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sideMは何故人類の命を救うのか?

こんにちは、握野、雨彦担当、朱雀ファンのいちプロデューサーです。

サイスタリリースおめでとうございます!!
TLから聞こえてくる様々な声を見るに、完璧ではなくとも、ひとまずの出だしは悪くないようで、ほっと安心しています。
早く噂のエピソードゼロ読んで狂いてえ。

さて、TLのお祭りムードを眺めながら、ふと、今のモバゲー版sideMの面白いところを言語化したいなという気持ちになりました。
なんだかんだ、伝説のメンテ明けから約7年の間、ゆる~くアイドルマスターsiedMとお付き合いを重ねてきて、ぼんやりと思ったsideMというゲームの面白さを、ゲームとユーザーの関係性、そこから体験できる物語に焦点を当ててまとめていきます。

モバゲー版のsideMとっつきにくいなと感じられた方に、こういう作品なんだと思って頂いて、アニメでもサイスタでも触れてみようと思うきっかけになりましたら、何よりも嬉しいです。


■7年経っても「担当のことがわからねえ」と、Pは言う

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これ、アイドルをきっちり追ってるPさんたちが口を揃えて言うんですよ。本当に。

現在、アイドルマスターsideMの中核を担っているモバゲー版では、イベントという形で各ユニット・アイドルに焦点を当てたシナリオが月4本のペースで配信されています。
また、イベント外でもアイドルひとりずつに用意された専用シナリオや、月1で配信される寸劇、カードに設定されたセリフなど、色んな形でアイドルの情報が小出しにされます。
これらは基本的に、配信当時にシナリオ解放していなくても、ゲーム内アイテムの消費などによって見ることができるシステムになっています。

また、ゲーム外の話ですが、sideMは有志によるwikiが大変よく整備されており、課金ガシャからしか排出しないカードのセリフなどを確認することができます。

モバゲー版sideMで、1キャラでも自力でガシャ産含む全カードコンプリートを目指そうとすると、洒落にならない額の課金が要求されます。せめてアイドルの人となりを示すセリフなどの要素だけでも、相互互助すべきだと判断された先輩Pたちの先見の明には感謝しかありません。

つまり、何が言いたいかと言うと、あとから入ったPだろうと、途中で「こいつの担当は俺だったのか!」と目覚めたPだろうと、そういえばあのときどうだったっけ?と振り返りたくなったPだろうと、知りたいと思えばきっちりアイドルの足跡を追うことができる下地があるんですね。

なのに、「担当のことが分からねえ」と、Pは言う。
どうしてなんでしょう。


■sideMは、ダイナミックな物語が見えづらい

分からない謎を追う前に、sideMがどういう物語を展開しているのかを整理します。

かつて、マンガの神様、手塚治虫は言いました。
「四コママンガがつくれればどんなマンガでも描ける」
これは、起承転結を作ることが物語づくりの基礎であるという話ですね。

もちろん、sideMにも起承転結はあります。
基本的なイベントシナリオの構造はこうです。

①新しいお仕事がくる
②お仕事の準備を進める間、上手くいかない瞬間がある
③仲間の助言や、きっかけを掴んで、ちょっと上手くこなせるようになる
④お仕事に成功する

もちろん、この類型に当てはまらないシナリオもありますが、基本的にはこの構造をずっと7年もの間、繰り返しています。

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描かれる物語はどれも、体当たりでアイドルという慣れない仕事をこなす彼らの日常を切り取ったささやかで等身大の物語です。

決して宇宙を救うだとか、巨悪を打ち倒すといった、少年漫画やハリウッド映画のような事件を解決するダイナミックな物語が展開されるわけではありません。

この時点で合わなそうだな~と思われる方もいらっしゃると思うのですが、もうちょっとだけ待ってください。
sideMのダイナミズムはもう少し別の場所に出てくるので。


■ひとりの人と付き合うなら、「知らなくていいこと」

sideMの物語を評価する際に、よく言われるのが「生身の人間と付き合っているようなリアルな情報の出し方」です。

ふたつ上に書いたように、sideMは出される情報の量は結構多いです。
しかし、その情報の多くは、ひとつ上に書いたように、彼らと仕事の付き合い方に焦点が当てられており、プライベートの話はかなり限られています

