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Z/Xストーリー、アクティベート! 第17回 「上柚木綾瀬編6 奈落に堕ちる復讐者」

皆さん、こんにちは。GRRRです。
今回も綾瀬達の本編での活躍をお話ししていこうと思います。
繰り返しになりますが、各キャラのストーリーの大まかな流れは、公式HPのおもな登場人物の軌跡を見ればわかりますので、そちらもご参照ください。

それでは、始まり!


1.夢幻の世界の放浪者

異世界、夢幻郷の住人であるク・リトの姫君、夜刀うららに助けを求められ、仲間達と共に幻夢郷へやってきた綾瀬達。
しかし、共に幻夢郷にやってきたゼクス使いの一人、ニーナ・シトリーが宿敵ガムビエルの前身だと知った彼女は、憎悪を抑えきれず、ニーナに決闘を挑みます。
戦いには勝ったものの、綾瀬の中の暗い気持ちは消えず、彼女は失意のままにク・リト達の王城を去りました。

奇しくも彼女と入れ替わる形で追加の援軍のゼクスやゼクス使い達が竜域(現代世界)からやってきており、その中の一人が未来を見る魔導書を持つゼクスだったことから少し興味を抱きましたが、それでもこれ以上、彼女は王城に留まるつもりはありませんでした。

綾瀬「心残りは仮面の捜索に使えそうな、未来を映す
魔導書よね……。私が怪盗なら、所有者の
吸血鬼ごと華麗に盗んでしまったのだけど。」

当てもなく幻夢郷を彷徨う綾瀬達。
自身の中の憎悪に深く悩むも答えは出ず、彼女はかなり空虚な時を過ごしていたそうです。
そのように自分のことでいっぱいいっぱいだったためか、放浪の途中で休憩をしていた際に、綾瀬は自身の相棒の異常――ズィーガーが身動き一つとらなくなっていることに気づきませんでした。

そのころ、ズィーガーは自身の精神世界で己自身と対峙していました。
バッドエンドの姿の自身――綾瀬を殺してしまった自分アルタービーストと。

肩書の『四凶星』とは多くの人間の命を奪った、
上位4体のプレデターに与えられる称号です。
かつては、黒の世界でズィーガーとヘルシャーが
殺害数のトップ争いをしていたのだとか。

以前もお話しした通り、綾瀬はズィーガーとパートナー契約をする際に、自身の命を契約の対価として示しました
綾瀬はズィーガーの力を借りて家族の仇討ちを行い、その復讐が果たされたなら、ズィーガーは代価として彼女の命を奪う――。
それが当初の彼女達の契約でした。

ですが、ガムビエルを打ち倒した後もズィーガーは綾瀬の命を奪いませんでした
その時は、凶魔王サタンとの戦いを優先させたから、という理由があったものの、そのサタンとの戦いが終わった後もズィーガーは綾瀬を殺さないまま――。
これには当の綾瀬にすら呆れられていました。
実際、ズィーガー自身も自分が甘くなってしまったことを自覚しており、そのことにいら立つ場面もありました。

「ヘルシャーの言葉が耳に痛てェ……。許せねェよな。
クッソ退屈な毎日に馴染んじまった俺様が!」

――ですが、同時に、彼はもし自分が契約通りに綾瀬を殺したらどうなるのかも想像していました
もしも綾瀬を契約通りに殺したなら、確かにひと時は至福を味わえるかもしれません。
ですが、その後に待つのは再び魔人たちの見世物に戻る退屈で惨めな日々。それこそがかの堕天使が見せたズィーガーの悪夢。
獣欲に身を任せた結果、ただの獣に堕ちてしまった姿、アルタービーストです。

ダークウリエルのアルターの試練によって出現する
アルターの姿は三者三様で様々ですが、ズィーガーの
アルターはストレートに最悪の未来の姿ですね。

己の悪夢たる姿の出現に動揺するズィーガー。
ですが、彼は精神世界の外でたたずむ自身のパートナー――自らが殺していない綾瀬の存在を感じ取り、己を奮い立たせます。
そして、そのままズィーガーは自力でアルターの試練を克服
アルターを打倒し、正気に戻った彼は、なおも悩み続ける綾瀬に不器用な励ましの言葉を投げかけます。

綾瀬「皆に必要なのはあの子のように
無償の愛を持つ子よ。私みたいなのは不要」
ズィーガー「愛だってよ気色悪りィ!
……てめェは殺さねェ。逝こうぜ地の果てまで」

ズィーガーの言葉に励まされた綾瀬は、再び立ち上がって歩き始めます。
ですが、どこまで行ってもメルヘンな光景が広がる幻夢郷に次第に綾瀬はうんざりします。
また、移動の途中で、荷物に紛れてこっそりとついてきていたぬいぐるみ姿のガルマータが顔を出しました

