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省我会 東京都保育士等キャリアアップ研修 (乳児)の報告

⚪︎はじめに

今年度も省我会による東京都保育士等キャリアアップ研修が行われています。先日、その乳児編が行われました。
藤森先生が話された内容を簡単ではありますが、私の感想と合わせて報告させていただければと思います。

研修の様子


・小学校に勤めていた頃、様々な問題の起因は乳幼児教育にあるのではないかと考えるようになった。

・保育の世界に入り、保育指針や幼稚園教育要領を読むと、子どもは環境に働きかけて発達するとあるが、当時の保育室をみると環境が何もないところばかりであった。

なぜ、こんなにも保育指針や幼稚園教育要領に沿った保育が行われていないのか、それはその内容が大綱すぎて現場の人には理解できない。なので、子どもが自ら環境に働きかけることができる環境を作ることを意識した。それがゾーンであり、見守る保育藤森メソッドである。

・藤森メソッドは子どもの権利条約、保育指針、幼稚園教育要領を具現化したメソッドであり、特別なものではない。

・子どもの研究は、現場でないとできない。集団で生活している生き物の研究を個別に行っても、それは本来の姿を理解することにはつながらない。だからこそ、子どものことは子ども集団のある場でないと分からない。それが乳幼児施設である。

・以前はロックの白紙論というのが根底にあり、子どもは白紙で生まれ、何もできない存在であるとされていた。しかし、最近の発達心理学研究から、生まれたばかりの新生児でさえ、多くの能力を持っていることが分かってきた。新生児でされ、人の顔に興味を持つという社会性の基礎となる力を持って生まれてくる。

・子どもはいろいろなことを自ら学んでいる。だからこそ、それを手助けするのが保育士の役目であるという考えをもつことが大切。

・人類は人の手がないと出産できないようになっている。私たちの祖先のホモサピエンスはか弱い存在だったか、なぜ現在まで生き残れているのか、それは弱いからこそみんなで協力したからである。社会性というのは我々人類が生き残る上で重要な力である。現代は共同することが少なくなっている。それは人類の進化から見ると危険なことではないか。

・抱っこすることで、自分はいい先生だと思ってしまう。子どもが求めたらやればいいが、求めてもいないので、抱っこをしてしまう。そうすると子どもも大人に依存してしまう。

・これからの時代に必要な力はなにか。それは対話する力、他と協力する力、コラボする力という社会性である。これらの育成のために、子ども同士を関わらしていくこと、子ども集団が重要になる。

・令和の教育改革が示された。それは、同質性、均質性、一律一様の教育・人材育成(一斉授業・形式的平等主義)から、多様性を重視した教育・人材育成(個別最適な学び 協働的な学び)への転換である。

個別最適な学びは子ども主体、選択制の保育であり、協働的学びはまさに子ども同士の関わりで、いずれも藤森メソッドが重視していることである。


・「幼児教育は非常に重要である」ということは保育の質が与える影響が正負いずれの影響も及ぼすことになる。良い方にも悪い方にも働いてしまう。2歳半時に保育園に通っていると言語発達遅延が予防されやすいという研究もある。

・食事はみんな揃ってから食べることについて

子どもを待たせることは良くないという考えがありすぎる。世の中にでれば、待たなければいけないことがたくさんある。踏切、信号、行列だってそうである。

待つことは重要であるが、しかし、その先に楽しみがないと待つことはできない

また、どのくらい待てばいいかわからないといけない(見通しの問題)

⚪︎保育士の質について

・保育士は子どもの行動を予測できることが大切である。しかし、これは経験の差も影響するので、最初からできることではない。

・食事や午睡についても、保育士はその子の必要量を把握して、選択させることが大切。予測するためには、個人理解が重要である。

・子どもの刷り込みは保育士の影響を受けてしまうので、大人は子どもと関わる時にはそういう刷り込みを子どもに与えないように気を付ける。

⚪︎アタッチメント・愛着について

・母子関係のような愛着関係は保育園には必要ないし、同じようにできるものではない。保育園は保育園なりの関係がある。

・アタッチメントは転びそうになった時の支えという意味である。愛着という強い結びつきではなく、自分が不安になった時に、何かをしたいときに、支えとなる人を作っておくことが大切。

・子どもの育ちに必要なアタッチメントは子どもが怖くて、不安な時に身近な大人がその気持ちを受け止め、子どもの心身に寄り添うことで十分である。

・アタッチメントはいつもくっついていることでなく、いざとなったらいつでも戻ってくっつけるという感覚が重要。つまり、応答的に関わることが重要。

「人的環境について」

・園では家庭とは違い、様々な人との関わりがある。それらの関わりをいいものにしていくのが保育士の役割。

・子どものが必要に合わせて先生を選べることが大切。甘えたい時はこの人、遊びたい時はこの人、不安なときはこの人。そして、その対象は保育者だけとは限らない。他の子どもでもいい。

⚪︎チーム保育について


・子どもの見方は、目の前の子どもを見守りつつ、全体の状況を意識できるようにする。それによってとっさの事故に対応で気、大きな声を出す必要がなくなる。それは近くの人が対応すればいいから。

・子どもの理解は一人では十分にはできないことを自覚する必要がある。だからこそ、チームを組んで、様々な人の意見を聞いてこどもを理解する。自分の気持ちを表現することは小さい子ほど、表現方法が限られるので、チームで考え、理解する。


⚪︎子どもとつながることを意識する

・しかし、子どもとつながることに執着してしまい、離れなければいけない時に離れられなかったり、子どもに懐かれることに気を取られすぎてしまったり、われ先に子どもと関わろとするのもよくない。だが、子どもと距離を置きすぎ、一緒に遊んで遊びを広げてあげたりとか、気持ちを切り替えてあげるタイミングが掴めないのも問題。

・子どもを予測する力は重要。トラブルが起こりそうな時など。そのためには、個々の子どもの発達、個性、パターン、体調、家庭状況などを把握することが大切。

⚪︎研修を終えて

「これからの時代に必要な力はなにか。それは対話する力、他と協力する力、コラボする力という社会性である。これらの育成のために、子ども同士を関わらしていくこと、子ども集団が重要になる」とありました。子ども集団は今や乳幼児施設にしかなく、だからこそ乳幼児施設の役割はこれらの力を子ども同士の関わりから育んでいく場所になります。子どもは子ども同士で関わったり、協力したり、協働することで、相手に合わせたり、自己を抑制したり、相手の気持ちを察しようとしています。その力を伸ばしていくことが、社会でいきていくためには重要な力になります。また、アタッチメントについて母子関係におけるアタッチメントを保育園にあてはめるのではなく、「転びそうになった時の支えという意味である。愛着という強い結びつきではなく、自分が不安になった時に、何かをしたいときに、支えとなる人を作っておくことが大切」とありました。従来のくっつくこと、そばにいることというイメージが愛着ではなく、自分自身で愛着、アタッチメントになりうる先を作っておくことが子どもたちには重要になるということです。その力は子どもが自らできないことは助けてと相手に言えることや、何ができないのか理解すること、他者との良好な関係を築いていく力に関連するようで、やはり子ども同士という社会性が重要になってくるということを感じました。

見守る保育とは徹底した個人理解であり、個人を理解するからこそ、関わり方が見えてきます。だらこそ、その個人を理解することを忘れずに、子ども同士の関わりを大事にする藤森メソッドの基本を意識し、自らを律しながら子どもど、また同僚と関わっていかなければということを改めて思いました。


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