たぶん、どこにでもある話。

私がMacを初めて購入したのは、確か1995年のことです。私が購入した店舗は秋葉原のソフマップでしたが、当時、Macは街中の小規模な独立系販売店でも購入することができました。ユーザーフレンドリーかつ個性的なMac専門ショップが愛されていたのはもちろんですが、極端に言えば、多少怪しい店でも買えました。

それが大きく変化するきっかけとなったのが、1998年に登場した初代iMacなのです。iMacの取り扱いは「iMacデモ展示販売店」に認定された一部の店舗に限られました。その他の販売店はiMac以外のApple製品を引き続き販売することができましたが、発売当日は行列ができるほどの旋風となったiMacを販売できないのは痛手でした。また「Appleから切られた」と受け取ったショップオーナーもいました。確か、意見広告を出したショップもありました。

その翌年にはオンラインのApple Storeをオープンさせ、同じ年には比較的規模のある販売店の中にApple専門コーナーを設ける「Apple Store-in-Store(ストアインストア)」を始めます。現在の、家電量販店等の中にある「Apple Shop」の原型と言えるでしょう。そして、直営店のApple Storeはアメリカでは2001年に、日本では2003年に始まっています。

ストアインストアが始まったときに何店舗か取材した際には、店長さんなどから「条件が厳しくなかなか大変だった」と聞きました。什器などについてもかなり厳しく、いろいろ言われたそうです。また、1998年の初代iMacに話を戻すと、「iMacデモ展示販売店」に認定されたショップも、それはそれで大変な思いをしています。振り回されたとも言えるでしょうし、覚悟を決めてついていったとも言えます。

他業種のベテランが見れば「いや、そんなのはAppleがやる10年前からウチの業界では当たり前」と思うことでしょう。また別の業界の方が見れば「ウチの業界もここ10年くらいはそんな傾向」と言うでしょう。

例えばですが、バイクショップ(オートバイ屋さん)なんかも、大変ですよね。250cc以上のモデルは◯◯に認定されないとダメとか、売り場面積の下限はいくつだとか、資本金がいくら必要だとか。ひとつの会社で複数メーカーのショップを運営するのはNGだとか。

iMacデモ展示販売店に始まるAppleの小売店戦略は、直営店も含めてユーザーには概ね受け入れられていると言えます。マニアックなイメージがあったパソコン売り場の印象を大きく変え多くのフォロワーを生んだことも、間違いありません。バイクショップの「ディーラー化」も、暗くて入りにくいとか、見積もりもくれやしないとか、そういった業界のよくない風習・イメージを振り払うことに成功しています。

どんな販売チャネル施策にも功罪はありますが、世の中の流れというのは(今に始まったわけではなく)確実にあります。かといって、何もかもが同じ売られ方をするわけでもありません。そして、ジャッジを下すのは常にユーザーなのです。

まあ、個人的には、製造している人たちが劣悪な環境に置かれているメーカーと、そうでないメーカーの製品があったとして、機能が同じであれば後者を選びたいという気持ちがあるのと同じように、販売店をいじめているメーカーよりは、そうでないメーカーのものを選びたいという気持ちはあります。一方で、ダメな販売店から買いたいとも、思いません。

持続可能なものだと、いいですね。


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