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熊野古道(中辺路)を一気に歩こう!(4/5)

 世界遺産登録20周年を迎えた熊野古道の中辺路を歩いてきました。分割、部分観光も良いけど、やっぱり当時の熊野詣を体感するには一気に歩くのが一番だと感じました。
 熊野本宮大社・熊野那智大社・熊野速玉大社の熊野三山を含む主要ルートである中辺路は、紀伊田辺駅から新宮駅をつなぐと約140kmにもなります。ゴールデンウィークを利用して5日間かけて歩くコースをご紹介します。

時期

4日目 2024年5月4日 ゴールデンウィーク

アクセス

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紹介コース

おとなしの郷~請川バス停~百間ぐら~石堂茶屋後~桜茶屋跡~小和瀬渡し場跡~大雲取登り口~越前峠~地蔵茶屋跡~舟見茶屋跡
距離:27.9km 登り:2,359m 下り:1,570m

おとなしの郷~請川バス停

 今日から明日にかけて大雲取越から熊野那智大社へ出て熊野速玉大社まで海沿いを歩いて新宮駅から帰ります。
 今日の終わりがどこまでか明確にできないのは、大雲取越の良い場所に宿泊地が無いためです。熊野那智大社→熊野本宮大社で歩く場合は、小雲取越と大雲取越の間の小口という場所に宿泊地があって丁度良いのですが、熊野本宮大社側から歩くと小口は午前中についてしまい時間を持て余すのと同時に翌日の行程が長くなってしまいます。なので本日はやむをえず地蔵茶屋跡でビバークする予定ですが、状況によりフレキブルに行くつもりです。
 途中で食事がとれそうな場所もないので、本日は朝ごはんを食べてから5時半に出発します。周りのテントは未だ就寝中でした。

おとなしの郷フリーサイト

 国道168号の昨日外れた場所まで戻って先に進みます。
 請川バス停には登山者の姿が数名見えました。バス停のすぐそばに小雲取越の登山口がありますが、一旦通り過ぎて50m程進み公衆トイレに立ち寄っていきます。ここももちろん綺麗です。
 自動販売機で給水したら、いよいよ4日目の大雲取越に出発です!

請川バス停~百間ぐら

 階段を登っていくと、すぐに山道に入ります。最初だけちょっと登れば稜線と巻き道の連続で、道も広く広く起伏もほとんどありません。
 最初のチェックポイントである松畑茶屋跡には1時間ほどで着きました。某登山アプリのコースタイムが山道扱いの計算で2時間設定だったので、予定よりだいぶ早く進めそう。おかげで時間に余裕ができます。
 さらに進んでいくと左下に下る紀伊路のルートと分岐し、ここから登りが始まります。疲れない様ゆっくり登っていくと、右手の木がぽっかりと空いたビュースポットにつきました。どうやらここが「百間ぐら」の様です。
 「百間」は180m、「ぐら」は崖のことを指します。さすがに180mはないと思いますが、高所の崖の上だけあって景色はとても良いです。本日は樹林帯歩きが多いので、ここが一番良い景色でした。

百間ぐら

百間ぐら~桜茶屋跡

 「百間ぐら」から暫くは下るものの、再びなだらかな登りに転じます。新緑が明るい緑色に輝き、歩いていて気持ちがよい・・・と思ったのはつかの間、今度はだんだん暑くなってきました。
 登りきったところが桜峠です。周囲に人がいないのを確認してサポートタイツを脱いで生足になります。涼しい!生き返ります。登山中の生足は怪我の保護や毒虫対策として、あまり褒められたものではないものの、暑くてバテてしまっては本末転倒です。熊野古道では藪歩きもないし、ゴールデンウィークではまだ虫も少なくヒルも見えないので、ここからは生足で歩いていきます。
 桜峠から下っていくと、きれいに苔むした石垣が見えます。ここが桜茶屋跡です。近くに東屋も建っていて休憩できるようになっていました。ちょうど小口から歩いてきた人とここですれ違う様で、すれ違う人が沢山居ました。

