セツキシマブ(アービタックス)

〇各種抗がん剤の特徴
抗EGFRキメラ型モノクローナル抗体

・抗EGFRとは
EGFRは細胞の増殖に関わるたんぱく質の1つ。
EGFRの遺伝子に変異が起こると、異常のあるEGFRたんぱく質が作られ、がんが発生すると考えられている。セツキシマブはEGFRの働きを抑えてがんの発現を抑える。

・キメラ型ものクローナル抗体について
モノクローナル抗体には4種類あり、完全ヒト化抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、マウス抗体がある。ヒトの抗体に近いほどアレルギー(インヒュージョンリアクション)が起こりにくいとされている。セツキシマブはキメラ抗体であり、ヒトとマウスの性質のどちらも持ち合わされており、セツキシマブの場合は約20%の確率でインヒュージョンリアクションが発生する。

アレルギーの発生率
完全ヒト化抗体<ヒト化抗体<キメラ抗体<マウス抗体

〇投与方法
初回投与(400mg/m2)は2時間かけて点滴静注。
2回目以降(250mg/m2)は1時間かけて点滴静注

〇主な副作用

・インヒュージョン(Infusion reaction)
キメラ型抗体であるセツキシマブは約20%で発現する。
好発時期は初回、2回目の点滴中から終了後数時間以内。
重篤なものは初回の点滴開始直後に生じやすい。投与後1時間は患者の観察が必要。

軽度~中等度(Grade1~2)
セツキシマブの投与速度を落として投与を継続する。
改善しない場合は解熱鎮痛薬、抗ヒスタミン薬、ステロイドを投与し、改善がない場合は投与中止する。

重度(Grade3~4)
セツキシマブの投与をすぐに中止。症状に応じて酸素投与や薬剤投与(エピネフリン、ステロイド、抗ヒスタミン薬、気管支拡張薬)などの処置を行い、再投与は今後しない。

・皮膚症状

ざ瘡様皮疹:
上皮成長因子受容体(EGFR)は毛穴にも発現しており、EGFRを阻害作用で毛穴に炎症が生じる。ニキビ(尋常性ざ瘡)での皮疹は顔に生じるが、ざ瘡様皮疹の場合は顔面以外にも皮疹が起こるのが特徴。
投与後1週目以降。皮膚障害のなかで最も早期にみられる

乾皮症(皮膚の乾燥):投与後3~5週以降で皮疹に続いて生じる

爪囲炎:痛みや爪の発育障害を伴い、重篤化すると肉芽、膿瘍を合併する。

ざ瘡様皮疹の予防
ミノマイシンカプセル(1回100mg1日1~2回)
セツキシマブ開始と同時に予防的に開始

皮膚症状全体の予防
セツキシマブの治療開始と同時に皮膚治療も開始する。
基本は皮膚を清潔に保ち、皮膚の刺激を避け保護すること。

・熱いお湯の使用を避ける
・石鹸は低刺激のものを選択する
・日焼けの予防


・低マグネシウム血症、低カリウム血症、低カルシウム血症

低マグネシウム血症の症状の初期症状として、こむら返りや易疲労感があり、重篤の場合では頻脈や不整脈を起こすことが知られている。定期的に血清中電解質モニタリングを行う。マグネシウムの補充は経口薬では改善が期待できず、硫酸マグネシウムの注射薬で補充するがそれでも改善されない場合はセツキシマブの休薬も検討する。


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