見出し画像

【研修報告】地域づくり団体全国研修交流会島根大会へ参加して

群馬県地域づくり協議会事務局の栗原です。
今回は令和5年11月10日(金)~12日(日)の3日間、島根県内8会場で開催された「第39回地域づくり団体全国研修交流会島根大会」に参加してきましたので、その様子をレポートします。

本研修交流会は、全国の地域づくり団体や行政関係者が一堂に会し、研修や情報交換を行うことを目的に毎年開催されています。今回も北は北海道、南は沖縄県まで、全国各地から150名を超える方々が集まり、盛大に開催されました。群馬県からも筆者の他、2団体から2名の参加があり、本県の取組を全国にPRすることができました。

第39回島根大会のテーマは「ご縁でつながる地域づくり~島根からはじまる新たな物語~」です。まさに今回、全国各地の方々と『ご縁』でつながることができ、大変有意義な意見交換や情報交換を行うことができました。それでは、濃厚な3日間を振り返りたいと思います。


出会った瞬間に誰もが笑顔に♪

筆者は島根県安来市で開催された第1分科会に参加しました。これから始まる研修交流会への期待と不安、緊張の入り交じった面持ちのまま、集合場所の安来駅に降り立ち、改札を出た瞬間。んっ!?目の前には、妙にどじょうすくいの格好が似合った女性(後に「安来節演芸館」のマスコットガール『きゅっきゅちゃん』だと知る)と地域づくり団体「えーひだカンパニー」のみなさまが安来節で賑やかにお出迎え。
早速、筆者もザルをかぶせていただき、「あ~らエッサッサー」のかけ声で決めポーズ。これには、参加者誰もが笑顔に。熱烈なおもてなしを受け、不安と緊張が一気に吹き飛んだのでした。

きゅっきゅちゃんとの記念撮影「あ~らエッサッサー」(筆者:一番右)

ここで、安来市について簡単に触れておくと、安来市は島根県の東端、鳥取県との県境に位置し、歴史や文化、美しい自然を有する人口約3万6千人の地域です。
古代神話の舞台として、また戦国時代には合戦の舞台として数々の物語を残し、江戸時代には鉄の積出港として栄えた歴史があります。そうした背景から独自の文化や伝統が育まれ、今に受け継がれながら新しい時代をつくり続けています。
世界的に名高い足立美術館や、どじょうすくいで知られる安来節、月山富田城などの見どころや伝統のものづくりなど、ここでしか見られない景色が、訪れる人の好奇心を満たしてくれます。

まずは安来名物『どじょうすくい』から

第1分科会の参加者は21名。地域づくり団体、行政、地域おこし協力隊など、様々な立場の方々が参加していました。
最初にアイスブレイクも兼ねて、「きゅっきゅちゃん」指導の下、『安来節』について学び、実際に衣装に着替えて(恥ずかしさを堪えつつ)みんなで踊りを披露。
踊り終えて、「ふぅ~」と一息ついていたら、なんと目の前には本物のどじょうが登場(どじょう)し、参加者も大興奮!!用意されたどじょうは、想像していたより、小さく、素早く、そして手で掴んでもスルリと逃げられてしまい(どじょうすくいの極意を学んだはずなのに・・・)、なかなか手こずりましたが、みんなでワイワイ、楽しく『どじょうすくい体験』を行ったのでした。

「きゅっきゅちゃん」からどじょうすくいの極意を学ぶ
極意を学んだはずが・・・活きの良いどじょうに大苦戦(生後、2ヶ月程度とのこと)

その後、地域の歴史や文化を学ぶため、たたらの神様の総本山(全国に1,200社もある金屋子神社の総本山)である金屋子神社の見学を行い、本分科会の目玉である比田地区の地域づくり団体「えーひだカンパニー株式会社」の取組について、説明していただきました。

金屋子神社の宮司さんから地域の歴史・文化など貴重なお話を伺いました

地域に想いを持った素敵な人達の集まりだった

実際に活動されているメンバーから「えーひだカンパニー株式会社」を立ち上げた経緯や取組内容、取組のポイントなどを苦労話も交えつつ、非常に分かりやすく、丁寧にご説明いただきました。
みなさんの表情、話しぶり、内容などから「比田地区のことが大好きで、地域のために動きたいという想いを持った素敵な人達の集まりである」ことがとてもよく伝わってきました。

