朝顔

もう10年以上前、当時付き合っていた女の子の通う学校の軽音楽部に忍び込んで、勝手に仲間を集めて生意気にもバンドなんか組んでいた頃、ドラムを叩いてくれていた2つ下のY君という子が居ました。彼はとても面白くて、幼少期から音楽をやっていたのでめちゃくちゃドラムが上手くて優しくて大好きだったんですが、少々口が悪く、当時僕がバイトしていたライブハウスにその子が別のバンドで出演した時の事。そのライブハウスは小さいビルの2階と3階を間借りしていて、2階がドリンクカウンターや休憩スペース・ステージのモニターがあって、3階がステージという具合、僕はその日ドリンク担当だったので2階に居ました、アジアンカンフージェネレーションのコピーバンドをやっているイケメン君達の演奏が始まって少し経ったあと、Y君がノソノソやって来て、周りに誰もいないのを確認した後「アジカンのコピーバンドなんかすんな!!!!ダセー!!!!!」と叫び僕を見ました、僕も「確かに」と思ったので、右手を上げ無言でハイタッチしたのを覚えています。当時アジカンは日本人が全員好きなバンドで最高にカッコ良い、その割に演奏がかなり簡単でバンドスコアが手に入れば誰でも出来てしまうのでわざわざ来てくれているお客さんにそんなもん見せんな家でやれという事とイケメンは音楽すんなという事だったと思います。そんな話はどうでもいいんですが、彼が20歳の時、成人式を迎える一週間前に突然亡くなりました、僕はそれが本当に信じられなくて、葬式場に向かう車の中でもまだ信じていませんでした。だってそんな訳ない、あんなに元気だった、2週間前も一緒に話して笑った「ドラム叩いてる時ずっと叫んでるけど、あれ何て言ってるの?」「マ〇コですね」「良い言葉を知っているね」死ぬ訳ないよそんな奴、まだ20歳だよ。葬式場に到着すると式はしっかり開かれていて、中に入ると祭壇の上に遺影がある「本当に死んだんだ…」そう思ったら急に涙が止まらなくなって、一緒に行った仲間に「ダメだ俺、見れない」と言い残し車に戻りました。後から聞いた話だと、亡くなる前の晩に仲間とあまり良くない薬に手を出してしまったそうです、元々心臓に持病があったのも相まって逝ってしまったと。本当にバカだなと思ったんですが、彼との会話の中でとても印象深い言葉を思い出します。「朝が来るのが怖い」心臓の病気がいつ酷くなるか分からず、寝てる間に死ぬんじゃないかと、毎晩とても不安だと。そんな状態でなんでそんな事したんだか、想像以上のアホでした。でも、もう心配しなくていいんだな、今は朝を愛せていたらいいなと、そんな事を折坂悠太さんの「朝顔」を聴きながら思いました。それ以来僕は人と別れる時に必ず「気を付けて」と言います、また会いたいから、悪い夜に取り憑かれないよう気をしっかり持って。気を付けてね。

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