疾風の荒野

これは戦争だ
誰にもわからぬ わたしによる自身への戦い
とめどなく溢れでる言葉を手のひらで掴め
指先で繋ぎ合わせろ
吐きだして倒れても
はいずり回れ
死なない身体に鞭を撃て
不確定な未来に過去を並べて
陳列した記憶を崩すことなく言葉にしろ
生活が落ち着いたら梅を漬けよう
残されていくあなたのために
死ななくても別れがあることを
大人になったわたしたちは知ってしまった

千年にひとりの才能じゃなくていい
語り継がれる英雄でなくていい
ただ これを読んだあなたがわたしのかたちを留めてくれればいい

血がにじむまで掻きむしって焦燥感に色味を足す。これがわたしの体温、血脈、押し出された内臓、剥がれ落ちた肉の潤い
あなたに似た木を植える
抱きとめ幹の太さを確かめる
肌の滑らかさを、香りを、舌でゆっくりと舐める
あなたがいた
ここにいた
それだけが確かなものならば
いくらだって未来がある

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