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『言えなかったI Love You.』ショートストーリー

#創作大賞2022

雪が降るんじゃないかと思うほど、寒い1月の夜。

オレは自転車を飛ばして約束の場所に向かっていた。

午後8時にK駅の前。

ポケットにはプレゼント用に包んでもらった箱を忍ばせて。
昨日は彼女の誕生日だった。

「聞いてもらいたい大事な話があるんだけど、会ってくれないかな…」

彼女に電話でそう伝えると、少し沈黙があり、30分だけ会う時間を作ってもらった。

オレはそこに全てを賭けていた。

電話での沈黙の理由が気になった。

彼女はオレが通う大学の短大2年生。
卒業も決まり、春から故郷に戻り大手企業に就職する。

1年浪人して四大に入ったオレからすれば、同じ年齢だがサークルの先輩にあたる。

誰とでも分け隔てなく接し、優しく、大人しいけど自分の意見はきちんと話す女性。

出会った時から惚れていた。
彼女の笑顔がたまらなく好きだった。

だからオレはサークル内ではいつも笑いをとることに徹した。
外したジョークや自虐ネタは数知れず、ついつい調子に乗りすぎて、情けない男、馬鹿な奴と言われたりした。

でも、彼女だけはいつも笑ってくれた。

ある日、オレは思いきって彼女のプライベートについて聞いた。

高校時代から付き合っている男性がいて、彼はいま社会人で遠距離恋愛中。
そしてふたりの中は必ずしも上手くいってるわけじゃないということまで、彼女はオレに話してくれた。

それから、オレの趣味や好きなことについて聞いてくれた。

オレは音楽好きが高じて、小学生のころからのつき合いで別の大学に通う年上の相棒、「先輩」とGUITAR & NOISE というユニットをやっていることを話した。

彼女はGUITAR & NOISE に興味を持ったようで、あくまでネタとして話した「先輩」の無茶苦茶な私生活列伝に大爆笑した。

『私も「先輩」に会ってみたいなあ…』

『いやあ~、会うと危険だから話だけにしとくよ』

オレは「先輩」に嫉妬した。

出会った日から今日まで、オレは彼女に自分の気持ちを伝えるべきか悩んだ。

思いきって、「先輩」に相談してみた。

愛煙家の「先輩」は「ハイライト」を吸いながらオレの話を聞き、

『バカヤロー!どうせ後悔するなら、やって後悔しろ!』

周囲に響き渡るほどのシャウトを決めた。

「先輩」の答えはいつもシンプルで熱い。

でも、後悔が前提って…。

オレはただひたすらペダルを漕いだ。

彼女に伝えたい気持ちを、心の中で言葉にして繰り返しながら。

制限時間30分という時点で結果は見えている。

やっぱり、言わない方がいいのかな…。

待ち合わせ時間の10分前にK駅に着いた。

彼女の姿はまだ見つけられない。

雪がちらついてきた。

オレは夜空を見上げた。

すてきな夜空、に見えた。


『言えなかった I Love You. 』

本気で愛した ハニー
君に贈るよ 銀の時計
1月の寒空を 
自転車飛ばして 駆け抜けた ロード

Oh  Baby  渡したいのは 
時計じゃなくて 『この気持ち』
Oh  Baby  つれない素振り
君の愛するひとは このオレじゃないって
薄々気づいていたけど…

言えなかった 言えなかった I Love You. 
君の気持ち 大事にしてほしいから
切なくて 切なくて 自転車飛ばした
気づいてみりゃ 冬の星空

Oh  Baby  伝えたいのは
ジョークじゃなくて 『この気持ち』
Oh  Baby  悲しい笑顔
君の愛するひとは このオレじゃないって
薄々気づいていたけど…

言えなかった 言えなかった I Love You. 
君の気持ち 大事にしてほしいから
切なくて 切なくて 煙草をふかした
気づいてみりゃ 冬の星空

written by  GUITAR & NOISE 

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