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モニタースピーカーの音響補正

あなたが、今まさに聴いてる音!ほんとのところどうなの?

どんなに高額なモニタースピーカー、オーディオインターフェースを使用していても、制作環境、部屋の音響が調整されていなければ、耳に届いたときの音はDAWで本来鳴っている音とは違ってしまいます。

音響補正ソフトとハード

音楽制作や視聴部屋、それ自体を調整し音響特性に優れた状態にすることも、もちろん可能で専門の施工業者さんもありますが
”費用や賃貸などの理由でそこまではできない”

そんな時の強い味方が
”音響補正機器やソフト、補正DSP付きモニタースピーカー”
で現状以下のような製品があります。

音響補正ソフト
Sonarworks SoundID Reference
IK Multimedia ARC System 3

音響補正付きモニタースピーカー
NEUMANN DSP
GENELEC GLM

音響補正ハード
TRINNOV AUDIO ST

おおよその仕組みは、モニタースピーカーからのテスト信号音をマイクで測定し、入出力音の差分をソフトで解析し補正するというものになります。

SoundID Reference VS ARC System3

ここからは実際に使用している
Sonarworks SoundID Reference
IK Multimedia ARC System 3
TRINNOV AUDIO ST
について、主観で語っていきます。

まず音響補正ソフトの双璧SoundID ReferenceARC System 3です。
価格はそれぞれ専用マイク付きで4~5万程度
測定時間は約20分程度です。

測定方法

測定方法には違いがあります。
SoundID Referenceはソフトが指定する範囲で測定箇所35個所も指定されます。対してARC System 3は任意の範囲で15㎝に高さ違いで7箇所の合計21箇所の測定となります。
SoundID Referenceは視聴位置に対するスピーカーの設置位置の測定、また測定箇所も指定されるため解析に必要な位置情報が適切になるような気もしますが、測定範囲(視聴範囲)が広い感じもします。
ARC System 3で視聴範囲内できっちり位置を決めて測定したほうが、スイートスポット的に優位な感じもします。
理想としては、SoundID Referenceで測定範囲を任意で指定でき、その範囲に応じた測定位置をソフトが指定するのが良いかなとも思います。

測定結果

では実際に測定した結果はどうなのか
SoundID Reference補正前
100H辺りにディップがあり、L側がより大きく凹んでます。

SoundID Reference補正前

ARC System 3補正前
SoundID Referenceと傾向は同じ感じですが、結構違って見えますね。

ARC System 3補正前

SoundID Reference補正後
ほんとかよ!ってくらいフラットですね

SoundID Reference補正後

ARC System 3補正後
ん~という感じですね!
SoundID Referenceと比べ低域側の補正が効いているのか?
ある意味正直な補正とも取れますね。

ARC System 3補正後

使用感

使用時で大きくちがうのは
ARC System 3は”DAW内”でしか使用できないのに対し、SoundID Referenceは”DAW以外のPC再生音”にも使用することができ、例えばYoutube、foobar2000などにも補正をかけることができます。これはとても便利です。
zeroレイテンシー、Linearでの使用、補正後の任意でのEQ調整などは共通で、SoundID Referenceは補正前後のミックス割合も調整できます。
主観にはなりますが、ARC System 3の補正が自然に感じます。

真打登場TRINNOV AUDIO ST

さて最後に紹介するのがTRINNOV AUDIO STです。
業務用と一般向けの製品がありますが、一般向けのマイク等セットで約120万円となります。
SoundID Referenceが4~5万、DSP付きのモニタースピーカーNUEMANNNのKH80 DSPが2本で20万程度を考えるとTRINNOV AUDIO STは驚愕の値段です。
音響補正に100万越え、その実力がどんなものか気になりますよね!

TRINNOV AUDIO ST測定

まず測定ですが、4本のカプセルが一体となった専用マイクで、測定は3D測定で視聴位置での1箇所を数秒、解析に数分程度とかかる程度とかなりのストレスフリー!となってます。

TRINNOV AUDIO ST補正について

TRINNOV補正

TRINNOV AUDIO STの補正内容は
各帯域のEQ、位相、スピーカー間のタイム・アラインメント・ディレイなどですが、位相が揃った感じ、低域が締まった感じ、高域と低域のスピードが揃った感じは、他の補正ソフトでは感じることができないです。
補正後はReferenceID張りにフラット!になってます。

TRINNOV AUDIO ST使用感

はっきり言って、SoundID Reference等々とは雲泥の差です。
もうこれなしではモニターできない耳になりました。
前記しましたが、低域がビシッとし締まり超低域においても曖昧さが無く、スピード感を感じることが出来ます。
費用対効果は人それぞれですが、デモ機でも借りて一度体験してみることに損はないと思います。

最後に音響補正でもっとも気になること

音響補正で個人的にもっとも気になることがあります。
それは補正後にさらに補正ソフトで測定したら本当に
各帯域はフラットになっているのか?
位相特性はそろっているのか?
また補正制度がより向上するのか?
などなどです。

補正後の再測定やってみた

SoundID ReferenceARC System 3をもっていても、どちらも測定時に補正後の結果を含ませることができませんが、TRINNOV AUDIO STはPCに依存しないハード機器のためこの実験が可能です。
やってみました。

まずはTRINNOV AUDIOを使用したモニターでSoundID Referenceで測定した結果です。

SoundID Reference TRINNOV AUDIO有り

TRINNOV AUDIO無しと比べると各帯域の凹凸は少なくなってますね
当たり前といえば当たり前ですね

SoundID Reference TRINÑOV AUDIO無し

こんどはARC System 3です。
こちらもSoundID Reference同様各帯域の凹凸は少なくなって、ほぼフラットに近い特性でTRINNOV AUDIO無しとは雲泥の差ですね

ARC System 3 TRINNOV AUDIO有り
ARC System 3 TRINNOV AUDIO無し

補正後の再補正の音はどうなの?

最後にTRINNOV AUDIOで補正したあとのSoundID ReferenceARC System 3で補正した音はどうなのか?ですが
各帯域はよりフラットに近づいているようになりますが、TRINNOV AUDIO補正のみのほうが位相が揃って曖昧さがないモニター環境でした。
もしかするとSoundID ReferenceARC System 3で補正した後にTRINNOV AUDIOで再補正することができればモニター環境がより良くなる気もしますが現状では無理ですね。

音響補正機器、ソフトなどに甘えない

TRINNOV AUDIOをはじめ音響補正は現在の制作環境においては必須だと思いますが、それだけに頼らないことも必要だと思います。
ソフトで測定した結果で、モニターの設置位置や部屋の吸音、拡散など、できる範囲で調整を重ね、なるべく補正値を小さくするモニター環境を構築することが、PC内でなっているはずの音により近づくはずです。

そんなことよりヘッドフォン使ったらいいんじゃん!
それもありよりのありです!

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