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ホールガーメント機故障修理の顛末記

弊社には前回までの記事のような手袋の編みに使用する10ゲージホールガーメント機とは別に、なんと18ゲージという大変細かいゲージのホールガーメント機があります。どちらも島精機製作所の通称「SWG ミニ」と呼ばれる編み機ですね。

こちらが先日、メンテナンス中にトラブルに見舞われてしまいましたので修理・復旧の顛末を記しておきます。※専門的な内容の、忘備録的な意味合いの強い記事になりますが、こういった情報は殆ど共有されていませんので公開で記録しておきます。

この18Gホールガーメント機ですが、現状あまり稼働頻度の高くない設備でして、久々に手袋を編んでみたところどうにも編地が錆臭い……ニードルベッドに錆が出てしまっているようです。対処として、オイルをニードルベッドにべたべたに塗り、全幅でラッキングの多い編みを編成し、動きの悪い針は取替え……等々を数日に渡り繰り返し行いました。

そろそろ匂いも取れたかなと試しに手袋を編んでみたところ問題発生。

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手袋の「寄せ写し」を行う編成部分のすべてで穴が開いてしまいました。手前と奥の編地が閉じてしまい、正常に次のループへ移すことができていないのです。

まず編成データにおかしなところは無いかと思いましたがこのデータはニットペイントで書き出したほぼデフォルトのもの……不審な点は見つかりません。また、新しく手袋のデータをいちから作り直してみたり、他の靴下などの製品を編んでみても結果は同じく、すべての寄せ移しの部分で穴が開いてしまいました。同じデータで先日までは正しく編めていたものが編めなくなったので、データの不具合ではなさそうです。

島精機さんへ症状の報告・相談をしたところ、「キャリッジのソレノイドの固着または不良でカムが正常に動いていないのではないか」とのこと。

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キャリッジのカバーを取り外してソレノイドが目視できる状態にしたあと、機械調整>デバッグモード>テストパターンを実行するとカム切替のソレノイドがオンオフを繰り返す状態になります。

動きの悪いソレノイドは無いか確認してみますが……特におかしな動きをするものは無し。ソレノイドにも錆が出ている可能性もあるとのことでカムが滑らかになるのを期待してしばらくテストパターンで動かし続けてみます。

が、再度編んでも穴は開いたまま……。

それ以上の確認ができないので、本体から前後キャリッジを取り外して島精機さんのテクニカルサービスセンターへ送り、調査・点検をしてもらうことになりました。キャリッジの取り外しはマニュアルの手順通りにチューブ・コネクタ・ボルトを外していけば容易です。


さて、島精機TSCでキャリッジを調べてもらったところ……


キャリッジ内部の該当カムのところに金属片が挟まっていたことが発覚。

これを取り除いたのち、他の異常は確認されなかったとのことであとはそのまま返送されてきました。

キャリッジの取り付け後、試し編み……

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編めた!


どうやら、金属片が挟まってカムが正常に動作しないことで意図しない目移し動作を行っていたとのことで間違いないようです。

金属片はおそらくニードル周りを構成する部品のいずれかが折れたものかと思いますがいつの時点で入り込んだのかは不明です。

いずれにせよ、破損が起こるような無理な操作は行うべからず、機械内部には異物が残らないよう細心の注意を払って運用・メンテナンスすべしと勉強になりました。トラブルが起きた際には、意外と単純な物理的要因を見落としがちでもありますので因果関係をたどって冷静に対処していきたいものです。

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