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伊丹空港8:40着。早すぎるので空港でホットのアメリカーノとクロワッサンを買って展望デッキに登る。

大阪にはよく遊びに来るものだけど、あまりに気軽に来てしまうのでいつも飛行機や夜行バスで朝一番に着いてそのままライブ会場近辺のコワーキングスペースなんかに立てこもって仕事をする羽目になる。

そんなんだから朝の空港でゆっくりできる機会は基本的に巡ってこない。
この日だけの特別。

秋の朝の涼しくて少し棘のある空気が呼吸するたびに身体を満たして嬉しかった。
この“涼しくて少し棘のある”を表したくてあの日の朝のわたしが真っ先に頭の中から引っ張り出した語彙は“凛とした”だったのだけど、夕方の自分に怒られてしまいそうで仕舞い込んだのを何故か今も覚えてる。

アメリカーノはアイスがお好みなのだけど(熱くて火傷するからね)、秋の日の朝に空港の屋上から空を臨むには少し不適な役回りに思えて普段は頼まない温かい方をチョイス。

パン屋さんに入るとついベンチマークを取るようにクロワッサンを手に取ります。

温かくて苦いものを喉に通しながら若いお姉さんが飛行機の飛んでいくのを眺めてるのを眺めてた、こんな時間からどうしたんだろう、何考えてるんだろう、と思った。お前も一緒だろ。





初夏の岡山にライブで行った翌日、ふらっと散歩がしたくてバスに乗る前に駅前のビルに入っていたコーヒー屋さんで買ったスコーンが美味しくてずっと記憶に残っていた。

グリーンベリーズコーヒーという関西のローカルチェーン店。
関東は新宿に1店舗だけあるんだけど、新宿には行く機会もなければそんなに好きな街でもないのでなかなか足が届かず、せっかくなのでこのタイミングでもう一度いただいておきたくて天王寺まで足を伸ばす。

相変わらず美味しいスコーンと、“Have a nice day!
”などと書かれたコーヒーカップのスリーブ。

よりによってこんな日に、何も知らないお姉さんが書いてくれた気の利かない一言が面白いような悲しいような、あまりに複雑で捨てられないまま家まで持って帰ってきてしまった。
今も鞄の中に入ったまま。



せっかく天王寺まで来たからとあべのハルカスというやつに登ろうとして、展望台の受付のある17階まで上がってきたのだけど、17階で何故か満足してそれより先には行かなかった。





大阪メトロなんば駅で地下鉄を降りてなんばウォークを歩く。
半年しないうちに2度も来るとすっかり歩き慣れた湊町リバープレイスに向かう道、特に用事はなかったんだけど、特に用事がなかったから今年ライブで来た会場を歩いて回ることにした。

なんばHatch、初めて来たときはフォロワーから北嶋のアー写が飾られてる報告をDMで受けて、2回目に来たときは入場を待ってる間にTKソロのライブ告知が出て、なんかいちいちXIIXとの純粋な思い出の邪魔されてる……?





心斎橋BIG STEP、この中にBIGCATというライブハウスがある。XIIXが2022年最初にライブをした会場がここ。

奥に堂々と立つ女神様、自由の女神か不自由の女神か、そもそも不自由の女神ってなんだろう。

BIG STEPは随分と風変わりなショッピングセンターで、1階は煉瓦造りになっているかと思えば突然ピンボールゲームセンターが現れたり、螺旋状のエスカレーターに乗せられたり。

よくわからないけどとにかく愉しげな建物で、なんだか羨ましかった。

3月末にここに来たときは3ヶ月ぶりに大好きなバンドのライブが観れるのが嬉しくて、半分怖くて、手の震えが止まらなかったのを覚えている。

たまたま隣の席にフォロワーが来て、終演後に唇にヘルペスができたって話を聞いたのを思い出したり、そのまま晩ごはんを一緒に食べて、帰りの夜行バスに時間がギリギリで、バス停まで一緒に走ってくれたのも確かこのとき。






