あなたの隣に立つために #15
天:いやぁ〜分かりすぎて怖いな〜!
麗:ね!全問理解出来たことなんて初めてだよ!
こちらは手応えを感じているのかガッツポーズしている
○:…
ひ:ふんっ!
一方こちらは激おこるんちゃん
○○もテストは出来たようだがそれ以上にひかるにビビっている様子
○:ひかる…怖い…
ひ:嫌だな〜○○の方が怖いじゃん! バンバンッ
麗:ひかるちゃんは怒らせない方が良さそうだね…
天:あそこまで怒ってるのも久々だよ…
安静と言っているのにバンバンと背中を叩かれる
麗奈と天も少し引いている程だ
夏:仕方ないよ
いつの間にか隣にいた夏鈴
玲も一緒だ
夏:麗奈が朝全部伝えた時に泣いてたのも知ってるでしょ?
玲:それだけ○○のことが大事なんだよ
案外もう怒っていない夏鈴
予想では夏鈴が1番怒っていると思っていた
天:ひかるは小さい時から○○の後ろついて行ってるイメージあるもんね…笑
麗:仲良しっていうか兄妹?みたいな感じなの?
夏:何気にひかるが1番○○を知ってるからね
幼馴染4人組で初めて会ったのは○○とひかるだった
ずっと一緒にいた2人が誰よりもお互いのことを理解しているのだ
○:…
ひ:ん?まだ何か言い訳するつもり?
○:いえ…何も無いです…
ひ:だよね?今回という今回は絶対許さないから
○:すいません…
だが今回は少し違いそうだ
遠くから眺めているだけでも○○が可哀想に見えてくる
玲:あれはしばらくあの調子かな?笑
夏:気づいた時には許してるから大丈夫だよ笑
天:あ、そういえば明日でテスト最後でしょ?みんなで最後の追い込みしようよ!
夏:なんかテストやる気の天が違和感…笑
麗:でも2人は…
玲:大丈夫!行こ行こ!
○○とひかるそっちのけで行ってしまった
取り残されてしまったが動くに動けない○○
○:あの…ひかるさん帰りませんか…?
ひ:…
○:無視…ですか…
ひ:手…
○:…手?
小さな手が目の前に出てくる
しかも顔が真っ赤だ
ひ:今なら私達だけだし…///
○:え…///
ひ:いいから!手…繋ごうよ…///
○:う、うん…///
何故か手を繋いで帰り道を進む
他の生徒たちもチラホラいる中で体をピッタリと寄せて歩く
○:見られてるよ?
ひ:いいのっ…///
そんなに照れるなら離せばいいんじゃ…
と、言える訳もなくそのままの状態が続いた
ひかるの小さな手に少し力が籠った気がした
天:ゴクゴクッ…ぷはぁ!おいしっ!
玲:天ちゃんカフェの飲みっぷりじゃないよ
学校近くの喫茶店に入った4人
テーブル上には単語帳やら教科書が開かれている
麗:○○くんとひかるちゃん大丈夫かな…
夏:あの2人なら今頃手でも繋いで帰ってるんじゃない?
ドンピシャで的中させた夏鈴
さすが幼馴染といったところだろう
天:流石に手は繋がないでしょ笑
天:もう高校生だよ?笑 ないない…笑
そう言って単語帳に目を落とす
書いてある文量以上に目が泳いでいる気もする
夏:ふふっ…そうかもね
玲:天ちゃんもわかりやすいね〜笑
麗:…そういうことなの?笑
年頃の女の子
恋バナには目がないのだ
天:…
夏:大丈夫、○○も安静にしなきゃだからどこか遊びに行くとかも難しいんじゃない?
天:暴走してなきゃいいけど…
玲:ほらほら、切り替えてテスト勉強しよ!これ乗り越えたらみんなで遊びに行けるんだから!
麗:全部自信もって終われるように頑張ろっ!
天:うんっ!
○:…///
ひ:ねぇ…ダメ…?///
暴走してました
もう太刀打ちできません
○:ダメだよ…安静にしててって言われてるんだから…///
ひ:でも…もう我慢できないっ…///
○○の家に来てからずっとこんな調子
え?何をしてるのかって?
○:だから膝に座りたいってなに!?絶対ひかる暴れるもん!
ひ:いいじゃんか!減るもんでもないし!
寂しいのか言わなかった罰なのかは分からない
ただ高校生にもなって膝に座るのをせがむのもどうかと思う
○:振動とかも結構ズキズキ来るんだから…
ひ:…さっきは背中叩いてごめんね
バンバンでズキズキだった
それ以上に手を繋いでいた時の方がドキドキしたのは確かだ
○:というよりひかると2人きりとか久々だね?
