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さらば青春のバカスク

岩田です。はてなブログの過去記事転載です。

2000年の前半から若者の間で流行となったスクーターカスタム、おもに250ccのスクーター(自動二輪車)を改造してブイブイ言わせる俺的な改造車を街中でよく目にした人も多いかと思います。

そんなスクーターカスタムも令和時代には下火となりLEDをギラギラさせたり音楽を鳴らしたり爆音マフラーのスクーターを見かける事もほとんど無くなってしまった東京、

このスクーターカスタムとは色々な方向性があるにせよ総じて「バカスク」と呼ばれた経緯がありまして「馬鹿+スクーター=バカスク」です。

バカスクはスクーターカスタムを馬鹿にするような造語でバカスクと呼ばれて...に言い返せない部分があるのは十分に承知していますがバカスクにかけた情熱だけは真実だったと主張したい。

迷惑をかけるバカスクと迷惑をかけないバカスクの違い

一言にバカスクといっても微妙にジャンル分けがされいたのをご存知でしょうか?

これは名実ともにバカスクである...!は概ね以下の項目の通り

  • 外観を派手にする

  • オーディオをガンガン鳴らす

  • 車高を下げるローダウン

  • LEDで目立つ

カスタムしたスクーターを乗る本人にとってはバカなスクーターではありません、自分の情熱を注ぎまくった自己表現の塊であり相棒、宝物。

しかし一般的にはバカのやる行為として見られていたのも事実、バカスク乗りの根底にあるのもは「目立ちたい」「注目を浴びたい」があったのは否定しようのない事実です。

そしてバカスクがバカスクと貶される理由の一つが爆音、オーディオ、威圧的な態度でしょう、とにかく音がうるさいので迷惑。

しかし本人にとってはイケテル爆音・イケテル音楽となりここでかなりの価値感の相違が発生。社会常識的に考えれば騒音を発しながら公道を走行する自動二輪車になるので迷惑行為で間違いありません。

では迷惑をかけないバカスクとは?

判断基準が難しいところがあるにせよ、スクーターカスタムの世界にはまった人ならば頷ける項目が以下の通り

  • ワンオフマフラー(オリジナル制作の消音機)

  • 吸気系の改造に力をいれている

  • スクーターの性能に見合わない高性能な改造を施す

どちらかと言えばオタク気質なスクーターカスタム、スクーターに必要のない高性能なパーツを取り付ける事により性能UP、それに伴い車体の外観もパーツが向き出しになったりホースが向き出しになったり。

このような性能重視のカスタムもやはりバカスクと同様に見られていました。

というのも性能重視と言いながらもLEDでビカビカにしてしまったりオーディオをつけちゃったり爆音になっちゃりするから。

かつての暴走族時代における「走りメイン」と「喧嘩メイン」のような微妙な違いのようなものだったと今になって思います。

ビッグスクーターをバカスクに仕上げるには金がかかる!

当時流行したスクーターカスタムで必須の項目は以下の3点

  • マフラー(サイレンサー)の変更

  • エアクリーナーBOXをサイレンサー型に変更

  • リアサスペンション(リアショックアブソーバー)の変更

この3点は自動車のカスタムにおけるホイール、エアロパーツ、ローダウンと同じような3点セット、スクーターなので3点を変えたからといって性能が劇的にUPすることはないのですがやらずにいられません。

最初に行いたくて我慢できなるのがマフラー(サイレンサー)の変更でして初心者はウィルズウィンのマフラーにするかスーパートラップにするか悩んだりしたことでしょう。

カスタムに知識のある人はスクーターカスタムの最終形態を考えてのマフラー選び、エキパイはワンオフ(オリジナル)で作ってデビル管にしたりイカツイ見た目のバカスクに仕上げるべくカチ上げタイプのワンピース型マフラーを作ったり。

次に我慢出来なるカスタムがローダウン、車高を下げる改造で手っ取り早くやるならリアサスペンションをローダウンタイプのモノへの変更。

しかし単にリアサスペンションを交換するのでは意味がなく当時の流行はタンク別体式のガスサスペンションにしなければ我慢できないものがありました。

スクーターには必要のない性能の高級サスペンション「オーリンズ」を装着する人も少なくない状態、新品のオーリンズは高いのでヤフオク等で某400CCネイキッドバイクについてるなんちゃってオーリンズを落札してつけたり、オーリンズのシールだけ貼って「オーリンズ風」にしてみたり。

マフラーとサスペンションを交換したら次はエアクリーナーBOXのカスタム、今でもたまに見かけるサイレンサー型(砲弾方とも呼ぶ)エアクリーナーBOXです

カスタムされたスクーターを後ろからみると右側に大きなマフラー、そして左側に小さなマフラーみたいなヤツを見た事がある人も多いでしょう、その小さなマフラーみたいなヤツがサイレンサー型エアクリーナーBOX

