発音に持っていきましょう。これが[ə]です。あの表の中心です。つまり、脱力すると図の中心に寄っていくことにされています。(あまり厳密に考えるとつらくなるので、どこかで妥協しましょう)

ここまでができるようになってからIPAの母音の表を見ると、見えるものが違うはずです。

母音の読み方

じゃあ、感覚を掴んだところで、実際の発音を見てみましょう。

普通はアメリカ英語向けのリストになっているので、もし、イギリス英語で録りたかったら、デルタ式で追加で必要な母音は[ɒ] (英: notのo, X-SAMPAだと"Q")です。

・「い」っぽいやつ

/i/ (デルタ式リスト: i , エイリアス: i )
上記で説明した「い」です。日本語だと「い」をはっきり発音する人はこれになります。きつめの「い」です。英米どちらも同じでいいです。

/ɪ/ (デルタ式リスト: i+ , エイリアス: I )
上記の母音を少し緩めましょう。(⑥みたいなことします)すると、ゆるめの「い」ができます。二重母音に出てくるのはこちらです。英の方がわずかに暗いかもしれません。

・「う」っぽいやつ

/u/ (デルタ式リスト: u , エイリアス: u )
上記で説明された円唇母音です。きつめの「う」になるはずです。ちなみに、英では[i] に寄せた方が今風らしいです。

/ʊ/ (デルタ式リスト: u+ , エイリアス: U )
上記母音を円唇のまま、少し緩めましょう。ゆるめの「う」です。これを非円唇にすると標準語の「う」になります。二重母音に出やすいので、わからない場合は要練習。英の場合は[ɪ] に寄った方が今風らしいです。

・「お」っぽいやつ

/o/ (デルタ式リスト: o ,エイリアス: o )
上でも書きましたが、/u/から口を少しずつ縦に開けていくと、ある時点でこれになります。Wikipediaの音源聴いて、ピッタリ発音が重なるところをみつけていきましょう。ちなみに、日本語の「お」はもう少し開いているので、そこから少しずつ口を閉じて調整するのもありです。英の場合は、日本語の「お」を少しすぼめるくらいでもよく、ついでに下の母音と区別がないのでリストのoとOを同一視してください。設定で増やせばいいので収録は一母音分減ります。

/ɔ/ (デルタ式リスト: o+ , エイリアス: O )
上の/o/は日本語の「お」より口を閉じ気味だったのですが、今度は逆に日本語より開き気味なのがこれです。慣れるまでは素直にWikipediaの音源に頼りましょう。

/ɒ/ (※デルタ式リスト: Q ,エイリアス: Q )

 要は③のマジの欠伸の母音です。英の今風の発音であれば少し口を狭めて「お」に近づけます。これの追加の仕方は後述します。

・「あ」っぽいやつ

/ʌ/ (デルタ式リスト: v+ , エイリアス: V )
上の/ɔ/の非円唇母音がこれです。ただし、イギリスとアメリカではこれが微妙に別々の発音になっている(後述)ので、意図が無いならこれで録ってはいけません。ただ、これを必要に応じて以下の二つのどちらかに置き換えれば問題はありません。もし共存させるなら、両方で録り分けて片方を表情音源扱いするといいです。

/ɜ/

 アメリカ英語ではこちらだとされています。理屈の上では/ɔ/の口にして、横に開いていくとできます。図だけ見るならば、日本語の「あ」から少し口を縦に閉じていくと到達することにもなっています。

/ɐ/ (X-SAMPA: 6 )

 イギリス英語ではこちらとされています。日本語の「あ」よりも僅かに口を縦に閉じるか、/æ/で横方向に口を開いていたのを少し戻して日本語の「あ」っぽくなったところで止めるとここになります。

/ä/ (デルタ式リスト: a , エイリアス: a)

 もはや日本語の「あ」でいいですが、声質などによっては口を横に開いて多少明るく([a])してもいいです。二重母音に出てくる/a/の発音はここから始めても多分許されます。

/ɑ/ (デルタ式リスト: a+ , エイリアス: A)

 ③で出てきた、非円唇の方、つまり欠伸の嘘っぽい方です。

/æ/ (デルタ式リスト: { , エイリアス: { )
 口を横に開き切ったときに「あ」を発音しようとするととても明るい「あ」になると思いますが、あれを少し縦に口を閉じてみてください。(つまり⑤をする)これが途中に出てきます。英では、英らしさを強調するなら口を横に開ききった時点([a])で止めてOKです。(区別するなら縦に口を閉じる必要がない)