ひ:確かに…ずっと天とか夏鈴がいたからね
理子と瞳月も帰ってきていない
恐らくまだ学校か、愛季の家だろう
○:なんか変な感じだね笑
ひ:何照れてるの?笑
○:そういうひかるこそ顔真っ赤だけど?笑
小さな顔に加えて耳の先まで真っ赤だ
ひ:そりゃそうだよ…/// ボソッ
○:なんか言い返してよ…///
片方がこれだともう片方も調子が狂う
らしくない雰囲気が流れ始める
ひ:…///
○:…///
ガチャン
○母:あら!ひーちゃんいらっしゃい!
ひ:お、お邪魔してます!
良くか悪くか
ここで買い出しから母さんが帰ってきた
○母:敬語?なんか違和感笑
ひ:ちょっと緊張してて…笑
○母:顔も赤いし…もしかして○○変なことしてたんじゃないでしょうね
なんでこっちに矢が飛んでくるんですか?
○:するわけないじゃん!
○母:危ない危ない、たとえ○○でもひかるちゃん泣かせたら…ね?
目が笑ってないよ母さん
ひ:○○お部屋行こ…?
○:そ、そうだね…行こっか
このままリビングにいても気まずいので○○の部屋に行くことにした
リビングを出たタイミングで理子達が帰ってきたがそのままリビングに入っていったので会話はなかった
○:それで今日は何しに来たの?
ひ:え?暇だから
○:…
ひ:?
いや、そんな「え?どうしたの?」みたいな感じで小首傾げられても困るんですよ
○:明日もテストですね?
ひ:いいじゃん、○○頭いいでしょ?
○:俺の点数じゃなくてひかるの点数を気にしてるの
ひ:全部やったよ、元々今日家に突撃する予定だったし
予定しないでくれ
というか予定してるなら事前に連絡くれてもよくないですか?
○:…まぁ今に始まったことじゃないか
ギュッ
空いていた左手が握られる
それと同時に体の距離も一気に詰められる
ひ:今日は…ずっとこれがいい…
○:ひかる…
前髪のせいで表情はあまり見えない
でも微かに見える頬や声の調子から照れている様子は無い
無言が続く
握られた手からひかるの体温が伝ってくる
ひ:ねぇ○○…?
○:ん…?
ひ:○○は…好きな人とかいるの…?
夏の暑さじゃない
体全身が熱くなってくる感覚
○:…なんで?
ひ:いや…その…いるのかな〜って…
”こっちの世界”に来てから度々経験するこの感覚
何度直面しても慣れないのは揺らいでいるから
○:…
ひ:テスト前さ、勉強会したじゃん
○:うん
ひ:その時思っちゃったんだよね
ひ:もっと構って欲しいって…もっと○○の目に映っていたいって
○:…
確かに今回麗奈に付きっきりだった気もしなくもない
感じていた視線はひかるのものだった
ひ:麗奈ちゃんのこと好きなの…?
○:今はまだ麗奈のことはよく分かってない…だから好きとかはないよ
実際は大学まで同じ学校になる
今となっては分からないことの方が少ない
ひ:じゃあ瞳月ちゃん…?
○:瞳月は妹みたいな感じだからね…守ってあげたい気持ちが勝つかな
そこから先は聞いてこない
聞いてしまって、もしそれが正解だった時にどうしたらいいかひかるの中でわからないからだ
ひ:…
○:そういうひかるは?
ひ:っ…
聞こうか迷った
それでも質問の意図を知りたかった
○:ひかるも好きな人の1人や2人、いるんじゃない?
ひ:…
○:ひか…
言い終わる前に横からの衝撃が体を襲った
気づけば仰向けに倒れていた
ひ:鈍感…
馬乗りになったひかる
数十cm先にあるのは綺麗な顔
ひ:なんで私ばっかり寂しい思いしなきゃいけないの…?
ひ:私が1番○○を知ってる…!天にも夏鈴にも負けないくらい好きって気持ちもある…!
ひ:でも…○○は振り向いてくれないっ…
一滴の涙が頬に落ちてきた
ひ:なんで私を見てくれないの…?幼馴染だから…?
○:見てないなんて…そんなことないよ
ひ:嘘つかないで…
○:嘘なんかつかない、俺はひかるを大切に思ってるよ
ひ:天よりも…?
○:っ…
突っかかっていた何かは無くなった
思いの丈がそのまま出てくる
ひ:いつも私のそばにいてくれて…守ってくれてた○○が大好きなのっ…
ひ:小さい時はお兄ちゃんみたいにしか思ってなかった…
ひ:でもいつの日か目で追っちゃう存在になって…私はもう止められなかった…
ひ:なのにいつも○○の隣には天がいた…!
ひ:天と幼馴染じゃなかったらどんな汚い手を使ってでも○○を自分のものにしたと思う…
ひ:でも○○が…○○が天のことをっ…
○:もういい
体を起こして震えるひかるを抱き締めた
止められなかった想いが自分でもびっくりする程出てしまったのだろう
○:気づいてあげられなくてごめんね
○:構ってあげられなくてごめんね
○:向き合うことが怖かったんだと思う、だからひかるに辛い思いさせちゃってる
学生時代に見て見ぬふりをしていただけなのかもしれないが
本当にこの時間軸ではおかしなことばかりが起こる
ひ:○○っ…
こちらを見上げるひかるの潤んだ瞳は欲していた
このままの流れに身を任せたくは無い
○:ひかる…
ひ:…
脳裏に浮かぶ天の笑った顔
その笑顔を裏切ってまでやりたいことはあるのか
何度も自問自答した
○:…
ひ:○○…私じゃダメっ…?