綾瀬「メルヘンな景色や悪夢はウンザリ。
なのに帰るアテはなし。気付けばガルマータは
荷物に潜り込んでるし。〝すまない〟じゃないわ。」

しばしの放浪の末、再び王城の近くに戻ってきた綾瀬達。
そこで彼女達は王城から出撃する巨大ロボットと恐竜――仲間達が決戦に向かう姿を目撃します。
同時に彼女は強大な天使の気配を感じ取ります――。


2.VS Nina Shitori

綾瀬は今まで出会ってきた天使の中でも誰よりも強大な気配を発するその天使が、噂に聞く最初の、そして最強の天使、ウリエルと判断。
白の世界ではウリエルの誕生をきっかけに、他の天使達も次々と誕生していきました。
そう……綾瀬の怨敵、ガムビエルも

ウリエルこそが自分の最愛の両親達が死亡した諸悪の根源
そう考えた綾瀬は、ウリエルを殺害するためにズィーガー達と共に王城へと戻ります。

一方、飛鳥達の物語でもお話ししたように、
フィエリテはようやく復活したウリエルと感動の
再会を果たしていました。同じ綾瀬でもここまで
態度が違うというのも因果な話です。

そんな彼女の前に立ちはだかったのは、またしてもニーナ達でした。
飛鳥達と共に王城の守りと消耗したウリエルの治療のために残っていた彼女は、綾瀬の目的を知ると、彼女の凶行を防ぐためにその道を阻んだのでした。

そして、そんなニーナ達の側に立ち、綾瀬を止めようとする者がもう一人いました。
それは、先ほどまで共に行動していたガルマータ
以前のニーナの決闘の際には、綾瀬の想いを尊重し審判役を買って出てくれた彼でしたが、今、綾瀬がしようとしているのはウリエルを殺すための戦い。
これ以上、綾瀬に罪を重ねさせるわけにはいかない、とガルマータもまた彼女を止める側に回ったのでした。

「やめるんだ綾瀬! 復讐の虚しさを頭では理解しているのだろう?
どうしてもと言うなら私を討て。君の悲しみは私に責任がある!」

ガルマータの必死の訴えに、さすがの綾瀬も表情を歪ませます。
彼女自身、自分が憎悪のままに暴走している自覚はありました
それでも、その黒い思いを抑えることができなかった彼女は、ガルマータの静止を拒絶し、彼やニーナ達と戦おうとします

綾瀬「もう疲れたわ。けど、あの日に連なる誰かが
この世にいる限り、忘れられないの。復讐が
虚無と言うなら、せめて私に諦めさせてよ!」

綾瀬とニーナ。
二人の少女とゼクス達の戦いが再び始まる――まさにその瞬間。
思わぬ異変がゼクス達を襲いました。
ゼクス達の装備していた武器が突然消え、代わりに別の武器が出現してしまったのです
具体的にはズィーガーの肩の剣とガルマータの槍はビーム砲に変わり、メインクーンは爪での引っ搔きが封じられた代わりにその手に苦無が出現したのです。

この異常事態の原因はソルの部下の一人である
七尾のクローン、レーベ・エンデでした。
彼女の特殊能力、ウィッシュ・ボイスによって
ゼクス達の武器が置き換わってしまったのです。

突然の異常事態でしたが、綾瀬は躊躇うことなくズィーガーに先制攻撃を指示します。
パートナーの言葉に応え、ズィーガーは即座に両肩のビーム砲を発砲したのですが、その一撃にガルマータが対応。
彼もまたビーム砲を放ってズィーガーの攻撃を相殺し、その隙にメインクーンがズィーガーに肉薄します。
1VS2でズィーガーが苦戦を強いられる中、綾瀬はニーナと戦い始めますが、彼女もまた一度は容赦なく叩きのめしたはずのニーナに押されてしまいます
ウリエルを守るために迷うことなく全力で戦うニーナに対して、前述のとおり、自身の憎悪に振り回されている綾瀬の攻撃は精彩を欠き、ニーナに瞬く間に追い詰められてしまいます。

