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永久の寄す処へ-ルミナスウィッチーズ10話感想-

7話に続いてジニーの転機となる10話。ガリアを取り戻した世界が熱に浮かされる中、故郷へと帰るエリーの胸中を写し取り、モフィに別れを告げるジニーの選択も描く、見どころの詰まったエピソードだった。

物語は、9人がブリタニア凱旋を果たすところから始まる。出発前のささやかなステージと違い、ムービースターのような歓迎と、人々に勇気を与えるウィッチとしての栄誉を与えられ、ルミナスウィッチーズは地元の英雄として迎えられた。

その成功と裏腹に、キャラクターたちの表情は暗い。グレイス大尉はジニの転属命令に頭を悩ませているし、エリーは占領されていた故郷の現状を見るのを躊躇っている。ガリアが解放されたとしても、未だ個々人を取り巻く環境は重い。

ガリアへの帰還に躊躇いを見せるエリーは、整備庫でモフィと自分を重ね、そのままでいることの幸せについて問いかける。ジニーは何故、モフィを仲間に巡り合わせることに拘るのか。俯いたエリーの表情は見えず、二人は翼の下に潜りこんでいる。そのまま飛翔せず、守られた中で育つことも、選択肢の一つなのかもしれない。

それでもジニーは、モフィを仲間の元に返すことを選ぶ。ジニーは偶然にモフィと出会い、共に時間を過ごし、やがてルミナスウィッチーズと巡り合った。その中で、新たな可能性を見つけることができた。ジニーは、モフィに翼を貰って、自由に飛ぶことの楽しさを知っている。

その未来を、モフィにも掴んでほしい。沢山の選択肢の中から、自身の選んだ世界に身を置けるようになってほしい。ジニーはモフィを想い、自分が貰ったような翼を、モフィにも与えてあげたいと考えている。飛ばなければ見えない景色が、きっとあるから。

エリーは話を聞いて、故郷へ帰ることを選ぶ。崩壊したガリアで取材に応えるエリーの目は、真っすぐで強い瞳をしている。エリーは3年も占領された街が原型を留めていると考えるほど、メルヘンな女の子ではない。エリーがガリア訪問を躊躇っていた本当の理由は、地元に置いてきてしまった猫の安否だった。

ネウロイの襲撃を受けた時、エリーには選択権が無かった。いつからか現れ、共に時間を過ごし、引き裂かれる運命にあった愛猫。その子がいなくなっていることを恐れ、忙しい日々に身を隠そうとしていた。

しかし、猫の安否を確認しなければ、本当の意味でガリア解放を感じられる日は来ないし、エリーにとっての可能性も広がっていかない。だからエリーは、自分自身で町の確認に行くことを選択する。

強く保っていたエリーの瞳は、町に近づくほどに震え、愛猫と再び巡り合った時にようやく涙を見せる。エリーは、自身が傷ついても他人を助け、その資質に惹かれてリオと出会った。猫が生きていたのは、故郷を失ってなお気丈に振る舞い続けたエリーへの、ささやかな祝福なのかもしれない。

エリーが愛猫を見つける少し前、故郷の川辺から、羽根を介したメッセージの伝え合いが始まり…ジニーは河のほとりで、とても重要な決断をする。共に歩んできた親友との別れ、そしてモフィにとって初めての仲間との飛翔。それを見届けてからウィッチとしての資質を喪失するジニーは、何かを失っても、強く踏み出していける意思を既に手にしていたのだと思う。

ウィッチという特異な能力を失ったジニーは、これからどうなるのか。間違いないのは、ジニーはモフィに貰った翼を今も持っていて、そこには可能性を切り開いていく強さも宿っているということだ。実際に飛べなくなっても、ルミナスウィッチーズの仲間と、新たな答えを見つけてくれるだろう。

春藤佳奈さんの絵コンテ/演出が刺さり、鮮やかな水の表現が麗しいエピソードだった。ジニーとエリーは仲間と共にいることを選び、モフィと猫は自身の生まれた故郷にいることを選択する。その中で、故郷に戻らないジニーとエリーも、永久の寄す処に帰る存在から、何かを受け取った1話だったと思う。黒い羽根の持つメッセージは、何を表すのか。11話も楽しみです。

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