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呉竹文庫企画展『島田清次郎とその時代展』


2023年はこの展示のために毎日を生き抜いていた

それは遡ること2023年2月26日…

その日は石川県立図書館の文アル図書館コラボ開催中の土日でもあり記念すべき島田清次郎生誕124周年の日程が重なっている!!こんな推し活冥利につきるイベントないじゃない!!現地へ行くしかない!!

という背景もあり25日は図書館へ行って島田くんを眺め、栞を作り、ホテルでケーキを食べ、26日の島清の誕生日当日は美川へお墓参りに行った後そのままルーツ交流館へも訪問。
過去の資料コピー依頼や数か月周期でのリピート来館でついにこの日受付の方に認知されご挨拶してから常設展の島清コーナーを見学して、さて退館しようかとロビーに戻ると普段は別室にいらっしゃる学芸員さんも顔を出してくださっていたので「今日は島清の誕生日ですものね~」なんてお話をしていたら「実は…」と差しだされた1枚の紙。

大きい声こそ出しませんでしたけれど明らかに挙動はかなりおかしなことになっていたと思う。

しまだせいじろうの名前が冠された企画展???????!!!

島清がピックアップされた2022年の3月~7月まで開催されていた徳田秋聲記念館の「秋聲をつなぐ人々展」が終わり、図書館コラボも終わったら次に展示ケースに島清のものが置かれているのを見れるのは何年後かな…とほんのりおセンチな気持ちになっていたところでの超吉報!!

このお知らせを受けて、少しでも展示に来てくれる人が多くなるよう、主に文アルの島田くんファンで彼の大元である島清についても興味があるという方向けにガイドブック&観光MAPイラストのグッズを作るか、SNSで見やすい投稿イラストでも描こうか…等考えていたのですが先に作業していた『解嘲』が思った以上に界隈外にも拡散され、結果このnoteの認知度が高まったので現在に至ります。

展示内容

企画展チラシ。片面のみ印刷。題字の使用フォントは『ロマン鳳』のようです。このお写真初めて見るもので口角上がって自信満々!ってすごく「らしい」表情されてるのがとても良くて、全身あるなら見たいな~と交流館さんに確認したんですが昔から地元で『最盛期だった頃の島清の写真』と言われているもので初出や持ち主の詳細は不明だとのこと。

持ち帰れるリスト用紙はなかったので後日ルーツ交流館の学芸員さんにお願いして展示リストをメールでいただきました。

  1. 地上 第一部    S22.11.1 (2版) 扶桑書房

  2. 地上 第二部    T9.01.18 新潮社

  3. 地上 第三部    T10.01.01 新潮社

  4. 帝王者       T10.06.06 新潮社

  5. 革命前後      T11.8.14 (再版) 改造社

  6. 大望        T9.10.15 新潮社

  7. 勝利を前にして   T11.4.2 (5版) 改造社

  8. 我れ世に敗れたり  T13.12.18 春秋社

以上が島清の著作本。
チラシ写真にもある地上第二部は背部分が製本テープで補修されています。
同じケース内には島清の略歴や地上発売時の新聞記事のコピーなども展示されていました。
壁には生涯の作品一覧が貼られていて学生時代の弁論大会のタイトルや初めて知る作品もちらほらあり更なる収集熱に火が点いてしまいましたね…

著作本は『帝王者』以外は持っているので展示品と同じタイトルを引っ張り出してみました。
ちなみに『帝王者』は『地上』と同じサイズ、装丁で中央に両翼が生えたクラウンのイラストがあしらわれています(欲しいーッ!!)

