森優貴演出・振付「Das Zimmer」個人的妄想

Noism0 / Noism1 「Duplex」公演が、2021年1月22日(金)~2月11日(木・祝)にて全12回公演、2月25日(木)~2月28日(日)彩の国さいたま芸術劇場小ホールにて全5回公演が行われました。

そのうち私は新潟で2公演、埼玉で3公演を観ました。最初のうちは暗闇から時折現れる人間模様の情報量に頭が追い付いていませんでしたが、何度も観るうちになんとなく関係性が見えてくるようになりました。そんな私が設定を勝手に解釈して妄想した物語の概略を以下に記します。(なお、念のため、これはあくまでも私の頭の中の妄想であって、実際のクリエイターである森氏の考えや、それを解釈して踊っていたダンサーの考えは微塵も確認していません)


Das Zimmer

この物語は、19世紀末頃の保守的なヨーロッパ地域が舞台として想定されていると思われる。タイトルがドイツ語であることから、プロイセン王家のドイツ帝国、またはハプスブルク家のオーストリア・ハンガリー帝国内の一地方都市の可能性が高い。
舞台は、とある邸宅の部屋。椅子が10脚あり、そこに集まった人々の過去と現在が闇の中から浮かびあがり消えていく。
集まっているのは、おそらくはその地域を地盤とする有力な一族であると思われる。

その部屋には秘密(樋浦)が眠っている。
その秘密(樋浦)は時折り目覚め、うごめく。

一族は絶対的な権力を握る家長(クイルダン)に支配されている。
一族の若い者達は家長に逆らえないが、時折逆らおうとする者も出る。そんな風に家長に逆らおうとしたある男(林田)が部屋に倒れている。倒れた男に近づく部屋の主である女(井本/渡部)。
絶対的な支配力で一族を従える家長(クイルダン)。彼には3人の息子または甥(トミオカ、中尾、林田)がいる。2人(トミオカ、中尾)は家長に従属的で、一族の事業を一緒に盛り立てる。また、娘(三好)もいる。娘は事業を手伝ってはいないが、一族を助けている。部屋の女主人(井本/渡部)には妹(西澤)がいる。二人は、一族とは少し離れた立場にあり、家長の姪または遠縁だが、家長に支配されている点では同じ立場だ。
家長の息子のひとり(林田)は外の世界に憧れ、旅立とうとする。それを家長(クィルダン)と兄弟(トミオカ、中尾)がねじ伏せてあきらめさせる。その彼(林田)は、女主人(井本/渡部)の妹(西澤)の少女に恋をしている。妹はまだ恋を知るには少し若いが、優しい親戚のお兄さんに好意を持っている。
長男(トミオカ)には従順な妻(鳥羽)がいる。彼は父親と同じように妻に強権的に接する。妻は、夫に従属しているが、心は離れている。夫は妻も一族に溶け込むよう諭そうとしているが、妻の心は一族にはなく、彼女はつねに別の世界をみている。
女主人(井本/渡部)には一族ではない夫(リャン)がいる。彼は一族に受け入れられ、他の兄弟と一緒に一族の仕事を盛り立てる。彼は家長や兄弟たちの方を向き、妻の苦しみには気づかない。
娘(三好)には親友(杉田)がいて、二人は共に希望に満ち溢れ、未来を夢見ている。息子(中尾)は親友(杉田)に好意を寄せ、彼女もまんざらではない。娘(三好)は自立的で、家長や兄弟たちと同じ方を見ている。しかしまた、一族の女性たち全員が、一族の立場を守るよう縛られている。
部屋の主人(井本/渡部)は、そんな家長(クィルダン)が支配する空気が息苦しくて仕方がないが、表立って抗うことも出来ない。彼女の心の闇が、秘密(樋浦)を生み出し、空気が凍りつくとそれがうごめき、最後には彼女自身を飲み込んでしまう……。

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