えーひだカンパニーの取組について活発な意見交換が行われました

比田活性化プロジェクトの概要

今回説明のあった「えーひだカンパニー」の取組は、地域で活動されている方々にとって、とても勉強になる内容でしたので、筆者の拙いメモになってしまいますが、共有させていただきます(えーひだカンパニーの了解済み)。

1.取組をはじめる経緯
・安来市比田地区は人口931人(394世帯)、高齢化率54.4%の過疎地域。地域唯一の小学校の全校生徒は23名。
・地域からどんどん人がいなくなり、このままでは、地域で葬式すらできな
くなってしまうとの危機感。この危機感を感じていた比田地区出身の市職員が他地域の取組を勉強してくる。
・「比田を未来へつなげるために」という市職員の一声に賛同した地域住民など36名で、2015年に「いきいき比田の里活性化プロジェクト」を立ち上げる。その後、地域おこし協力隊2名も加わり、約1年かけてビジョンづくりを始めた。

2.ビジョンづくりに向けた取組
(1)中学生以上を対象にしたアンケート調査(回答率90%以上)
10年後に比田に比田に住んでいるかという質問項目に対して、若い世代の3割がNOという衝撃的な結果。
→10年後に地域を残すため、本気で考えなければならない。

(2)先進地視察
地域資源を見つめ直し、それを地域で活用することを学んでくる。地域の人が気付いていない地域資源、魅力は多い。
→比田産のお米を使った地酒、小麦を使ったパンやクッキー、ラーメンなどの開発のアイデアが生まれた。

(3)世代別ワークショップ
小学生から60代まで世代別にワークショップを開催。学校との地域連携で「共育・協働」が生まれた。また、小さい頃から比田について考えるきっかけになった。
→この取組の効果は大きく、現在も若い世代が頑張っている。

(4)全体ワークショップ
地域のみんなが参加したことで、地域住民の得意分野が分かったり、新たな人材の発掘につながった。みんなでビジョンを共有することができた。

上記(1)~(4)の取組で出てきた1469のアイデアから88の取組を選定し、2016年3月にビジョン策定。

3.運営体制

・ビジョン作成後、作って終わりにするのではなく、実際にビジョンを形にするための体制づくりをスタート。
・メンバーは40代の子育て世代が中心。自分達の子どものためにも地域を盛り上げたいという想いで活動している方が多い。
・2016年8月に任意団体を設立。その後、事業の継続性を確保するため(ボランティアだけでは続かない)、また一人一人が責任を持って活動するため、2017年3月に株式会社化。株式会社化している地域づくり団体は全国的にも珍しい。

【株式会社化することのメリット】
 ① 人が変わっても継続する仕組み
 ② 社会的信用の高さ
 ③ 責任の明確さ
 ④ 直接、活動に参加できない人も株式取得という形で支援・参画が可能


・株式会社の構成員は72名。正社員4名、パート13名、派遣2名、残りは会社員や農家、公務員(兼業申請)など幅広く、仕事後や休日に事業に携わる人が多い。
・2022年の売上げは、市場やアンテナショップ運営などを含み、47,329千円。一定の売上げはあるものの、地域づくりの事業も多く(先行投資も含む)、純利益はほぼなし。多い年で5,000千円前後。

4.取組(地域づくり)のポイント
①種をまき続けること(未来志向)
②失敗を恐れず挑戦し続けること(前向き)
③頼ること。教えてもらうこと。堂々と真似をすること。(学ぶ)
④楽しそうにしているところに、人は集まる(楽しむ・引き寄せる)

5.波及効果
①地域の活気、地域の団結力が高まった。
②雇用の創出、UIターン者が増加した。
③事業継承、農業の担い手が出てきた。

(えーひだカンパニー取組内容 筆者メモから抜粋)

いかがでしょうか。実際には、この他にもたくさんのことをご説明いただき、新たな気づき、学び、共感できることばかりでした。
「えーひだカンパニー株式会社」の取組に興味・関心のある方は、以下のホームページもご覧ください。「視察・講演」もご対応いただけるとのことですので、ぜひこちらもご活用ください。

交流会でさらに親交が深まる

1日目の研修交流会終了後、地域の方々に愛されている食堂「丼々」での交流会。
提供されたお料理は比田地域の食材をふんだんに使ったものばかり。安来名物どじょうの唐揚げから始まり、比田獲れしし肉の鍋、地元黒毛和牛や舞茸、たたらそばに比田米おにぎりに加え、お酒もえーひだカンパニーで商品開発をした地ビールや地酒が振る舞われ、どれも絶品で最高のおもてなしを受けたのでした。

