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『神を見た犬』

2022/03/09
Buzzati, Dino, 1973, Il colombre : e altri cinquanta racconti, Milano: Mondadori. (関口英子訳, 2007, 『神を見た犬』光文社.)

どうしてこんなに長い間積ん読してたんだろう。面白い。イタリア感じた。ホラーみたいな話もあるけど、ロマンある。
中学か高校の時に読んだ荒川洋治『文学のことば』で紹介されていた「七階」が気になって買って、そのまま置いていたんだな。外国の本あんまり読まないし翻訳って読みづらそうで敬遠してたけど、読みやすかったし、素敵だった。
近代批判っぽい文脈で読むの懐かしいなと思いながら、今のウクライナ考えたらそう易々と切り離せないかと考え直した。てかけっこう世界大戦の話出てくるわ。みんな今これ読むべきでは?不条理な幻想譚ということで、私は夢十夜を思い出したけど(もっと明るい)、ブッツァーティはイタリアのカフカって呼ばれてるらしい。
人間のやりとりは不条理っぽい無機質さもあるけど、神も天使もどことなく陽気なんだな。魂をもらいにきた悪魔が、もうひと月待ってくれって言われて待ってあげて季節が巡って、「寒さのあまりコートの中で身を縮め、歯をがちがちならしていた」(p. 43)とか、なに、お茶目?

これ見返してどんな話か思い出せるかは定かでないが、けっこう気に入っている話が多いので、それぞれに一言メモ。
1.天地創造:星、神話
2.コロンブレ:海、真珠←これすき。
3.アインシュタインとの約束:悪魔、お茶目
4.戦の歌:帝国主義、兵士
5.七階:システム、個人の権利、数値化、一方向的(ヘーゲル的、不可逆的)、脱野蛮、説明されない権力(近代的な暴力)
6.聖人たち:煙
7.グランドホテルの廊下:トイレ
8.神を見た犬:パノプティコン
9.風船:失望、煙草
10.護送大隊襲撃:嘘の計画、約束、勇姿
11.呪われた背広:金の亡者、怪談
12.一九八〇年の教訓:デスノート
13.秘密兵器:世界大戦、ドラえもんの秘密道具、オチ
14.小さな暴君:児童中心主義
15.天国からの脱落:永遠の安寧、生きる←これスキ!
16.わずらわしい男:詐欺師、物乞い
17.病院というところ:手続き
18.驕らぬ心:ハッピーエンド?
19.クリスマスの物語:蜘蛛の糸
20.マジシャン:なんで文学やつてんの←これたまに読み返す…。
21.戦艦《死》:初期の進撃
22:この世の終わり:滑稽、懺悔、流れ作業

解説の略歴も面白かった。リアリズムが主流の文壇の中で幻想小説の手法を貫いてかっこいいなと思ったら、マザコンでメンヘラのじじいだったり、「コロンブレ」のイメージが表れた画集があるらしく(超見たい)、あとは各作品に対する訳者の評価が私の読み取ったものとは違う質感で記されていたのも、あそういうかんじなの?って思いながらふんふーんって読んだ。我々の恐怖心の本質をえぐりだすとか書かれているけど、全体的にブラックジョークというかもっとポップで落語的に感じたなあ私は。

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