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「どうぶつかいぎ展」

2022/03/12
@PLAY! MUSEUM

動物に釣られてマークしてたけど、平和がテーマらしくて世界情勢的にタイムリー。「第2次後の情勢を受けて書かれたものがタイムリーっていうのは皮肉ですね」と、後輩。
もちろん可愛いだけを切り取って楽しんでもいいと思う。老若男女に開かれた美術。人を選ばず一番に推せる。ハズレ無しなのでみんな行ってください。

秦直也のイラストは、人間が不甲斐ないから動物会議を開こうってことになって、その知らせが手紙や口頭で伝聞されているところ。
食物連鎖的にだいじょうぶかなってひやひやする組み合わせも多くて(ヒグマに挑む鮭とかけっこう命がけ)、意思疎通のあやうさ、不正確さがいじらしく表れていたり。

鴻池朋子は圧倒的。獣たちの声と虫たちの蠢きが、妖しく軽やかな音楽になる。2020年夏の個展に引き続き、ちゅうがえり。そして影絵。動物の糞を模した展示があって、「ノウサギはころっころ、イノチチこわぁい」と、小さな女の子の声。
動物をモチーフとした美術論の抜粋が机を囲むように展示してあって、椅子に座ってしっかり読める。右から左へ、テキストが進むに従って読み進める人は一つずつ横にずれていく。回転寿司の、回転する側の私たち。ランプに照らされた書斎で時間を共有するようで、いっしょに横にずれていく人たちに勝手な親近感を持つ。

モーリス・センダック『かいじゅうたちのいるところ』然り、長谷川摂子『めっきらもっきら どおんどん』然り、絵本の王道は行って帰ってくる冒険譚。浦島太郎もそうだって宮沢賢治の授業で言ってたな。亀とか玉手箱とか、物語が進むイベントが起こるのは、この世とあの世を越境する瞬間なんだって。
子どもの頃に読んだ本があるから、私たちは遠くに行っても帰ってこられる。帰り方を知っている。旅に出たって空想したって、結局は日常に帰っていくしかないじゃんって最近は考えてたけど、帰ってこられるよすががあるから安心して遠くに行けるのだな。そして鴻池朋子は、ともすれば遠くに行くことを怠る私たちを、生命の深淵へと連れて行ってくれる。

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