この最たる例が牙崎漣の誕生日にまつわるエピソードですね。
2014年にサービス開始した当初、履歴書に書かれておらず不明だった牙崎の誕生日が、翌年の誕生日前日5月13日にいきなり判明する(しかも履歴書が空欄だったのは本人が履歴書をまともに書く気がなかったから)という何ともキャラクター性に寄り添った、凝った演出でした。
昨今のアイドルゲーではプロフィールが予め公開されているのは当たり前ですよね。このあたりは、各作品がユーザーに振る役割(ロール)をプロデューサー(裏事情を知る人間)とするか、ファン(ステージ上やメディアに露出する彼らだけを知る人間)とするかに起因するのではないかと思います。

sideMはそのキャッチフレーズからも、理由=過去を決して否定しないスタンスを貫いていることがわかると思いますが、実はその肝心の過去の部分は断片的な情報しか出てきていません。出てきても、会話で一言、二言触れるだけとかザラです。本当に。びっくりするくらい。
これが、歴戦のPたちに「担当のことがわからねえ」と言わせる所以のひとつなのでしょう。

まあ、よく考えたら、仕事上の付き合いの人間のプライベートで知ってることなんて、たかが知れていますよね
良好な関係を築いている職場の同僚でも、誕生日なんて基本把握してないですし、過去のできごとを一連のエピソードとして本人が語るのに耳を傾ける機会なんてまずありません。
「知らないこと」があっても信頼関係を築くことはできますし、「知らなくていいこと」を知らないままで付き合う礼儀正しさは、相手を尊重する行為とも言えます。

そんなリアルで丁寧な人と人のコミュニケーションを体験させてくれること、それがsideMという作品の魅力のひとつなのです。

他事務所について造詣が深くないのですが、多かれ少なかれ、アイマスにはこういった要素はあるのではないかという気がしています。ただ、sideMは過去に焦点があたっているため、よりテーマ性として浮き彫りになっているイメージがあるのやも。


■人の成長のダイナミズムは、「アルバム」の中だけにある

さて、そんなちょっと面白いキャラクターとプレイヤーのコミュニケーションを構築しているsideM。
もちろん、今の彼らの日常を見てるだけでも面白いのですが、実は、物語のダイナミズムもきっちり用意されています。

それが、アイドル本人の成長です。

2つ前に、本作はアイドル本人のささやかな成長が描かれていると述べましたが、ひとつひとつの成長はささやかでも、重ねれば大きな変化になります
ちょっと引いて数年の積み重ねとして見れば、技術的にも、精神的にも大いに成長している。それは少年マンガの主人公の成長にも、決して退けを取らないのでしょう。
本来は意味が異なりますが、人の成長をダイナミックと呼ばず何と呼ぶのでしょう。

さらにsideMの面白いポイントが、このダイナミズムにささいな瞬間に気付くところです。

sideMは基本的にサザエさん方式で、作中の時間が経過しても、アイドルたちは年をとりません。
そのため、イラストだけ何となく追っても、外見的に大きな変化は起きません。

しかし、過去のものを見返しているとふとした拍子に、こんな表情や表現が出来るようになったんだな、とはっきり分かる瞬間があります。分かった瞬間、大概のPは崩れ落ちます。
おや、と思って過去のシナリオと今のシナリオを比べると、明らかに取り組み方が変わっていたり、出来ることが増えています(最近はそれにアイドル本人たちも気付いているようですね)。

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7年も経てば、大人でも見違えるくらい成長する。
Pでも、本人たちでも気付くくらいに。

それをリアルな時間の流れの中で自然に見せてくれているのがsideMというゲームの面白さのひとつですね。

過去から順に、出来事を比較していく、過去を定期的に思い返していく作業は、正しくアルバムを捲って感慨に耽る行為そのもので、その「アルバム」という名前をつけられたアーカイブ機能がサービス開始当初から実装されていることに、なるほどなあと思ってしまいます。
物語づくりの上手さは劇中劇において遺憾なく、ぎゅぎゅっと凝縮して煮凝りになるまで煮詰めたものが発揮されているので、sideM制作陣の手腕で殴りたいときは劇中劇を口に流し込むのはひとつの手だと思います。まじで。
なので頼むからサイバネを本で出してくれ。


