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…またか。
空がうすら明るくなり、電車の音が復活し始めた頃、私は汗だくの体で目が覚めた。
まただ、またあの夢だ。といっても何らマイナスのものではない。顔は全く思い出せないが誰かと一緒のベッドで寝ていて、誰かの胸の中で寝ていた。ただそれだけだ。
私のことを知らない人が聞いたらかわいい夢として処理されていただろう。だが私はこの夢をここ三か月の間で何度も見ている。病的なぐらいに。
 「あれが駄目だったんだ」「あの行動があいつを不幸にさせたんだ」そんな考えが頭の中を台風の後の濁流のように流れていく。「あいつ」といっても誰のことかは特に考えないでほしい、強いて言えば、「ひょんなことによりあなたの手から離れてしまった大切なもの」とでもしておこうか、大切なものを失って、ようやっとのとこで立ち直れそうなところにじわじわと、しかししっかりとした継続ダメージが入ると人はどうなるのか、想像に難くないだろう。
 私は壊れてしまっているのかもしれない。
 壊れた。と一口に言っても非常に様々なものがある。身体的な故障や、精神的な故障、あるいはその両方。
私は、どちらかといえば精神的なものになるのだろうか。

少し、昔話をしたい。小学校1,2年生の時分、少しでも気に食わないことがあれば教室の机やいすを振り回し、保健室によく連れていかれた。そんな私を心配した母親は私を小児精神科(正確なものはわからないが)のようなものに連れて行った。そこで受けた診断は、「アスペルガー症候群」。知っている方も多いと思う。自閉スペクトラム障害の一種であり、自閉症患者とは異なり、知的障害や日常のコミュニケーションにはあまり問題がないが、非常にこだわりが強かったり、他人の感情がうまく読み取れなかったりする。私は典型的なアスペルガー症候群であると言えよう、多くの人の話を一気に判別できなかったり、てんで違う発言をしてしまったりすることが多々あった。そんな自分であったが「普通の生活」をさせたい母親の意向もあり、そこまで不自由なく過ごすことができた。そんな「普通」の反動が今来ているのかもしれないなと感じている。昔はかわいい服(ピンク色など)を着用するのにあまり抵抗がなく、プリキュアを見たりして非常に楽しかった記憶がある。しかし、中高時代にいわゆる「男の娘」になりたいなとふと思ったことがきっかけで、女性的にかわいい服を着たい欲望がどんどん高くなり、大学進学後に何着が買い集め、誰も会わない日や女性の友人と会う際ぐらいに着用するぐらいのものであった。しかし、ひょんなことから親にその服がばれてしまったのだ。「そんな気持ち悪い服全部捨てて今すぐ『普通の』服を買い足しなさい!」少しあきれた顔と声で言われた時、頭が真っ白になった。いままでの自分の人生が全否定されたような気持ちになったのだ。親の意向には逆らえず、今まで持っていた数着の服は全部捨てた。
それからだろうか、好きなものに対しての執着心が非常に激しいものになっていったのは。
好きなものを増やして、少しでもお金に余裕があればすぐ手に入れてしまう。そうしてまた「使いすぎ」と怒られるまでが一セット。なんともまぁ悲しい生活なんだろうか、

閑話休題、昔話はここまでにして本筋に戻ろう。もしかしたら私は誰かの愛がほしいだけなのかもしれない、もしかしたら私はアスペルガー以外の精神疾患を持っているのかもしれない。ただ、それを確かめるのにはとてつもないハードルがある。なぜか?理由は簡単。私が就活生だからだ。周りのみんながどんどん内定を持っている中、私はきれいなまでに0。まぁ自業自得といえばそこまでなのかもしれない。ろくなインターンシップ対策もせず。中長期インターンシップにもいかず。それでいて非常に高望みした企業を目指していた。今では身の丈に合った企業を目指し頑張って就活をしている。そんな私にとって非常に大きな枷になっているのは「精神疾患が判明したら就活に不利になってしまうのではないか」ということだ、おそらくそんなことはないし、そんなことで差別をした会社は社会的制裁を受け、新規採用を停止していることだろう。しかしすべてのマイナス要素が今の自分には適合してしまっているのだ。なんともまぁ弱い人間だ。しかし、もう少し、もう少しだけ頑張ってみようと思う。

また、いつか。

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