5.おにぎり

ここ最近、おにぎりばかり食べている。
なんとなく嬉しくて。

でもふと気づいた。
一旦冷めたおにぎりを食べてる自分に。

ああ、そうか。
あの山盛りのおにぎりは残飯だったんだ。

米の白、海苔の黒、タラの芽の緑。
たしかにその色彩は間違ってはいない。

違っていたのは食感、歯ざわり、まとわりつく弾力。
人の手で弄くられ、圧縮され、時間の経ったおにぎりは、ゴムのような、搗いた餅が冷めたような。

自分はわりあい記憶を、特に食に関する記憶は鮮明に覚えていられる方だ。
それでも自分の記憶をどこかで改ざんしていた。

歯型もあったかもしれない。
タラの芽の、冷めたものに、すでに塩や醤油が振ってあったのも、そうか…

記憶というのはあやふやなものなんだな、と。
喜び、怒り、悪意、無邪気な正義感、社会的制裁。

思い出すことで向き合える勇気もある。

最近、自分が欲しいものを食べられるようになった気がする。