桜茶屋跡

桜茶屋跡~小和瀬渡し場跡

 多少の登り返しはあるものの基本的には下り基調が続きます。ただ、景色変化に乏しく、これといったチェックポイントも無いので、長く続く下り坂は精神的に疲弊する区間です。
 そろそろ川が見えてくるかな?というところまで下っていくと、右に「琴平さん」の案内板がありました。熊野古道とは関係ないようですが、ちょっと気分転換に立ち寄ってみることにします。
 荷物を置いて登っていくと結構登りが長く「ちょっと立ち寄りでは済まないかも?」と思い始めます。でも、石畳が出てきて上のほうに鳥居が見えて安心しました。上り詰めると年代物のお社があり、どうやら琴平さん=金刀比羅さん、金毘羅神社であることが分かります。せっかくなのでお参りしていきました。頂なので景色いいかな?と思っていましたが、木々の間からちょっと展望が望める程度だったのは残念でした。

琴平さん

 気分一新したので荷物を回収して下っていきます。尾切地蔵を過ぎ、いったん集落の舗装路に出ます。
 そのまま案内板に従って降りていくと小和瀬渡し場跡に到着です。跡なので既に舟着き場はなく、橋が架かっていて簡単に川を渡ることができます。
 渡った先にはトイレと東屋と自動販売機があり、長い小雲取越の下り坂が終わった後の休憩にお勧めです。東屋で休憩しながら、当時の川の渡し賃表などを見ていると結構面白くて長居してしまいます。

小和瀬の渡場の渡し賃

小和瀬渡し場跡~大雲取登り口

 しばらくは川沿いの舗装路を進みます。周辺には「キャンプ禁止」の看板がたくさんあり、よほど勝手に使われてゴミとかで荒らされたんだろうなあと感じます。確かに川沿いで気持ちの良い場所で、川遊びやカヌーなども楽しめる場所になっているようです。
 大雲取登り口までの道は木陰が少なく暑さ倍増です。ちょっとした登りでも暑い。早く山道に戻りたい気分です。
 大雲取登り口に近づくと昭和感漂う「南方商店」がありました。本日唯一の給食所です。地元向けのお店なので店内にはいろいろな雑貨が置いてあります。総菜やおにぎり、お弁当のような足の速いものはほとんど売っていませんでしたが、日持ちする菓子パンや柏餅などのお菓子、エナジーゼリーなどが用意されているのでちょっと買い足していくのにお勧めです。
 ここで一番お勧めなのがカットスイカ!冷蔵庫で売っています。プラパックなので念のためごみを回収してもらえるか確認してから購入しました。商店の外のベンチで食べたらめちゃめちゃ旨かった~。水分補給にもなって最高の間食になりました!

南方商店

大雲取登り口~越前峠

 「←NACHI」「←KODO」などの外国人向けペイントに従って登っていきます。この5日間の行程で一番高い標高まで登るのがここ大雲取越です。高低差も結構ありますので気合を入れて登っていきますが、序盤は意外とマイルドな道が続き、若干拍子抜けな感じです。
 暫く歩き、苔むした石段を登っていくと円座石(わろうだいし)がありました。この石は熊野三山(本宮・新宮・那智)の神様がお茶をしながら談笑した場所とされています。「神様達のお気に入りのCafe」ということですね。神様たちが陽気に談笑している姿を想像するとちょっと可笑しく感じます。

円座石

 さらに進むと蛇口が2つある東屋がありました。ここから先は登りが始まりますので、休憩と給水はここでしていくと良いでしょう!
 徐々に登りが長くキツくなっていき、「あれ?なんか上り坂ばかりで休みどころがないな?」と思ったら「同切坂」の看板が立っています。ここが大雲取越で一番の難所です。嫌というほど急登は終わらないので、疲れない様ゆっくりと登っていきましょう!