■気楽に、コミュニケーションを楽しもう

ここまで、散々深堀するととんでもねえもんが埋まってるぞと言っておいて何ですが、別に深堀はマストじゃないという話もしておきたいと思います。

本来、コミュニケーションとは今、その場にいる相手との間に発生するものです。
過去を知っているか、慎重に会話しているかどうかは関係ありません。
コミュニケーションとは、相手とどういう関係を築きたいかによって変化します
例えば、気軽な友人として付き合うなら適当にその場の会話を楽しめばいいですし、距離を詰めたい相手なら相手の意図を考えながら会話することもあるでしょう。

同じ事がコミュニケーションというものを丁寧に再現しているsideMにも言えます
アイドルの「なあ、プロデューサー!」という呼びかけにどう応えるのか、どういう関係を築いていくのかはプレイヤーに基本的に任されているます。
アイドルとそのときのコミュニケーションを楽しんでもよし、発言の内容で成長を感じて涙するもよし。
そこを気負い過ぎる必要はないように思います。だってコミュニケーションって基本的には楽しめばいいものですから。

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誕生日に浮かれてる担当ってだけで最高なんだ。変なとこに紙吹雪ついてるスクショしかなくてすまん雨彦。


■結局、sideMとは何を体験できるゲームなのか?

よし、言いたいことは大体言ったのでまとめに入りましょう。

sideMがというゲームがもたらしてくれるプレイ体験を総括するとこうなります。

まずはアイドル本人の魅力。
そこからはじまって、頑張るアイドルとのコミュニケーションを楽しみながら、その生身の人間に近いリアルな成長を感じ、ときに振り返りながら、自分のテンポと距離感で応援していく。
その度量を持った、正にアイドル育成ゲームである。

よく、「sideMは全人類向け」だの、「sideMに命を救われた(かなりガチ目のトーン)」だのと言われるのも、これを考えると納得できるかなと思います。

人間は男女問わず、乳児や子供の頃の親や大人とのコミュニケーションの中で信頼や安心を得て自分を確立していくと言います。それは大人になっても変わることはありませんが、同時に社会性を獲得することで、上手くコミュニケーションをとれる場面ばかりではなくなります。
その中で「なあ、プロデューサー!」といつでも呼びかけて、無条件で信頼をおいてくれるアイドルとのコミュニケーションは、多くの人にとって嬉しく、また現実に疲弊した人にとっては癒しになることもあるのでしょう。その癒しが、ときに命を救うのです。

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なお、FRAMEは全ての生命を救います。
うーん、こうして見てみると、sideMのコンセプト企画した人、間違いなく変態ですね!(いい意味で)
ソシャゲという終わりの読めない長期媒体でやるなら、即効性のある物語の面白さよりもとことん時間的にも情報的にもリアルな方向に舵をとった方が、コミュニケーションとしても成長物語としてもリアリティが出て相性がいい、という趣旨は分かるんですが、思いついても普通やるか???
しかもこの長期間の運営で致命的な破綻の話はあまり聞かないし……どうなってるんだ……
はやくsideMのシナリオ担当のひとは本出してください。


■つまるところ、sideMはいいぞ

今回はsideMのモバゲー版のゲーム性にのみ焦点を当てて語りましたが、楽曲、ライブ、アニメ、新アプリとsideMのアイドルたちの魅力に触れる方法はたくさんあります。

近頃、モバゲー版の改修やテコ入れが進んで、多少プレイしやすくはなりましたが、正直まだまだハードルが高いだろうと思っています。

新しく興味を持っていただいた方、これを機にちゃんと触れてみたいなと思った方は、まずは他のところから触れてみていただいて、モバ時空での彼らの成長が気になったら思い出してモバにもちょっと触ってみて下さるといいかなと。


そのきっかけになりましたら幸いです。

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