深謀遠慮
そら、残さなあかんやろ。
簡素で清々しいアメリカンモダニズムのデザインが今でも新しい、
豊郷小学校旧校舎群。
20年前、新町長により突如表明された解体新校舎建設方針によって、保存運動が巻き起こった。裁判沙汰にまでなったこの問題は、旧校舎保存、新校舎建設ということで5年後に決着した。
その後は、数々の映画やドラマの舞台となって、歴史的建造物以上の価値を、
湖東の小さな街にもたらしている。
それ、偶然か。
大手商社の創業者を出した土地とは言え、人口1万人に満たない小さな街。
ヴォーリスの残した建築は、滋賀県内だけでも20は現存している。
大きな波紋を生む一石を投じることで、
全国の注目を集め、保存の為のひととカネを呼び込み、
残し続けて行く大義名分を与えたのだとすれば。
やり方は輝かしい歴史に傷を残したかもしれないが。
さて、問題発言から1週間ちょっとで見送りになった、
大学入学共通テストにおける英語の民間試験問題である。
これ、やめたかったんやろな。
一旦動き始めたら引き返せるものではないのが、官僚制の宿痾。
進めていた側は、皆、ホッとしていることだろう。
千載一遇の好機とばかりに失態の包み隠しを計った下僚も。
泥を被って貸しをつくった大臣も。
失言を仕込んだライターも、な、きっと。