無題
どんなにか怖かっただろう、と思う。
そのときは絵を描いてたんだろうか。
仕事で絵を描いてたらそんなことされるなんて、誰が思うだろう。誰も思わない。
直後にあちこちで見かける「ご冥福をお祈りします」という言葉。早くねーか?とどうも思ってしまう。気持ちはわかるが落ち着け、と。まだ親御さんもお友達も同僚のかたも誰も、もしかしたら当人さえ、そんな自覚ないような気がする。
有名だろうがそうでなかろうが、
やってるのはただ、紙を前にペンを持って手を動かすことだけだ。ひたすら。ひたすら。泣いても喚いても、ひたすら。
手を動かさない人たちがなんやかやそれっぽい言葉を繕いながらどうにかして手を動かす人たちに直接的に乗っかろうとする、みっともない様を何度か見てきた。
それらの最も最悪な結末を迎える事態を見た気がした。
自分も同じ時間に、同じように手を動かしていた。
それであんな目に遭うことがあるなんて、ぜんぜん、想像もせずに。
あたりめーだろ。誰が想像するよそんなこと。
火をつける人間の気持ちなんて一生わからない。わかってたまるかこの糞馬鹿野郎。
君がガタガタ文句を言ったり考えてたりしただけのその間、
こちらはただひたすら、ひたむきに、手を動かしていただけなんだよ。
とあるアニメーション会社のかたが「精神が不安定になっています」と書かれていた。そりゃそうだ。いちファンにすぎない私でさえガタガタだった。同業者のかたがたはもっともっと逼迫した、現実的な、切実な想いを抱えていることだろう。
それでも手を動かしているんだと思う。今も。
私でさえガタガタになりながら手を動かした。どうにか終わらせてホッとした。
いつもより喚いていた気がする。
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