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今まで誰にもお話しできなかった過去

選択の連続である日常。

『道がないけどどのように進もうか?』
『今日はどの靴を履いて出かけようか?』
『お昼ごはんはどこで食べようか?』
『まずどの仕事から取り組もうか?』
『こんな時、どのような言葉を投げ掛ければいいだろうか?』などなど

物事の選択と判断。

感情を抜きにロジカルに考え、選択することが最適という人もいる。確かに感情的になったら正確な判断を下せない場合も多い。

しかし、感情があるからこそ人間味や面白みがあるのではないだろうか?

だからこそどちらが本当に正しいのか?その正解はないのかもしれない。人それぞれの答え、そしてケースバイケースなのでは・・・と考えている。

ではその『感情』が動くというのは一体どんな時だろう?

・美味しい物を食べているとき
・美しい景色が目の前に広がっているとき
・怒っているとき
・驚いたとき
・音楽を聴いているとき
・好きなことをしているとき
・楽しいとき
・スリルを味わっているとき
まだまだある。挙げたらキリがない(笑)。

私がクラフトビールで目指すところ。

簡潔に言うと、誰もやらないことをやって飲んでくれた方の『感情』を刺激し、少しでも笑顔に、少しでも心が豊かになっていただけるように尽くすことです。

なぜ『感情』というテーマにこだわるのか?

それは私自身がクラフトビールに感情を刺激され

バーンアウト症候群つまり鬱

から抜け出すことができたからです。

2013年のお話です。

少し話がズレますが、私はこの年の3月までフリースタイルスキーのモーグルというスキー競技の選手でした。

それまでは

オリンピックに出る!

世界最高峰の舞台で滑る!

そしてお世話になった方々を喜こばせたい!

そんな壮大な目標に向かって、日々トレーニングに励んでいた。

しかし23歳、25歳、26歳と立て続けに膝を4回故障し、選手晩年は過去と現在のギャップに苦しんでいた。

思うように滑れない。

そんな滑りしか出来ない恥ずかしさ、情けなさ、そして身体的物理的な限界を感じ、2013年3月に競技から退いた。

それからは抜け殻のようになり、スキーもすることもトレーニングも全くしなくなった。

かといって新たに出来た時間をどのように使ったらいいのか?何をしたらいいのか?小さい頃からスキーが全てだった私にはわからなかった。

それもそのはず、そもそも今は別に何もしたくない無気力状態。いわゆる

バーンアウト症候群(燃え尽き症候群)

だったのであろう。なぜなら

『オリンピックに出る』『世界最高峰の舞台で滑る』

という今まで目の前にあった目標が消えたからである。

朝起きて仕事に行き、夜に帰宅して寝る。

そんな生活を続けていると、次第にただ意味もなく毎日同じことを繰り返すマシーンのようで、段々と苦しくなってきた。

だが次の夢や目標、やりたいことが見つからない。

『夢や目標がない生活ってこんなにも味気ないものなのか・・・』

夢や目標がないのは悪いことではない。誰にも迷惑をかけているわけでもない。生きる意味や理由なんていらない。

毎日を普通に生きる。ただそれで十分ではないか。

しかし私は罪悪感に苛まれ、夢や目標がない生活を送っている自分を許せなかった。

今後どのように生活していけばいいのだろうか?

とにかくこの無気力状態から抜け出し何かを始めなきゃ。でもその何かって一体何だ?

己に問うても答えは返ってこない。

それからしばらくして、私は当時付き合いのあった方にたまたま合う機会があり

「いま※##@&・・・でして、次に何をやったらいいかわからない。こんな感じで一人苦しんでいる。」

という胸の内を打ち明けると

『はっ?何言ってるの?おれには理解できない。そもそも今までスキーしかやってなかったからこんなことになるんでしょ!』

と全面否定された。

別に理解をして欲しかった訳ではない。自分を肯定して欲しかった訳でもない。

ただ、今の状況から抜け出す小さなヒントでも見つかればと思っていた。

さらに数日後、これまたたまたま別の知人に合う機会があり、同様に今の悩みを相談してみた。するとポカーンとした表情(そりゃそーだw)を見せた後

『いつまでも夢とか目標とか言ってないで早く結婚して子供でも作ったら?』

と話の途中でバッサリ斬られる。

※この時、相談する相手はしっかり選ばなくてはいけないことを学びました(汗)