○:そんな顔しないでよ…
ひ:ごめんね…もう抑えられないんだ…
首に腕を回されたと思った時にはもう遅かった
長くも浅いキスが永遠のように続いた
ひ:ぷはぁ…○○…
○:んっ…ひかるっ…止まって…!
もう理性が負けそうだ
ガチャッ
理:にぃちゃ〜ん、これお母さんが食べなって!
ドアが開き、理子が入ってくる時には体は離れていた
○:ありがと!北海道のお土産?
理:うん!…なんでひかるちゃん顔赤いの?笑
ひ:気のせいだよ笑
理:本当にぃ〜?笑
○:ほら、にぃちゃん達を揶揄う前にテスト勉強しておいで笑
理:へへっ…バレた?笑 じゃあゆっくりしていってね!
天:3日目ぇ!
麗:今日も復習はバッチリ!
玲:満点取るぞ〜!
朝から賑やかな通学路
しかし、夏鈴の「うるさい」の一言で鎮圧
○:やる気ありすぎだって笑
ひ:最終日だから仕方ないよ笑
夏:昨日からこれなんだから…着いていけないよ
天:ぶぅ…ケチ…
あからさまに落ち込んでいる様子
夏:…テスト頑張ったら遊びに行こうね
天:うんっ!頑張るぞぉ!
罪悪感が湧いたのか最後は騒がせて終わった会話
夏鈴の大人な部分が見えた
…
○:(まぁ大丈夫だな…これぐらいなら流石に出来ないと大学行ってる意味無いからね…笑)
天:(分かる!分かりすぎる!これは高得天ちゃんすぎる!)
ひ:(まぁまぁかな…解けない問題はなかったし)
麗:(ふっふっふ…麗奈の手にかかればちょちょいのちょいなんだからねっ!)
…
玲:(どこ遊びに行こっかな〜♪)
夏:(愛季達もいるなら遊園地?瞳月ちゃんどこ行きたいかな…
…
キーンコーンカーンコーン
先:おしっ!解答用紙後ろから回せ〜
最後のテストを終えて肩の荷が降りる
一気に押し寄せる開放感にワクワクしてしまう
○:ふぅ…
先:まぁ出来たにしろ、出来てないにしろテストは終わったからな
先:今日だけは遊びに行ってこ〜い
”やった!”
”さっすが先生!分かってるぅ!”
先:ただ!ハメを外しすぎないようにな?
この担任の先生で心底良かったと思える
ここまで生徒の気持ちを尊重してくれる先生はなかなかいない
先:あ、あと○○は少し残ってくれるか?
○:えぇ…
先:すぐ終わるから残れ笑
ということで放課後になる
ここで帰っても良かったのだがあとから何か言われても嫌なので素直に残ることにした
○:先行ってて
天:校門で待ってる?
○:いや、すぐ終わるかわからないから先帰っててもいいよ?
麗:お話してたらすぐじゃない?
ひ:帰る時はLINEしとく
○:りょーかい
荷物を持たずに職員室に向かう
話の内容は康希のことについてだった
知っていること、被害の状況
瞳月との関係など話せる部分は全て話した
先:そうか…○○にもたくさん迷惑をかけたな…
先:康希の担任として1度親御さん含めて謝罪したい
○:そんな…全然いいですよ
先:そういう訳にはいかないんだよ
先:社会人として、教師として、教え子の尻拭いはしなきゃならない立場なんだ
もちろんその通りだ
社会人ではないがそれぐらいは分かる
○:気にしてないです、その前に家だと瞳月もいるので…
もちろん家に謝りに来るのなら理子や瞳月もいる
そこで懸念点は瞳月になる
○:あんな辛い出来事を謝ることで瞳月が思い出してしまうなら僕は謝罪は必要ないと思います
○:今、僕の妹含めて瞳月はカウンセリングを受けているんです
○:無駄にカウンセラーの先生の仕事を増やすのも如何なものかと思いますよ
人が変わったように鋭い意見をどんどん出す○○
『もう康希の事には触れるな』と言わんばかりだ
○:謝罪であれば、瞳月の傷ついた心が癒えてからにしてください
先:…わかった、そうさせて貰えるとありがたい
先:悪いな、残ってもらって
○:いえ、先生も大変ですね…
今回の件で1番振り回されているのはうちの担任だろう
学校としても問題視されているので今後もっと大変になる
先:これが俺の仕事だからね笑
○:また何か困った時は頼ってくださいね?
職員室を後にして校門へ向かった
先に帰るLINEは届いていない
○:帰るか〜…
週末に予定されるお出かけが少し楽しみになっている自分がいる
心做しか足が軽い気がした