大腸癌

〇特徴

大腸がんの死亡数は男性で3位、女性で1位であり全体で2位。
部位別に分けると結腸がんは3位(男性4位、女性2位)、直腸がんは7位(男性7位、女性9位)。

〇症状

早期の大腸がんには自覚症状がほとんどない。大腸がんと診断された約4割は健康診断で指摘される。

がんの発生した場所にもよるが、進行した場合は多くの場合、次のような症状が現れる。

・排便の変化→血便、便が細くなる、便秘と下痢を繰り返す

・お腹の変化→お腹が張る、腹痛、お腹にしこり

・その他→貧血、嘔吐、体重の減少

〇リスクファクター
肥満、炎症性腸疾患、大腸腺腫、大腸がんの家族歴、赤身肉、アルコール、喫煙

〇腫瘍マーカー
CEA、CA19-9

〇早期癌
深達度診断によって内視鏡的切除や腹腔鏡補助下での結腸切除術が行われる。
Stage0、1の場合は内視鏡治療か手術のみで治療が終了する。

・内視鏡治療
リンパ節転移の可能性がほとんどなく、腫瘍が一括切除できる大きさと部位である場合に適応される。
ポリペクトミー、内視鏡的粘膜切除術、内視鏡的粘膜下層剥離術がある。

・手術治療
基本的にStage0~Ⅲは根治を目的として手術を行う。

〇進行癌

完全に切除できた場合とそうでない場合に治療が分かれる。
切除できた場合は術後補助化学療法を行い、切除不能の場合は延命と症状のコントロールのために実施される。

・術後補助化学療法(完全に切除できた場合)
R0切除(手術にて腫瘍がとりきれたこと)に対して、再発を抑制し、予後を改善する目的で実施される。StageⅡ、StageⅢの直腸、結腸がんが対象。

推奨されるレジメン
FOLFOX療法、CAPOX療法

オキサリプラチンの使用が適切でないと判断される場合
5-FU + レボホリナート
UFT + ホリナート
カペシタビン

いずれも投与期間は6カ月

・切除不能進行再発大腸癌

ステップ1(薬物療法の適応可否判断)

・適応がある(Fit)
全身状態が良好でかつ主要臓器機能が保たれ、重篤な合併症がなく、一次治療のオキサリプラチン、イリノテカンや分子標的薬の併用療法に問題がないと判断される患者。

オキサリプラチン、イリノテカン、5-FUを中心に治療が行われる。
→ステップ2へ進み、分子標的薬の選択を行う。

・問題がある(Vulnerable)
全身状態や、主要臓器機能、併存疾患などのため、一次治療のオキサリプラチン、イリノテカンや分子標的薬の併用療法に対する忍容性に問題があると判断される患者。

ステップ2へ進んで遺伝子検査を行う場合もあるが、患者の状態に合わせて治療の判断を行う。適応がある(Fit)の人と比べると治療の選択は限られる。


・適応とならない(Frail)
全身状態が不良、主要臓器が保たれていない、重篤な合併症がある場合に適応がないと判断される。この場合は、対症療法のみが行われ、抗がん剤の治療は行わない。
対症療法:疼痛があれば痛み止めの服用、出血があれば止血剤など、がんを治療するのではなく、発生した症状に対して治療を行う。

ステップ2(遺伝子検査を行い分子標的薬の選択をする。)

基本的に5-FU、オキサリプラチン、イリノテカンを中心に使用し、それに加え
がんの遺伝子の検査を行い、その患者に特化した薬剤(分子標的薬)の選択を行う。
大腸がんはRAS(KRAS/NRAS)とBRAF遺伝子検査の2つを実施する。

・RAS、BRAF野生型(変異なし)→抗EGFR抗体薬を使用すると効果が得られやすい。
 セツキシマブまたはパニツムマブを併用する可能性が高まる。詳しくは※1へ

・RAS変異型→ベバシズマブを併用する。

・BRAF変異型→進行再発大腸癌の約5%(数字は不明)稀な疾患。極めて予後不良で期待できる薬剤がない。ベバシズマブを併用する。


※1
RAS/BRAF野生型

腫瘍占居部位が左側(下行結腸、S状結腸、直腸)
→FOLFOX or FOLFIRI + CET or PANI

腫瘍占居部位が右側(盲腸、上行結腸、横行結腸)
→Doublet or Triplet + BEV


Doublet : FOLFOX CAPOX SOX FOLFIRI S-1+IRI
Triplet:FOLFOXIRI

・RAS変異型
→Doublet or Triplet + BEV

・BRAF変異型
→Triplet + BEV

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?