この日絶対に来なきゃいけなかったところ、多分人生でこの先来ないであろうところ。
この会場出口の前の公園の柱が立ってるあたりで「斎藤宏介変だった……」って居合わせたフォロワーに聞いてもらったのをまだずっと覚えてる。

それと同じぐらいTKソロのステージも衝撃的だったんだけど、ユニゾンスクエアガーデンのライブを観に来たフォロワーと話すのに適切な話題はそれじゃない気がして、真っ先に出てきた感想が「変だった」ってそれもそれで変だったかもしれない……


この日本当は終演後ごはん行こうねって話してて、いろいろの都合でその予定はなくなったんだけど、それで良かったのかもって話も確かどこかでしたような。

あの日のライブの少し後、別の仲良しのフォロワーと遊びに行ったとき「前に『空港で演者と出会してもう家の外が全部怖くなった』って言ってたときも心配だったけど今まで会った中で一番様子がおかしかった」って言われたのもずっと覚えてます。



正面の公園では鳩と子供が追いかけっこしたり、とにかく穏やかな時間が流れてて、わたしの知ってるオリックス劇場とは全然違う空気をしてて、どういう気持ちになれば良いか整理がつかなかった。

子供と追いかけっこしてた鳩。








宿にチェックインできるまでまだ少し時間があって、宿がたまたま隣だったこともあり大阪城公園に足を運んだ。

ここに来たのは今年のことじゃないけど、ライブ恒例になったアカシの前の不穏なベースとソロの掛け合いセッションが初めて観客の耳に触れた大切で堪らない思い出の会場。



なんだかわからないけどここで撮った写真ことごとく何を写したかったのかよくわからない……





大阪に着いたフォロワーに声を掛けてもらって合流して、この日の目的地へ。

今年大阪で足を運んだライブ会場最後のひとつ、Zepp Osaka Baysideから臨むUSJの写真。

ここに初めて来たのが5月末、凛として時雨のライブを初めて観たのがそのとき。
4月にTKソロを初めて観て、あまりの複雑で激情的で高密度のステージはわたしには何も理解できなくて、ただ「自分が何を見せられたのか」の答えを見つけなきゃいけない責務の念に駆られて辿り着いたあの日の大阪、そのライブを観たら自分の何かが書き変わってしまいそうな不安に苛まれながら目に映した“USJの裏側”があまりに残酷な現実を突き付けてくるからずっと記憶に残ってて。

この日のライブが告知されたときも組み合わせと同じぐらい会場にいろんな不安を感じたのを覚えている。



開場前の暇潰しにユニバーサルシティにいた。

アトラクションから聞こえる楽しそうな悲鳴とかコスプレ姿のお客さんとか、何もかもが羨ましくて悲しかった。
なんでわたしは“これ”じゃないんだろう?ばっかり考えた。考えても無駄です。

フォロワーと会場まで歩きながら、時雨のファンっておしゃれな人多いよねとか、こんなアンダーグラウンドな組み合わせの対バンに来てしまう感性って実は子供の頃にはできあがってたんじゃないのかなとか、そういう話をした。なんか時間が過ぎていくの一瞬だった気がする。





翌日撮った写真は穏やかな景色だらけだった。

自分の撮った写真にしては整理されてて明るくて、ある種物足りない感じすら覚えるほど。


結局その日のライブのことを“良い思い出”とはわたしは言えなくて、それはそこまで4ヶ月ないし7ヶ月の自分に対する誠意みたいなものだと思っている。

まあでもそれでいいよね、楽しいだけの思い出よりもきっとわたしみたいな人間にとっては苦い思い出の方が大切なものとして残る気がするのでした。
苦!何が好きでわたしこれ飲んでんだ!?って思いながら毎日コーヒー飲んでしまうのも似たようなことなんでしょうか。




36枚撮りのフィルムの40枚目に残ってくれた1枚。
最後の最後まで写そうとしたものだから写真1枚分も写せなくて途中で切れちゃって、がんばって写してくれてありがとう。

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