鉄道車両には「顔」が必要だ
相模鉄道(相鉄)の「12000系」は、2019年から相鉄・JR直通線で使用されている車両です。前作「20000系」同様、深い青色の車体、そしてクルマのフロントグリルのような飾りが備わった顔つきが特徴です。
しかし、この顔の飾り、実はクルマのフロントグリルを模したものではないのだそうです。
<最終更新:2022年5月19日>
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相鉄20000系(相模鉄道ニュースリリースより)
相鉄12000系(相模鉄道ニュースリリースより)
じゃあ、何なのか。
『東洋経済オンライン』のWebサイト記事(鉄道ジャーナル編集部提供)に書いてありました。
デザインブランドアッププロジェクトに参画した「くまモン」の生みの親、クリエイティブディレクター水野学氏の育った地が茅ヶ崎であり、東海道本線を疾駆するブルートレインを身近に見ていた。車両のデザインに携わることになり、「そう言えばあの機関車にはグリルがあった」という思い出から、インスパイアされたのだと言う。よもや相鉄20000系が、国鉄最強のEF66形電気機関車と結び付くとは、驚きの秘話である。
クルマのフロントグリルではなく、国鉄EF66形電気機関車のステンレス製飾り帯がモチーフだったのですね。
ただし「EF66形1次車の飾り帯のスリットには通風孔があった」というのも、事実です。2次車では通風孔が無くなりただの飾りとなったほか、1次車も通風孔が埋められたり、JR貨物が継承した1次車では飾り帯が撤去されたりもしましたが、そもそもは機能に根付いたデザインでした。国鉄ってそういうところ、ちゃんとしてたんですよね。
そして、機能を失ったとはいえ、飾り帯がEF66らしさであり続けているのも事実で、飾り帯が撤去された更新機は少し寂しく見えてしまいます。
鉄道車両の前面はしばしば「顔」と表現され、実際、見る者に何かしらの印象を与えます。顔のない鉄道車両は、どこか不安定に見えるものです。
例えば、機能一辺倒に見える東急電鉄の7700系や1000系電車。
しかし、貫通扉やライトケースなどが、しっかりと「顔」となっています。対して、同じ車体ながら、地方の鉄道に譲渡するにあたり中間車から改造されたものはどうでしょうか。
個人的には、どうにも落ち着かないのです。予算に限りもあったのでしょうけれど、もうちょっとどうにかならなかったのかな、と。もちろん、趣味的な面白さは認めますけど。
こんな例もあります。
JR常磐線のE531系電車は、通常のカラーリングを見る限りは「まあ、こんなもんだろう」という感じです。しかし……
「赤電」と呼ばれる、1980年台前半までのカラーを復刻した編成の先頭車は、なんとも落ち着かない!
国鉄キハ82(左)鉄道車両には「顔」が必要です。のっぺらぼうではいけません。多少の化粧やアクセサリーも必要でしょう。もちろん、それが機能ともしっかりリンクしていれば、なお良いでしょう。そういう意味では、国鉄キハ82形(上写真の左)は造形とカラーリングの両面で、やっぱりかっこいいなと思うのです。
先頭車両を向かい合わせに連結する際に、行き来ができるだけでなく連結作業もしやすい「貫通扉」の設置、視界をよくする窓、そして特急としての流麗さ——キハ82には、それらの要求がうまくまとめられているのです。
私自身は乗る機会がなかったのが、本当に悔やまれます。
<本文終わり、以下謝辞>
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