サイレンサー型エアクリーナーBOXとは通常エンジンに空気を入れる吸い込み口はエアクリーナーBOXと呼ぶ箱が吸気の末端になります。その末端部の箱を取っ払ってマフラーみたいな形にするとかっこいいんじゃね?なカスタム。

マフラー、リアサスペンション、サイレンサー型エアクリーナー...これら3点セットとも呼べるスクーターカスタムはバカスクの世界で考えも当時はライトな改造といった部類でした。

3点セットの合計はモノによって変わるとはいっても5万円~10万円の予算が必要となり車両本体価格が30万~60万のスクーターで考えればかなりの改造費となります。

でもこの3点セットだけではバカスクとは呼び難いカスタム、バカスクカスタムは5万10万で済む世界ではないのです。

エアロパーツ+LEDカスタムに本腰を入れ始めてからスタート

3点セットとも呼べるカスタムを終えてから次に着手するカスタム、それがエアロパーツとLEDカスタムの世界。

今でこそ街中で普通に売られているLEDですが当時はカーショップで購入するか自作するかでした。

またカーショップで購入したLEDパーツはそのまま使えるものが少なかったので基本分解して自分の理想の場所につける...ってそうなのです。

イカツイ顔で公道キング的に走行するバカスクのライダー、しかしその裏でははんだこてを手にして夜な夜なLEDのユニットの作成、適当にやるとショートするのでDC電源の基本的な構造の勉強、リレー回路の設計、テスターによる電圧のチェック、スイッチ類の設置、オリジナルの発光パターンにするためにIC回路の勉強...

当時のバカスクライダーがこのような事をやっていたとは想像できないかもしれませんね、でもこれが現実。

DC電源におけるLEDの扱い方を一通りマスターすると今度はいよいよバカスクの完成系に近づけるべくエアロパーツの導入です。

エアロパーツを付けたところで速くなるわけでもない、むしろ重量が増すので遅くなるのですがやるしかありません。

一般的にエアロパーツは購入すれば車体に取り付けて終わり...と考えている人が多いようですがエアロパーツとは無塗装の状態が基本になります。

 中には塗装済みのエアロパーツもありますがスムーズにかっこよくきめるためには車体の外装と合わせる必要がある、いやいや...どうせ塗装するのだからいっそのことオールペンしてしまおう!

こうなるともう金が湯水のごとく垂れ流れていく世界。

さらに我慢が出来なくなると自分でエアロパーツを作成、塗装まで行うようになってしまうのです。

FRP素材の扱い方、形成方法、塗装手順などなど勉強することばかり、ホームセンターへ通う頻度が極端に増え始める頃でしょう。

ロンスイ(ロンホイ)やエンジンスワップ

3点セットにエアロパーツにLEDを施した自分の相棒とも呼べるスクーター、その頃にはスピーカーも設置されており一般的にバカスクと呼べる形態にまで進化をしています。

しかしそれではまだまだ初心者の域を脱したレベル、中級者~上級者のバカススから見れば全く物足りないカスタムと言えます。

次に行う改造は車体本体にメスを入れる行為、専門的な道具や知識を必要とするハイレヴェルな改造へと駒を進めなければならない使命感に襲われてしまうのです。

まずやりたいのがロンスイ(ロンホイ)、これはスクーターの全長を伸ばす改造になりましてエンジンユニット・後輪の駆動ユニットが一体型構造であるスクーターの後ろ側を伸ばす改造になります。

スクーターは単純に後輪部だけを延長する改造は出来ないのでエンジン・駆動系・タイヤ の3点を車体フレームと繋げている部分に延長パーツをはめこむ改造が主流。

エキスパートレベルになると延長パーツを完全にワンオフで作りとんでもない長さの全長にしてしまうバカスクもいました。

ロンスイ(ロンホイ)とはロングスイングアーム(ロングホイール)の略語になりパーツ類だけで5万以上は確実。

しかもロンスイをカスタムショップに持ち込めば結構な金額の工賃も発生...という事で基本ロンスイは自分でやる、それが意味するところは自分で車体からエンジンを降ろして(エンジンを外す)して元に戻せるだけの知識と腕前と専用工具が必要になることを意味しています。

そしてエンジンを降ろせるという事は違うエンジンに乗せ換える「エンジンスワップ」も可能(厳密には電気系統など更に専門的な知識が必要)となり、度重なる改造を加えてくたびれてしまった駆動部やエンジンそのものを新しいものに交換できてしまう...