無限誓装発動状態のニーナ。メインクーン
譲りの機動力と引っ掻き攻撃、そして師匠である
二人の天使から教わった拘束技で戦います。

綾瀬の大ぶりの攻撃をかわしたニーナは、彼女の懐に潜り込んで首筋に爪を突き立て、降伏を迫ります。
敗北寸前にまで追い詰められてなお、大天使の殺害を諦めきれなかった綾瀬はズィーガーに玉砕覚悟で攻撃を指示しようとしました。
ですが、その直前、彼女達は異様な気配に気づき、そちらの方へと視線を向けます。

仲間達が出撃した方向――ソルの拠点のある方角へと振り向いた綾瀬達が目の当たりにしたのは、すべてを破壊し飲み込む無色の波動
それはうらら達の姉であり、ソルの側についたク・リト、アスツァールが放った根源の破壊波動でした。
幻夢郷のすべてを消し去る勢いで放たれた一撃が、ソル達の拠点からク・リトの王城にまで到達したのです。

かつて犯した大罪が原因で、王城で幽閉されていた
アスツァール。その危険性は今も変わっていませんでした。

全方位に広がる波動を回避する術などなく、直前まで決闘に集中していた綾瀬達はドリーム・キーで身を守る時間もありませんでした。
なすすべもなく破壊波動に巻き込まれる中で、綾瀬達は肉体のみならず、自分達の中の希望や憎しみ――ココロすらも蝕まれます。
このまま自分達は消え去ってしまうのだろうか。
綾瀬の心に一瞬、そんな言葉が浮かびます。

ですが、その時、純白の結界が綾瀬達の前に出現します。
その結界は綾瀬達のみならず、王城全体を包み込み、根源の破壊衝動を完全に防御。
自分達を守る強大な結界に驚きながら綾瀬達が王城の方を見上げると、バルコニーに三人の人影が見えました。
ドリーム・キーを掲げた飛鳥とその隣に立つフィエリテ
そして、フィエリテにお姫様抱っこをされたウリエル
飛鳥とフィエリテから力を受け取ったウリエルが大天使結界を展開し、王城を、そして綾瀬達を守ってくれたのでした。

瀕死の体に鞭を打ってすべてを守ろうとするウリエルの姿を見て、綾瀬は崩れ落ちます。
憎んでいた天使に命を救われた。
その事実と、ニーナ達との再戦での敗北は綾瀬の心の中の暗い衝動を消し去るほどの衝撃がありました。

綾瀬「なんなのあの大天使。瀕死のくせに、
根源ク・リトの破壊波動から私まで守って……。
何様のつもり!? また殺し損ねたわよ……。」

根源の破壊衝動が過ぎ去った後、無理をしたウリエルはフィエリテと共に王城の一室で休養し、一方の飛鳥は綾瀬達の元までやってきました。
飛鳥が自分達に合流したところで、綾瀬は彼やニーナ達に自身の復讐を終えることを宣言
その後は王城で仲間達の帰還を待っていました。

やがて、ソル達に勝利した仲間達が凱旋。
八千代達、黒の世界チームが気絶しているなどの被害はあったものの、命に別状はなく、しばらくすると彼女達も回復しました。

また、帰還した面々の中には綾瀬が初めて会う
ゼクス使い達以外にも、サタン戦で行方不明に
なっていた黒崎神門の姿もありました。

王城でのしばしの休息の後、いよいよ綾瀬達が現代世界に帰還する日がやってきました
現代世界に戻ったら、八千代とさくらを彼女達の両親のもとに送り届けた後、神祖の仮面の探索を再開しよう――。
そう考えながら、綾瀬はク・リトの一人、ヨグ・ソティスが展開したゲートを潜り抜けました。
ですが――


3.蝕まれるココロ

ゲートの先にあったのは見慣れた現代世界の街並みではなく、多くの廃墟でした
その廃墟の様子と現代世界とは異なる世界そのものの気配に綾瀬は既知感を覚えます。
ここは現代世界ではなく、強い精神力が支配する世界――白の世界
以前のガムビエルの叛乱の際に破壊され、荒廃したままの地域に綾瀬達は飛ばされてしまっていたのです。

しかも、周囲にいたのは綾瀬とズィーガー以外は飛鳥とフィエリテ、赤の世界のゼクス使いである都城出雲ガーンデーヴァしかおらず、八千代達やさくら達といった他のゼクス使い達やゼクスの姿はありませんでした。

弓の名手のマイスター、ガーンデーヴァ。
パートナーの出雲ともども、綾瀬とは縁のない
相手でしたが、飛鳥達とは面識がありました。

予想外の事態に困惑する綾瀬達。
しかも、異変はそれだけにとどまらず、突如、綾瀬達はどこからともなく目に見えない斬撃としか表現しようのない攻撃に襲われます。
その斬撃は人体には直接、ダメージを与えなかったものの、衣服を切り裂き、精神力を削り取ります。
防御に長けたフィエリテの結界も意味をなさず、綾瀬達は目に見えない攻撃に耐え続けるほかありませんでした。

