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鈴木おさむさん講演を実施してみて感じたこと

先日の8月19日に渋谷クリップクリエイトさんと共催で『バイラル動画フォーラム』を実施しました。LINEさん・LIGさん・Antennaさんと続いて今回で4回目となる当社のセミナーは、特別ゲストに大人気放送作家・鈴木おさむさんをお招きして大盛況に終わりました。その内容を今回はレポートします。

1社提供の番組は成功しない!

これは鈴木おさむさんが経験上感じていること。テレビ番組には費用を出す「スポンサーサイド」と番組を制作する「制作サイド」の2つの立場があります。スポンサーサイドは自社の商品やサービス、会社のことをなるべく多く・良く言ってもらいたいとプレッシャーをかけてくる。制作サイドはなるべくスポンサーを無視して企画を進めたがる。この両者の折り合いがつかないという訳です。

僕は広告の勉強をしている時に「番組のスポンサードはスポンサーが番組の内容に共感して支援(スポンサード)していくもの」ということを学びました。ただ、現状ではその価値観が崩れてきており、「あっちの番組ではあんなにスポンサーの紹介してたんだから、ウチの番組でももっと商品のこと紹介してよ!」と物言うスポンサーが増えてきているのだと思います。

ただそのような状況でも本当に共感してスポンサードしている企業が勝ちなのではないかと僕は思っているています。1社提供の番組でうまくいってる番組といえば、NTV「おしゃれイズム」(資生堂)、TBS「世界ふしぎ発見」(日立製作所)、EX「世界の車窓から」(富士通)が思い当たります。どの番組も長年続いており、しかも企業の主張が少なく、安定した視聴率も誇っています。やはり「いい番組を作りたい制作サイド」と「それを応援するスポンサー」の関係が成り立って、良い成果に繋がるんだと思います。

消費者にメッセージを伝えるにはネガティブなことも言う!

鈴木おさむさんは数多くのヒット番組を輩出している訳ですが、その中でも近年でテレビ業界に大きなインパクトを与えたのは「お願い!ランキング」でしょう。この番組は2009年の秋の改編で、それまでソコソコ人気のあった番組をすべて終了させて月~金の帯で始まったことでも話題になりました。(※個人的にはPR会社勤務時代、何回もパブを仕込んでいただいたLEADER'S HOW TO BOOKがこの煽りを受けて終了してしまったこともショックでした。)

この「お願い!ランキング」でおさむさんが取られた手法はコンビニに置いてあった「家電批評」という雑誌のTV版。家電批評という雑誌はテレビや冷蔵庫、掃除機といった家電からPC、タブレットといったデジタルものまで様々な商品をレビューしています。特徴としては歯に衣着せぬ率直な感想をありのままに記載すること。(昔の日経TRENDYもそんな感じで尖っていたような)それをテレビでやったら面白いのではないかと思ったそうです。

そこで生まれたのが「美食アカデミー」のコーナー。ご存知の通り、川越達也さんを筆頭とした美食家たちがコンビニ食材などに対して、率直な「美味しい」「マズイ」をぶつけていくコーナーです。最初はなかなか企業がつかなかったらしいのですが、中華まんの「井村屋」さんが最初に登場してからは、次々と名乗りをあげる企業がでてきたそうです。

おさむさんはこの成功を「良いということを伝えるには、悪いことも言わなければいけない」といいます。悪いことを言うことで、良いということが視聴者の中にも入ってきやすくなる。いいものの評価が上がってくる。いいことだけではなくて本当のことをいうことが重要であると。今も昔も企業はどうしても自分たちの良いところのみを伝えようとしますが、ある意味腹をくくって、現実をさらけ出すのも必要なのではないかと思います。

面白いことを先に考える!

ようやく動画の話です。おさむさんが映像を制作する際に最初に考えることとしては「何が面白いか?」を考えるということです。面白い内容のキモが最初に決まっていれば、「もう少し女性向きに寄せてみようか」「もう少し真面目系に振ってみようか」ということは簡単だとおっしゃってました。

よくあることですが、最初に「ターゲットは誰か」「どんなコアメッセージでいくのか」「タイミングはいつか」などから製作に入ってしまうと、結局何が面白いかが決まらずに進んでしまい、ユーザーに何も刺さらないものになってしまいます。

これは至極納得!企業はまず先に「自分たちにとってのいい情報をいかに伝えるか」ばかりを考えますが。着地としてのアウトプットは平凡なものになってしまうことが多いように思えます。

最初に書いたスポンサーサイドと制作サイドの話に似通う部分はあると思いますが、企業のプロモーション動画を制作する際には「自分が自分が」という部分を多少押し殺して、俯瞰してユーザーにとって面白いことを突き詰める必要もあると思います。

まとめ

今回は鈴木おさむさんにお越しいただいて非常に勉強になりました。広告代理店の人間としてついつい「クライアントさんのやりたいことを実現させる」ためにプロモーションや手法を考える事が多いのですが(それ自体は悪くはないのですが)、その先の消費者やユーザー事をまず先におさむさんは考えられていることに気付かされました。これはアタリマエのことなのですが、日々の業務の中だとついつい置いて行きがちになってしまっていました。このことを忘れないためにも、備忘録としてこの記事を残していきます。

それにしても、鈴木おさむさんは本当にオーラのある素敵な方でした。

guro

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