当時...というより今もですけどヤフオク等でエンジン~駆動系ユニットが出品されており、それを落札して新しいエンジンにするぐらいの事を当たり前のようにやってのけていたのがバカスクなのです。

同型のエンジンならばポン付け(そのまま付けれる)が可能ですが型式が異なったり排気量の異なるエンジンに乗せ換えるとなれば軸出し(車体の中心)の技術やワンオフパーツの制作やハーネス類(電気コード類の束等)まで全てを交換する必要があるのでスクーターを全部バラバラにして元に戻せる知識と技術が最低限必要なエキスパートのカスタムです。

外観はバカスクと呼ばれてしまうけどオーナーの勉強・知識・技術の集大成といっても過言ではない作品...

このようなバカスクは究極的に殆ど乗らないで弄るだけの存在となり、「盆栽」と呼ばれるようにもなります。

車体は一つ、オーナーも一人、それなのにマフラー3本、FCRキャブ2個、予備エンジン...あり得ない世界です。

フレームにまでメスを入れる

バカスク全盛期に街で見かける極端に車高が低く地面に座っているレベルで走行するバカスクを見た人もいるでしょう。

あれは見た目こそ異常な乗り物、しかし中身の技術は相当なものになりますてノーマルのフレームでは地べたをはいずるようなローダウンは不可能なのです。

ではどうするか?

フレームを改造する、フレームを作る...ってそう、バイクを一台制作するのと変わりが無い行為になるので半端な知識量では駄目、カスタムショップにオーダーするにしても知識が必要なことは当然として後のメンテナンス技術も必要。

地べたをはいずり回るほどのローダウンを施し、異常なまでに長い車体のバカスクの製作費は10万20万で出来る世界ではありません。

エンジンを改造する、ターボやスーパーチャージャー、NOSまでも

基本的なカスタムを終え、オリジナルの塗装やエアロパーツ、ロンホイ等の進化を遂げてきたカスタムの最終形態は性能面の向上を目指す傾向が強くありました。

しかしあくまでスクーターなので旋回性能等の向上ではなく出力の向上...そう、ボアアップ(排気量アップ)やターボやスーパーチャージャー、NOSといった無茶な改造になります。

まず最初に始めるのがボアアップでしょう、シリンダーとピストンを交換して排気量を上げる、それに伴いシリンダーヘッドの吸気・排気ポートの拡大、燃焼室の拡大、ホーニング...やる事は沢山あります。

シリンダーとピストンで物足りなくなると今度はクランクの交換、俗にいうロンクラ(ロングクランク)カスタムになりまして「クランクケース割り」といった上級者が行う行為、要はエンジンをバラバラにして組み立てる知識と技術、金属を削る技術、金属パテを扱える技術が必要になるのです。

また技術面だけではなく陸運局でどのようにするのか?といった知識も必要...実際は天ぷら(隠語で詳しくは言えません)の人も多かった。

ボアアップでは物足りなくなると今度はターボにしたりスーパーチャージャーといった改造、こうなるともう大変でヤフオク等で軽自動車のターボユニットを購入して接続する技術、それには溶接の技術やブーストの知識、インジェクションによる燃料噴射制御の知識と技術... 恐ろしい世界、まさに「スクーター沼」

また違う方向性としてNOSを搭載するバカスクもいました。

NOSとはナイトラス・オキサイド・システム (Nitrous Oxide Systems)の略になりまして笑気ガス(N2O)をエンジンに噴射する装置全般の事、映画ワイルドスピードでボタンを押すとびゅ~ん!ってなアレです。

NOSの搭載は完全にワンオフでありエンジンの吸気・排気の構造等全てを把握している必要がある改造、狂ったバカスクだとターボ+NOSなんてのもいました。

ターボ・スーパーチャージャー系のカスタムは費用面でみても30万~50万は予算として考えたいところ、またそれまでにつぎ込んできた改造費も考えると究極的なカスタムに至るまでの費用は軽く100万オーバー、費やした時間も滅茶苦茶、揃えた工具の費用だけでも10万越えてる...

バカスクのカスタム、方向性は違えど、見た目はアレでも「青春」の言葉がふさわしい

バカスクといった言葉はオーナーからすれば見下されたような言葉であって自分の相棒とも呼べる愛車に費やした時間や費用からすれば到底受け入れらるような言葉ではありません。

しかし社会の目からすればバカなスクーターといった評価は避けられないものがあるのも事実、どれほど大変だったかを熱弁したところでバカスクの一言で終わってしまう無情な世界です。

それでも自分が愛したスクーター、100万単位の改造費をかけたスクーター、勉強して知識と技術を身につけさせてくれた愛車のスクーター...

スクーターカスタムに夢中になった年齢の差はあれど、あれは正しく青春そのものだったと振り返ってみても断言できます。

そんな青春を捧げたバカスクも度重なる改造やパーツの付け替えにより疲弊、年齢や体力の面からもバカスクを転がすのが難しくなり手放してしまいかつての相棒は心の中で...

さらば青春のバカスク。

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