EP.12「射手座ってどんな人?」〜星詠みの物語〜
「さて、それではロビンフットごっこを始めようか!」
また突然なんか始まった。
「オーソドックスに、人の頭の上にリンゴを置いて射抜いちゃう? あー弓矢どこに仕舞ってたっけなあ」
そんな物騒なものを常備しているんですか・・・?
「ん~でも、それは何だか普通だし・・・そうだ、森に潜んで金持ちを襲撃して、奪ったお金をバラまこう!」
それは、もはや単なる強盗では!?
「まぁまぁさすがに冗談だけど。でもさ、義賊であるロビンフッドはたしかに強盗とも取れるけど、王様が命じた徴税だって、見方を変えれば脅迫により強制的に行われているわけだから、強盗とも取れるよねえ」
・・・?
「徴税と窃盗の同一視ってのは、よく議論されることだけど、これも政治学的な哲学だよねえ・・・」
・・・は、はあ・・・?
「哲学だよねぇ」
そ、そう、なのかな・・・哲学・・・?
「そう! その哲学がキーワードなのが、今回の射手座だー!」
え、もしかしてここまでが前振り?
「そうだよ? 毎回手を変え品を変え大変なんだからね」
・・・普通に、「今回は○○座です!」ではダメなのだろうか。
「え、何それ普通過ぎない? つまらんのだが?」
まあ、そう言われると思ってました。
「さて、その射手座なんだけど、よく言われるイメージとしては突撃だの猪突猛進だの、そんなところかな。シンボルが矢だしね、放たれた矢は飛ぶしかない。旅行好きとも言われるし、一ヶ所にはじっとしていない星座だ」
飛ぶ矢みたいにフットワークが軽いってことかな・・・
「ぶっちゃけ、そそっかしさだと十二星座で一、二を争うなぁ。双子座と一緒にいると、良く言えば賑やか、悪く言えばうるさいし」
ここまでの話を聞く限り、哲学という言葉からは大分遠い存在のように見える。
「じゃあなんで射手座があっちこっち飛び回るのかってことなんだけど。その理由は、普遍的なものを見つけたいという本能によるものなんだ」
普遍的なもの?
「つまり、いつでもどこでも、何にでも通じるものを探してる。双子座は情報を集めるために集める。ある種コレクター気質。それに対して射手座は、情報を集めるよりも、まずは実感しようとする。双子座のような星座が頭で考えるならば、射手座は体で感じとるんだ」
なるほど、まさに旅行は現地に行って体感するものだ。
「そうそう。そして体感し終わったら次のところへ旅立っていく。この世には、きっと普遍的な何かがある。それを見つけたいという衝動に駆られてね」
普遍的な何か・・・それはいったい?
「さぁ? ボクが知るわけなくない?」
え、何か知ってそうな口ぶりだったのに・・・
「答えなんて、それこそいくらでもあるよ。普遍の真理は普遍であるからこそ姿を変えるから。見え方は人それぞれだよ」
う、う~ん?
「まぁ、今はまだ分からなくても仕方ないよ。いずれ分かるときが来る」
来る、のだろうか?
「そんに気に病まないの。人生長いんだしさ」
・・・何だか、ミナヅキさんは既に何か悟ってるみたいだ。
それを教えてくれないなんて、なんかズルい。
「ズルいなんてとんでもない! ボクだって、まだ探求している最中だよ。たしかに最初から答えが用意されていたらな~って思うときもある。でもさ、犯人が誰でどういうトリックを使ったのか分かってるミステリー、二人がどんな障害をどう乗り越えるか分かってる恋愛ドラマ、そんなのって、楽しい?」
・・・あんまり。
「ほらね。知らないからこそ知りたいと思う。探求する。射手座の心にあるのはその思いだよ。天秤座で外の存在に気がつき、蠍座で内なる存在を見つめ、そしてそれを終えた射手座のステージは、冒険に出てそれを確かめるってこと」
なるほど。
天秤座からの射手座までが繋がった。
「射手座は、まさしく、未知の世界を知ろうとする冒険家というにふさわしい星座だ。しかもただの冒険者じゃない。どんな未知だろうと、持ち前の情熱で楽しみ尽くすんだ。そりゃ、他の星座からしたら矢のようにも見えるよね」
射手座、そそっかしかったり落ち着きがなかったり、でもそれは純粋に知らないものを知りたいと思うからこその結果なんだ。
「うん、今回も良くできました。ということで、」
はっ・・・この流れは恒例の・・・
「射手座は射手座でも、やらかした射手座は、とにかくとっ散らかしてそのまま次に向かうところがあります! 台風みたいにね。しかも! 周りのことはお構いなしだから、気がついたら騒がしいトラブルメーカーとして周りから白眼視されてることもあるから気をつけるがいい」
なんか、もう慣れてきて別段ツッコむ気も起きなくなってきた。
「・・・チッ」
いま、舌打ちしました!?
次回EP.13「山羊座ってどんな人?」
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