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はじまり

年末年始は久しぶりに家族との時間が多くあった。昨年から頻繁に出入りしている、叔母のアトリエの掃除をしたりして。窓を拭くと光の入り方が変わって気持ちがいいなと思う。

2022年は大きな意識の変化があった。私を構成する外側の部分は何も変わっていないので誰に気がつかれることはない、でも自分にとっては、もう20年分くらいの努力が実ったような気持ちだ。

年が明けて、遅ればせながら新海誠監督映画「すずめの戸締まり」を観た。廃墟の扉の向こうに置いてきた、子供の頃の記憶との和解。過去に閉じた扉を、自ら開けに行くことで起こる心の解放。出会う人々は、カギを授けて扉までの道標を示し、ハグをしながら後押しをしてくれる。だけど誰にも開けてもらう事はできない、扉を開けることだけは人に頼ることができない、自分との対話。

すずめみたいに劇的なドラマがある訳ではない、ただ目の前に現れる事象とそれに反応する心の揺れをじっと見つめた月日だった。誰にも頼ることはできないと知っていて、ずっと目を背けることのできなかった確かにそこにある蟠りを。ようやく溶かすことができたように思うのだ。父の死という命の儀式を通して。

どこか自分の生に責任が持てなかった。この蟠りを理由にしては、影に身を潜めて。何かが違うと違和感を覚えながら、空虚を埋めるような悲しい生き方。

同じ問いを何度も繰り返すことで本当はもう自分でも分かっていた、廃墟の扉の向こうでミミズみたいに膨れ上がる古くなった感情を「お返しします!」と言って鍵を閉め、ようやく戸締まりできた、そんな2022年だった。

ここから、ようやく始まるんだ。

生きよう!

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