補欠とモンスター

補欠が家に帰る途中には大きな川がある。練習が終わって補欠が河川敷を通るとき、夏の空は真っ赤に染まっている。

自分から伸びる影が地面に広がって、やがて空から落ちてきた赤い闇に包まれて見えなくなる。すると、自分の顔が真っ黒の穴になってしまって、誰も彼も見分けがつかない。赤から濃紺に向かって降りていく闇が世界中を包んでしまうから、きっと明日はもうやってこないんじゃないか、とモンスターは毎日思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?