いちばんの友達

高校生の頃、私にはいちばんの友達がいた。
彼女は前の高校に居場所がなく、ほぼ行かなくてよいという理由で、まったく同じ過程を経て来た私と同じ通信制高校に同時に編入してきた。
入学式のとき声をかけられそのまま遊びに行って、そこから毎日のように会っていた。
彼女は双極性障害を持っていて、アジアの気候のように激しい人だった。が、私も大体そんな感じなので気が合った。
お互いに次はどんなふうにしてどこで遊ぼうか、そのお金は次はどうやって作ろうか、などと悪いアイディアを出し合い、色々あってお互い経験人数が30倍になるなどした。

彼女が失恋した時はすっぴんで駆けつけクリープハイプの「愛の標識」全力熱唱。そして二人で大号泣。
私はなにも喉を通らないという彼女の口に無理やりカルディの生ハムを突っ込んだ。「う、うまい…」と言ってまた泣いていた。


私が18歳の誕生日を迎えたあの日、私が男にひどい扱いを受け、カスみたいなプレゼントを付き返す気力さえ失って帰宅したあの日、彼女は「予定がある」と言って来なかった。親とも不仲だった私は彼女だけが頼りだった。ただ、私にとってはそうだったかもしれないけど、彼女にとって私は「いちばんの友達」ではなかったんだ、と悟った。

最後に会った時、美容師である彼女に髪を切ってもらう約束をして、その前に食事をした。
彼女は家でマリファナを吸ってきたと言い、酒とピザをアメリカ人くらい摂取していた。髪はベリーショートに近い仕上がりになりかなり最悪で、私という存在への感覚がわかるような気がした。

今年,彼女は結婚した。彼女は結婚することを会った際に知らせてもくれず、ただ招待状を送るから住所を教えてほしいとだけLINEが来た。
私は「いちばんの親友の結婚式なんか行くに決まってるじゃん!」と送ったあと、ドレスや小物を買い揃え、そして数日して、「やっぱりごめん」と送った。捕まらないといいね。


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