たまたま立て続けにそんな言葉をかけられたものだから私は

誰かに相談すること、人に会うこと

がすっかり嫌になってしまった。

それからの私は人に会っても『おはようございます』や『お疲れ様でした』等必要最低限のことしか言葉を発せなくなる。

決して深い会話はしない。表面上の言葉だけ。きっと、自分の悩みは他の人には理解できないから。

私は人と話すのが怖くなっていた。

職場の休憩中や同級生の飲み会でみんなが盛り上がっていても、その輪に入りたくない。

いや、入れない。

しかし、心の隅にはこのままではいけないとの矛盾した想いがあった。

人間には口がある。では、その口は一体何のためにあるのか?

食べる、飲むため。それと

言葉を発して相手に何かを伝えるため

にあるのではないだろうか?

自分が小さかった頃、もしくは周囲に小さい子供がいる方は思い出してほしい。

幼稚園や学校であった出来事を

『ねーねーお母さん聴いてー!今日ね、〇〇くんがさぁこんなことをしてたんだよ〜!』

と親に一生懸命話さなかっただろうか?歳を重ねるにつれその機会は減る場合もあるが

本能的に人は、誰かに何かを伝えたい生き物だと思うのです。

そのために口がある。

すっかりそれが出来なくなった私は

になり、『おれは一体何をやっているんだ・・・』次第に自己否定するようになってしまった。

『おれ話すことができないのならここにいる意味ないじゃん!何がハタケヤママサユキだ馬鹿野郎・・・』

(その反動で今は喋り過ぎるようになったのかもしれないw)

周りの人たちが楽しそうに会話をしている中、私だけが違う空間に隔離されているような気がしていた。

今思えば、私はお恥ずかしながら一人で勝手にネガティブなことを考え、苦しんでいました(笑)。


そんな状況が2ヶ月も続いた。

7月のある日。私は出先の帰りに深川市の道の駅横にあるセブンイレブンに立ち寄った。

ドリンクコーナーの冷蔵庫を開け、お茶を手にしてレジに向かう途中、何となくフッとアルコールコーナーに目を向ける。

すると・・・そこには今まで見たことがない缶ビールが数種類並んでいた。

『なんだコレ???』

その中でデザインが一番素敵だった赤い缶のビールが目に留まる。

『コレってビール?そういえば、しばらく酒なんて飲んでなかったなぁ〜。・・・よし、たまにはビールでも飲んでみるか。』

そう思った私は、お茶と一緒にその赤い缶のビールも手にしてレジで会計を済ませた。

その日の夜、私は冷蔵庫から赤い缶のビールを取り出した。普段見ることがないテレビをつけ、ソファーにどしっと座りグラスに注いでみる。

『!?』

私は一瞬驚いた。

なぜなら、そのビールは今まで見たことがないアンバー色で、なんとも言えない香りがフワっと漂うビールでした。

缶を手にしてじっくり眺めてみる。

『こえどビール???さつまいも使用???プレミアムラガー???』

頭の中で?マークが所狭しとギューギューに蠢いている。

私はグラスを持ち、その得体の知れぬビール?をグィーと飲む。

口の中で無限に広がる豊潤な味わい。

絡み付くような舌触り。

飲みごたえのあるボディ。

グラス半分ほど一気に飲み干す。

独特の香りが爽やかに尾を引き、鼻の奥にはその余韻がいつまでも残っている。

『美味い!』

私は思わずひとりでに呟いてしまった。

忘れかけていた感動。まるでカラっからに渇いた心が一気に潤うような。

衝撃的だった。世の中にはこんな美味しいビールがあったのか・・・。そう思った私はテレビを消してスマホで地ビールのことを調べ出す。

『そっか、15年くらい前の地ビールブームから低迷し、近年はクラフトビールとして徐々に盛り上がってきているんだ。』

ヴァイツェン、スタウト、IPA、ペールエール・・・

何が何だかわからないけど他のビールも飲んでみたい!

突然そんな衝動に駆られたのです。

さらにビールのことを検索していると、『地ビール 求人』という文字が視界に入った。

私はハッとした。

そうか!ビールメーカーで働いたらいろんなビールが飲めそうで楽しそう!よぉし、ビール作りをやってみよう!