胴切坂

 最後の方でちょっとだけ平坦なな区間を含みますが、ほとんど上り続けで越前峠に到着します。「これで最高標高到達!」という気持ちになりますが、実は最高標高はここではなく舟見峠のほうになります。

越前峠~地蔵茶屋跡

 越前峠からの下りも結構急です。足元に気を付けて下っていきます。
 ここからはアップダウンの多いルートになります。手元のガーミンで計測したので誤差はあると思いますが、越前峠870mから730→810→660→舟見峠880mとアップダウンを繰り返していきます。
 このアップダウンの一番低いところ、660m地点が地蔵茶屋跡です。この周辺だけ舗装路になっていて、車でも登ってこられる様です。地蔵堂のそばには、休憩所、東屋、トイレ、自動販売機があり設備が充実しています。フラットな草地も広く、事前調べの通りビバークに最適そうでした。私が到着したころにはすでに3名ほどが休憩所内で場所取りしていてビバークする気満々の様子でした。

地蔵茶屋跡

 なお、地蔵堂の中にはお地蔵さまがたくさん並んでいました。手前の池にはシャクナゲが咲いてとても綺麗でした。

地蔵堂

 この時点で時間は15時頃。予定通りここでビバークしても良いのですが、まだ明るく歩ける体力も残っています。明日の工程を短縮して、なるべく早く安全に帰途につくためには、もう少し歩いておいた方がよさそうです。次のビバーク目標を那智高原公園に設定して先に進みます。

地蔵茶屋跡~舟見茶屋跡

 目の前の舗装路をゆっくり登っていくと、右に案内板が示す下り道があり、ここから再び山道に入ります。
 ちょっとだけ下るのですが、再び登り返しが始まります。この時点で私は越前峠が最高所だと勘違いしていたので、那智高原公園まで下って行けるだろうと思ったいました。登り返しもすぐ終わるだろうと高をくくっていたら、いつまでも登っていくので、さすがに疑問に思い地図を確認します。ここでやっとこの先の舟見峠が最高所だと気づき、気力が若干落ちてしまいました。登り続きで体力も尽きてきたので那智高原公園まで行くのは諦め、ビバーク適地を探しながら歩きます。
 色川辻を過ぎ舟見峠までの区間は「亡者の出会い」と言われる場所の様です。熊野の地は伊邪那美が亡くなった後に埋葬された場所とされていて、伊邪那岐が会うため死の国へ向かった黄泉平坂がここの坂なのだそうです。生死の境があいまいな場所で亡くなった人に会える場所とされているとのことでした。個人的には会いたい死者はいない、というか寧ろ死の国に迷い込みたくないので、疲れてはいるものの日が暮れる前に舟見峠までは越えたい一心で頑張ります。
 舟見峠の看板が標高880m。もうここより高いところはなく、あとは下るだけです。亡者の出会いも超えたので、ちょっと安心です。
 少し先の舟見茶屋跡で海を眺めると17時でした。あとは下りのはずなので那智高原公園まで行けなくはないと思いますが、お腹も空き、ここからなら明日海から登る朝日が見えるかな?とも思ったので、ここでビバークしていくことにします。
 枯れ葉が多く、地面がフカフカしているので、寝やすい反面ペグを指してもすぐ抜けてしまいます。私の持っていったのは自立できないツエルトでしたので、設営にちょっと手間取りました。

舟見茶屋跡からの景色

下山飯・温泉

 なし(今日は下山してない)
 手持ちの尾西のご飯やレトルトカレー等を食べ、体力回復に努めます。精がつきそうだったので、紀伊田辺駅で買ってきた「ウツボの唐揚げ」も食べました。骨煎餅のような味でお酒が欲しくなりますが、残念ながら本日は携帯していません。スキットルで少し持ってくればよかったと後悔しました。

うつぼで体力回復

豆知識

 昔の熊野参詣の人気コースは以下のルートだった様です。
 ①京都を出て海岸沿いの紀伊路を歩いて現)紀伊田辺に出る。
 ②これまでご紹介した中辺路で熊野本宮大社にお参りする。
 ③熊野新宮川を川下りして熊野速玉神社にお参する。
 ④海岸線を歩いて熊野那智大社にお参りする。
 ⑤大雲取越で熊野本宮大社に戻る。
 ⑥中辺路・紀伊路を通って京都に戻る。
 なので、この大雲取越は熊野那智大社から熊野本宮大社へ歩くのが順方向とするのが良いでしょう。
 人気ルートで歩くのであれば、③の川下りは無理そうなのでバスで下ることになります。
 今回は、5日間に歩きだけで行くルートを設定しているので大雲取越を逆方向に歩いています。

今回歩いたのコース

動画


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