EP.10「天秤座ってどんな人?」〜星詠みの物語〜
「うむ、それではこれより開廷します。被告人は証言台の前へ」
また突然なにかが始まった。
「良心に従って、真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います」
・・・被告人、かな?
「異議ありぃ!裁判長、それは検察側の誘導尋問です!」
・・・弁護人?
「判決を言い渡します。被告人は、有罪っ!」
・・・裁判長?
「濡れ衣だぁぁぁぁあ!それでもボクは、やってないぃぃぃぃい!!」
・・・・・・
「ということで、今回は天秤座の解説です」
ああよかった・・・永遠に始まらないかと思った。
「なかなかの名演技だったでしょ? さて、天秤座の特徴だけど、ずばり、自由・平等・博愛! フランス革命が服着て歩いてるような人たちだ」
フランス革命。
「Luminosite eternelle! 味方に無敵状態を!・・・って、これは百年戦争の乙女だったっけ」
またよく分からないネタを・・・
「とはいえ、そのオルレアンの乙女と精神的には似たところはある。天秤座は美学を非常に大事にするし、価値観の根本として、美しいかどうかが問題なんだ」
というと・・・?
「つまるところ、一般的な正しさなんて、どうでもいいってこと。正しいかどうかよりも、美しいかどうか。ぶっちゃけ美しければ正義だし、醜ければ悪」
なんというか、極端な人たちなのだろうか。
「まぁ、変わってると言ったらそうなんだけどね、自分の価値観を大事にする人たちだってこと。良いか悪いかを一般的な価値観を以て判断するのは正しいけど、天秤座の人たちはそこを自分で考える。自分で判断を下すんだ」
まさに、天秤みたいに、ってことかな。
「そうだね。秤のように、自分で判断を下すには自分の基準が必要だ。そこで天秤座は自身が持つ美学を拠りどころにする・・・となると、実は天秤座って、かなり性格がバラけやすいんだよね」
それはどうして?
「では、逆に質問しよう。美しさとは、何?」
・・・えっと、・・・あぁ、なるほど。
「そう、美しさは人によりけり、人の数ほどある。何を美しいと思うかはその人によって違う。だから天秤座には、変わり続けることを美しいと思う人もいれば、変わらないでいることを美しいと思う人もいる。即座に何かを決める天秤座もいれば、最後の最後まで話を聞いて判断を保留にする天秤座もいる」
だとしたら、共通しているのは、自分で考えるということ?
「そういうことだね。そしてそこから天秤座の特徴を更に説明するとすれば、天秤座は自分と他者の間に明確な線を引いているってこと」
明確な、線引き?
「自分と相手は全く違う存在だということ。少し大げさに言えば、人と人が分かり合うことに一種の諦めを持っているんだよね。どこまでいっても、他人は他人。人は一人でしかないんだってね」
・・・ミナヅキさんの言葉がズシリと胸に響く
「だからこそ天秤座は、相手を理解しようとする。自分と相手が別の存在だとしても、否、別の存在だからこそ分かり合えることも出来るはずだと」
別の存在だから、こそ・・・
「人が何かを理解するために一番手っ取り早いのは比較すること。それぞれを比べて分析し、両者の異なる点を認識する。だから、天秤座にはみんな独特のバランス感覚がある。偏った見方をすると、それだけで理解の邪魔になるから当然っちゃ当然なんだけどね」
既存の価値観に囚われない、ってことか。
「じゃあ、何を通して測るのかというと、自分の美学を持ってくる。そしてそれこそが、自由・平等・博愛の精神だ」
あ、つながった。
「別の存在だからこそ理解したい。まっすぐ相手を理解したい」
それが天秤座・・・
自分の軸を持ち、2つの存在を秤にかけ、そしてそれぞれの差異を理解しようとする星座。
「そういう見方が出来ると、世の中平和なんだけどね。そううまくもいかない。色々溢れてるからね」
世の中・・・そういえば、忘れかけていたけれど、ここは、どこなのだろうか。
自分は、どうしてここに・・・
「まぁ、いずれ分かる時が来るさ」
・・・ミナヅキさんは答えを知っていそうなのに、どうして教えてくれないんだろう?
「ってことで、お待ちかねの落としタイム! 天秤座は美学にこだわるあまり、そのせいで動けないってのは、よくある話だ! 下手すると、ただの難癖屋、皮肉屋になる! クレーマーに化ける可能性が他の星座より高めだ! 弁も立つからほんとにうるさいぞ~」
落とす事は忘れないんだ・・・
次回EP.11 「蠍座ってどんな人?」
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