革命前後は函入りで展示されてましたが私が持っているのは函はついていなかったので裸本です(そしてカバー掛けに慣れていない頃のものなので粗さが際立って恥ずかしいですね…)

別のケースは島清の作品が掲載された雑誌コーナーになっていました。

  1. 文章俱楽部 五月号(第6年第5号)
    「書斎についての希望と用意」、「旅中雜興」  T10.05.01 新潮社

  2. 文芸春秋 七月特別附録号(第2年6号)
    「雨滴の音を聴きつつ」   T13.07.01 文芸春秋社

  3. 新潮 十一月号(第35巻第5号)
    「長篇小説の流行について」          T10.11.01 新潮社

  4. 中學世界 六月号(第24巻第8号)
    「若き者は讃むべし」             T10.05.18 博文館

  5. 新潮 十二月号(第31巻6号)
    「「地上」完成の後ならでは 」        T8.12.01 新潮社

  6. 解放 六月特集(第3巻6号)
    「最初の涙」                 T10.06.01 解放社

改題して著書に収録されているものもあるのでアンケート以外で未収録作品は文芸春秋の「雨滴の音を聴きつつ」くらいでしょうか。
菊池寛全集14巻「島田清次郎を悼む」によるとこの作品は島清が裁判沙汰で人気失墜後、生活に困って菊池寛にお金を借りに行ったところ「金は貸せないが作品なら載せてあげる」という約束で執筆依頼をされ、義理で破格の値段の原稿料が支払われた随筆です。
文壇や出版社の大半にそっぽを向かれていた島清に対して作家としての矜持を保たせてくれた菊池寛は厳しいけど優しい…
展示品より状態は悪いですがチラシでは細かい部分が見えないのでこちらもコレクションから写真を掲載。

表紙だと誤植で「雨の音を聴きつつ」になっています。掲載作家の中には秋聲や久米正雄、まだペンネームが三十三の頃の直木三十五などの名前も。
冊子内には旅行先で島田清次郎と刻まれた墓標を見たなど島清を揶揄する記事もいくつか載っています。

最後のケースは企画展名の『その時代』にあたる島清が活躍していた時代に発行されていた雑誌の展示。

  1. 太陽 春季四月号大増(第25巻4号)     T8.04.01 東京博文館

  2. 中央公論三月号(第36年第3号) 第393号   T10.03.01 中央公論社

  3. 公論 創刊号(第1年第1号)         T8.10.13 公論社

  4. 明星一月号(第3巻第1号)          T12.01.01 「明星」発行所

  5. 美術新報一月号(第2巻第1号) 通巻289号   T8.01.23 東西美術出版社

  6. 「潮(第2巻第1号)掲載 『若芽』    T3.12.25 潮会

最後の「潮」はコピーによる展示で、現在確認されている限りで島清の処女小説とされている『若芽』が掲載されたものになります。
他の雑誌も展示号には島清は掲載されていませんが、別の号には載っている物もあるのでなるべく縁のある雑誌をチョイスされたのかもしれません。

これは「太陽」の大正9年第26巻8号7月号で島清の「或ゴロツキの嘆」が掲載されています(「大望」にも収録)
「太陽」は純文学でなく政治や社会科学系の雑誌でこの号以外にも島清が寄稿した記録を確認しています。
表紙イラストは展示品の号と同じだったはず。

企画展を終えて

私が島清について調べ始めた初期に島清に関するブログ記事を投稿されていて、個人的に資料提供もいただいた方に今回の企画展があることをお知らせしたところ、企画展初日にお会いすることになり展示も一緒に見学することができました。
これを機にストップしていた島清の作品資料収集も再開され、現在調査中のものに関しては末席に私も加えていただく予定です(早く原稿を送ろうね私…)

また、普段はわりかしひそやかな呉竹文庫がこの企画展中は遠路はるばるお越しになったお客様が多く来館されたとか。

徳田秋聲記念館さんもお忙しい中ブログやSNSで宣伝や見学された感想をしたためてくださり、ルーツ交流館さんもそちらをお読みになりお喜びでした。
部外者の私も感謝でいっぱいです…
また企画展やってほしいな…石川近文さんや玉川図書館で所蔵されてる物も見たいんだ…これからも少しずつ関係者を引っ搔き回してどうにか実現したい…

ああそういえば2回目見学に行った時に地元のケーブルTVの取材VTRに応じたのでお蔵になっていなければ島清ファンとして初顔出しデビューですね!

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