お酒も入り、地域づくりに熱い想いを持った参加者同士の会話はさらに盛り上がり、各テーブルで熱く意見交換・情報交換が行われました。そして、宿泊先の旅館に戻ったあとも参加者の熱は冷めやらず、夜なべ談義に勤しんだのでした。

交流会での一場面、大いに盛り上がりました

こうした、地域づくりに熱い想いを持った方々との親交こそが本研修交流会の魅力の一つではないでしょうか。

充実した2日目もスタート

分科会2日目は、Uターン、Iターン者との意見交換から始まり、分科会の振り返り、えーひだ市場、足立美術館の見学など大変充実したプログラムが組まれていました。えーひだ市場では、歓迎のため、地元の方々が比田太鼓を披露してくれました。とても力強い演奏で、子ども達が一生懸命太鼓を叩く姿に胸が熱くなるとともに、地域の文化や伝統が世代や時代を超えて継承されていることの素晴らしさに感動しました。このような貴重な交流の場を提供いただいた「えーひだカンパニー」の方々をはじめ、比田地区の方々には感謝の言葉しかありません。

地元住民による心温まる歓迎(伝統ある「比田太鼓」の披露)

分科会を振り返って「えーひだ」った

2日間の分科会を振り返るため、参加者各々が感じたこと、学んだことなどを発言し、グループで共有しました。

各参加者が2日間の分科会で学んだこと、感じたことを発表

各グループの発表内容から「えーひだカンパニー」の強み、すごさは以下のとおりまとめられるのではないでしょうか。
①   継続するための組織づくりがしっかりできていること
  
⇒ボランティアだけでは継続しない
②   常に挑戦し続けていること
  
⇒新たな事業展開や商品開発など
③   カンパニーの社員が楽しんで活動していること
  
⇒一緒に参加したいという人が次から次へと生まれてくる
④   自分達の地域のこと、良いことも悪いことも分析していて、その上で進むべき方向性を地域で共有できていること

いずれの項目も活動していく上で重要ですが、「えーひだカンパニー」の方々と交流する中で、筆者は特に「実践者が楽しんで活動すること」の重要性を学ぶとともに、地域づくりの原点は、やはり『人と人との繋がり』であると強く感じたのでした。

2日間の分科会を一言で総括すると「えー日(ひ)だった」♪

全体交流会の地、益田市へ

参加者は、充実した2日間を過ごした安来市を後にし、全体交流会の地である益田市に移動。全体交流会では、全8会場(海士町の分科会参加者はオンライン参加)の参加者が一堂に会していました。ここでも島根県産の食材をふんだんに使ったお料理とお酒が振る舞われ、参加者を楽しませてくれました。また、島根県の伝統芸能「石見神楽」が披露され、豪華絢爛な衣装とリアルで迫力ある演出に参加者は圧倒されました。こうした神楽が島根県内各地に残っていることからも、神話や伝承が地域の文化として根付いていることが分かります。素晴らしい。

そして、各分科会でたくさんのことを学んできた参加者同士、お互いがアウトプットする時間になりました。各分科会の様子を報告し合ったり、各々の活動内容などを語り合ったりと充実した時間はあっという間に過ぎていったのでした。

島根県の伝統芸能である「石見神楽」の一場面

最終日は、各分科会の代表者が2日間の分科会の内容を報告し、参加者全員で共有を行いました。各分科会とも共通して、地域資源を掘り起こし、それを上手く活用していること、人と人との繋がり、人材育成を大切にしていることが分かりました。

3日目の全体交流会の様子

ふりかえり

とてもここでは書ききれないほど、充実した3日間でした。決して、一筋縄ではいかないのが地域づくり。それ故に、筆者にとって全国各地で試行錯誤しながら、地域のことを考え、一生懸命に活動されている方々との意見交換は大変刺激的であり、学ぶべき点が多くありました。今回のご縁で繋がった人脈は今後の地域づくりを進めていく上で財産になると考えています。
来年は宮崎県での開催になります。そこでしか体感できないこと、学べないこと、新たな気づきがきっとあるはずです。ご興味のある方は、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

(群馬県地域づくり協議会事務局 栗原)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?