夜中の0時前。私は酔っぱらった勢いのまま道内の求人を探し、たまたま募集をしていた某ブルワリーを見つけ出した。

翌朝ざっくりと履歴書を書き、応募についての問い合わせをしてみる。すると

『えっ!?札幌の方ですか???・・・とりあえず履歴書を送ってください。』

バイトでの求人だったためか、担当者は私のことを地元の人だと思っていたようです。

数日後、某ブルワリーの社長が出張で札幌に行くとのことで、夏の風物詩である大通りのビアガーデン会場でビールを飲みながら面接をしていただくことになった(笑)。

そして引越しの準備ができ次第、連絡をくださいとの言葉を頂戴し、あっさりと私の採用が決まった。

翌日、親友(私よりずっと年上の)二人にこれまでの経緯を話し、ビール造りをやってみようと思っているとの旨を伝えると

『やりたいことがあるのは素晴らしいことです。見ず知らずの土地に行くということは必ず困難が待ち受けてます。でも、その困難の先には新しい景色が広がっています。遠くから応援してます。』

『おっ、いいじゃん全力でやってこいよ!誰に何と言われようが自分らしく突き進め!お前は間違ってない。きっと新しい道を切り拓ける!』

と、一人は直接会いに来てくれ、もう一人は海外からSkypeで、明るい声と表情で応援をしてくれたのです。

久しぶりにまともに人と会話ができたような気がした。

数ヶ月もの間思い悩み、動くことも人と話すこともできなかった私の話を二人は聞き、背中を押してくれたのだ。私は本当に嬉しくて嬉しくて涙が溢れた。

気づけば無気力、鬱状態から抜け出していた。

そしてあることに気づく。

私は二人から

『プレゼント』

をたくさんいただいたのだと。

プレゼントには2種類あると思っている。

一つはモノなど形のあるプレゼント。

もう一つは形はないがポジティブな言葉や表情のプレゼント。

例えば『その靴カッコいいね〜、とても似合っているよ!』とか『〇〇やってるんだー!頑張ってね!』などはポジティブな言葉のプレゼントで、マクドナルドであるスマイル0円やビールの売り子さんみたいな明るい笑顔はポジティブな表情のプレゼント。

私はそんな『プレゼント』をたくさんもらってきた(今も多くの方々からいただいている。本当に感謝)。周りの方々に育てられて生きてきたのだ。

だからこそ今度は私がプレゼントを与える側にならなくては。


このような学びを経て2013年8月。某ブルワリーがある道東に降り立ったのです。

話が大変長くなりましたが、私は

クラフトビールって美味しい!

と衝撃を受け

じゃー、クラフトビールを作ってみよう!

と思い、さらに二人の友からポジティブな言葉のプレゼントをいただき、クラフトビール業界に飛び込むことができました。

つまり友とクラフトビールに感情を刺激されたのです。

だからこそ私、Hokkaido Beer Porterは

『感情』というワードに拘っております。

飲んでくれた方が笑顔に。少しでも心が豊かになっていただければ・・・。

そしてビールとは他のお酒や食べ物同様に多様性に富み、選ぶ楽しさがあることを発信しなければ・・・。

との想いから、ビール造りをしながらもクラフトビール普及活動を始めました。

最高の景色を眺めながら非日常の空間で飲む山頂ビール、普段クラフトビールが飲めない街での乾杯、樽生ビール普及のためのビールサーバー作り、ワークショップ、イベント等・・・。至らない部分もございますが、もっと進化してまいります。

そして今年は

約100ℓでのオーダーメイドクラフトビール造りも始めます。

これに関しては後々詳細をお伝えしますが、例えば自分が住む街で収穫される作物を使ったビール、お祭り用の限定のビール、小さな飲食店や宿で提供するココだけでしか飲めない世界に一つのビール、結婚式や誕生日プレゼント用のビール、そして自分好みのビールを造りたい!などなど、そんな皆様のお声にお応えします。応援します。

他にも今年のHokkaido Beer Porterは新企画盛り沢山。様々な場所に出没します。

また近々noteを書きます。

今回は今まで誰にも言えなかった、クラフトビール業界に入る前のお話でした。

最後まで読んでいただきありがとうござました😊

『クラフトビールで世界を笑顔に!』

炎のクラフトビール普及活動家 Hokkaido Beer Porter

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