・「え」っぽいやつ

/ɛ/ (デルタ式リスト: e+ , エイリアス: E)
 ⑤の途中に出てくる、「え」の、まだ口が大きい方です。日本語の「え」はこの母音と次の母音の間にあります。英米同じ発音でいいです。

/e/ (デルタ式リスト: e , エイリアス: e)
 ⑤の途中に出てくる、「え」の、口が小さい方です。日本語と比べると少し浅く聞こえます。英では日本語の「え」でいいです。

・曖昧母音

/ə/ (デルタ式リスト: @ , エイリアス: @)
 ⑥で書いたので説明はそちらに。出現頻度最多の母音はこれなので、真っ先に原音設定すべきです。英米の違いはありません。

・R音性母音

/ɚ/ (デルタ式リスト: 3 , エイリアス: 3)
 アメリカ英語の母音の後のrで、舌先を奥に引っ込めると出てくる「ァァ↓」です。多少オーバー気味の方が雰囲気あっていいです。イギリス英語の方は/ə/をrの部分に用いて母音連続で処理すればいいので録らなくていいんじゃないかと思います。子音rの発音と同じ(長さが違うだけ)です。

リストの書き換え方(母音)

・CVVC箇所で母音を増やすだけなら、機械的に一母音分(6行)コピペして母音を置き換えて増やすだけです。たとえば、"i_t+i_ji_li_mi"を"Q_t+iQ_jQ_lQ_mQ"のように書き換えていけば増やせます

・母音連続音は基本的には総当たり形式で作成されているので、表を書いてみて新しく出てくるペアを把握したら、前の母音で後続させたい母音をサンドイッチさせてください。つまり、「あいあ」のようにすれば3モーラで、「a い」と「i あ」が採れて、「あ」と「い」の二種類の母音連続は網羅出来ますよね、それと同じことを新しい組み合わせの分だけしましょうということです。

子音

 まずはリストの子音をふつうに網羅してください。tはちゃんと発音するtとそうじゃないtが欲しかったら分けて録ってください。


子音の読み方

・破裂音(stop)
(雑に言うと、"stop"の名の通り、呼気が一旦完全に止まるタイプの発音)

/p/ (X-SAMPA: p)
/b/ (X-SAMPA: b)
 この二つは安心して日本語と同じ発音で録ってください。特に何も言いません。

/t/ (X-SAMPA: t)
 これはふつうはタ行子音なのですが、場所によって面倒です。

[ɾ] (X-SAMPA: 4)
 butterやbetterのtです。これ、日本語の語中のラ行子音です。「おれ」をハキハキ発音すると、タ行みたいな舌をはじく動きになりますが、これが英語に出てくるときはtです。録る時、設定する時は、tの行のtを4に置き換えましょう。容認発音(イギリス英語)を録るならこれは気にしなくていいです。ちなみに、破裂音ではなく、「たたき音またははじき音」(これで正式な訳語で、英語でも"tap and flap")という分類なので、専門的な資料をあたるときは注意。

/d/ (X-SAMPA: d)
 ふつうのダ行子音です。

/k/ (X-SAMPA: k)
/ɡ/ (X-SAMPA: k)

 ふつうのカ行・ガ行子音です。

鼻音(nasal)
(鼻がつまるときれいに発音できなくなるタイプの子音。これの説明でよくある表現として「鼻に抜ける」というのは、「ははーん」と発音したときに鼻息が出ている感じのこと)

/m/ (X-SAMPA: m)
 ふつうのマ行子音です。

/n/ (X-SAMPA: n)
 ふつうのナ行子音です。これは単体だと「ん」ではなく、「ヌ」のようになるのが正しい発音なので注意です。

/ŋ/ (X-SAMPA: N)
 いわゆる鼻濁音です。「感慨」とか発音してみると、「な」に似ていて普通の「が」よりもこもった発音にすることもできますが、これです。

・摩擦音(fricative)
(単体で持続可能なノイズを作れる子音。ここが一番数が多い)

/f/ (X-SAMPA: f)
/v/ (X-SAMPA: v)
 ファ行、ヴァ行子音です。「唇を噛む」と表現されますが、それを忠実に実行されると違う発音になるので、「唇と口内の境目に前歯の先がくっつく」と考えた方がきれいに発音できます。

/θ/ (X-SAMPA: T)
/ð/ (X-SAMPA: D)
 theのthです。上でやったことを今度は前歯と舌先でやります。

/s/ (X-SAMPA: s)
/z/ (X-SAMPA: z)
 サ行・(語中の)ザ行子音です。裏の方の歯茎に一旦舌先を付け、そこから少し離して隙間を作ります。そうすると出ます。ザ行ははっきり発音しようとするとうっかり違う発音になることがあります。(後述)

/ʃ/ (X-SAMPA: S)
/ʒ/ (X-SAMPA: Z)
 歯茎から口の中のやわらかいてっぺん(軟口蓋)までを舌で弄(まさぐ)っていくと、途中にドームの付け根みたいな部分があります。ここで上の子音と同じことをします。決して日本語のシャ行・ジャ行子音ではないです。

/h/ (X-SAMPA: h)
 分類上ハ行子音に使われる摩擦音ですが、こいつの実態は直前の母音の無声化、つまり、囁きのア行です。
 
・破擦音(affricate)
(破裂音と摩擦音が一体化したもの。摩擦音の始まりで破裂にするだけです)
 
/tʃ/ (X-SAMPA: tS)
/dʒ/ (X-SAMPA: dZ)
 [ʃ]/[ʒ]が発音できたら、それの基準にしたドームの付け根に舌を付けた状態からそれを始めると、破裂音みたいな音が加わります。対応する破裂音が[t]/[d]なので、結果として上記の表記になります。
 
/l/(X-SAMPA: l)
 Lの発音です。ただし、tlの組み合わせには下の子音を用います。わからなければ、この差は無視していいです。

[ɫ] (X-SAMPA: 5)
 dark Lです。

/r/
/j/
/w/

リストの書き換え方(子音)

 CVやVC生やすだけなら、テキトーな行を引っ張ってきて、子音をひたすら置き換えていくだけです。

 CCを生やすなら、多分必要な分だけ組み合わせを書いて個別に録った方が早いです。

収録

主CVVCパート

 0〜6番であれば、一行あたり「- CV」「VC」「CV」「VC-」の4つを設定できるので、そのつもりで気を抜かずに発音していきましょう。最後の「VC-」は「っ」を添えるつもりで、余計な息を出さないようにしましょう。

 7番は日本語CVVCと同じように5モーラで録れて楽なようにも見えますが、母音によっては恐ろしい難易度に跳ね上がります。(個人的に v+ の行がキツすぎる)なので、行数嵩んでも3モーラで録るのが、録り直しが細かくできて楽なんじゃないかと思います。

頭子音クラスタ

 子音連続のうち、頻用のものを収録してしまおう、という目的のリストのはずです。母音がないと周波数表がうまく作れないせいか@とありますが、正直単体で録るのであれば、キャラを一番強く反映できる母音ならなんでもいいです。特定の単語を想定して準備されている音素でしょうから、いざとなったら音素を満たす単語を用意して母音長めに発音すれば設定は可能です。そのリストを以下に提示します。

_pr@ : pride
_br@ : brought
_fr@ : friend
_t+r@ : thrive
_tr@ : true
_dr@ : dry
_s+r@ : shrink
_kr@ : crowd
_gr@ : ground
_pl@ : play
_bl@ : blue
_fl@ : flow
_sl@ : slow
_kl@ : clef
_gl@ : glow
_t+w@ : thwart
_tw@ : tweet
_dw@ : dwell
_sw@ : swap
_kw@  : quote
_gw@ : gwan
_sp@ : spike
_st@ : star
_sk@ : sky
_sm@ : smile
_sn@ : snow
_spr@ : spring
_str@ : strike
_skr@ :scratch
_spl@ : splendid
_skl@ : sclerosis
_stw@ : (不明)
_skw@ : squat

尾子音クラスタ


 これも頭子音クラスタと同じではありますが、あまり単語を思いつかないことが多いので、母音を適当に置き換えつつ頑張ってください。3番リストなどになると頭子音クラスタや母音連続音の行に分散されていますが、明らかに行数を削減するためで発音しにくいことこの上ないので、別に独立させてもいいと思います。(7番のリストは独立しているので、こっちを使うとわかりやすいです)おそらく複数形や過去形、序数詞の対策だと思います。

母音連続

 0〜3番では母音連続音が設けられていますが、おれには正直この数の発音を仕分けるのが難しく、これが一番つらかったです。ただ、頻度を考慮すると、あまりに難しいと感じた接続は諦めてスルーするのも手です。ただ、イギリス英語をやるなら@に続く接続は、そこだけ抜き出してでも頑張って録りましょう。「母音+r」の発音に必要になります。
 3番の母音連続だけ抜き出して、5番などと併用してもいいです。また、最後の母音は「V -」なので、語尾息録るなら予め行を決めておくといいと思います。

原音設定

 デルタさんの記事見てください。単子音の設定はよくわかりません。母音連続音が簡単なのでそれを先に済ませておくといいです。

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