元から露出度多めの衣装であるにも関わらず
さらに布面積が下がってしまった綾瀬。
精神へのダメージもかなり大きかったようで……。

しばらくすると斬撃がやみ、綾瀬達は少しでも体を休められる場所はないかと移動を開始します。
ですが、先ほどの不可視の斬撃によって精神に多大なダメージを受けた綾瀬とズィーガーは完全に鬱状態になってしまいました

綾瀬「私は真祖の仮面を発見出来ず復讐も
果たせない半端な女。生まれ変わったら
トゲアリトゲナシトゲトゲになりたい……。」
ズィーガー「俺様の二つ名は〝よつあし〟じゃねェ。
〝よんそく〟だっつってンだろ。ハハッ。
どうせ一生理解されねェンだぜ……。」

出雲とガーンデーヴァ、フィエリテも躁鬱が激しく、全く余裕のない状況。
唯一平常心を保っていた飛鳥は、綾瀬達の状態を見かねてウリエルの剣を召喚、天使達への救難信号である光線を空へ向けて飛ばしました。
間もなく、飛鳥の救難信号に気づいた天使達の一団が訪れ、その中の一人、モテッツが進み出ます。
飛鳥から事情を説明され、どこか安心して休める場所に案内してほしいと頼まれた彼女はその要求を快諾。
上層部への報告を他の天使達に任せた後、モテッツは綾瀬達を近くにある喫茶店に案内してくれました。

綾瀬と飛鳥がかつてガムビエルを撃破した功労者で
あることは、一部の天使達や守護者達に周知されて
いるそうです。モテッツも知らされた天使の一人です。

モテッツが案内した喫茶店――ニーナが白の世界にいた頃に設立し、普通の猫に擬態したケット・シー達が客をもてなすという【 Cait Sith Cafe ~癒やしの猫喫茶~ 】に入店した綾瀬達(ズィーガーのみ、体が大柄だったため裏口から入る羽目になりました)。
そんな彼女達をウェイトレス衣装の天使が出迎えてくれたのですが、その天使の顔を見た瞬間、綾瀬は凍りつきました
なぜなら、その天使は綾瀬の両親の仇であり、自分達が殺したはずの凶天使――ガムビエルだったからです

思いもよらぬ宿敵との再会。

綾瀬達が愕然とする中、モテッツが事情を説明します。
彼女はガムビエルの叛乱の後、ミカエルの慈悲によって転生した天使、ガムビエルちゃんであり、前世の自身の行いや綾瀬や飛鳥のこともミカエルから教わっており、かつての自分の悪行の贖罪のためにここで働いている――と。
そう最低限の説明を終えると、モテッツはガーンデーヴァを連れて引っ込んでしまい、後には呆然とする綾瀬達と思わぬタイミングで綾瀬達と出会って狼狽するガムビエルちゃんだけが残されてしまいます。

当初は驚愕の表情を浮かべていた綾瀬でしたが、次第にその表情が困惑へ、さらには怒りのそれへと変わっていきます。
憎悪と怒りの言葉と共にガムビエルちゃんを睨みつける綾瀬に対し、上述の通り転生する前の自身の所業を把握しているが故に、綾瀬を前にして委縮するガムビエルちゃん。
飛鳥が二人の間を取り持とうとするものの、それも徒労に終わり、最悪の雰囲気に耐えられなくなったガムビエルちゃんは失意の表情でバックルームに下がってしまいました。

宿敵が立ち去った後、綾瀬はその場で呆然とした様子で立っていました
飛鳥が彼女の様子を心配する中、フィエリテは綾瀬が先ほどの不可視の斬撃の影響がまだあるのではないか、と言いますが、それにしては人間である出雲も含めて他の面々はすでに回復しているとズィーガーは首をかしげます。
その出雲に対して、飛鳥がこれまでの事情を説明する中、ようやく綾瀬は正気を取り戻しました。

自分と飛鳥の関係を何か誤解している様子の出雲の言葉を遮ってから、綾瀬は意外と落ち着いた様子で自身の心情を語ります。
幻夢郷で宣言した通り、これ以上、復讐をするつもりはない。
ニーナも今のガムビエルちゃんも自身の仇であるあのガムビエルではなく、そしてそのガムビエルはもう自分達が討ち果たした。
そこまで言ってから、自分を心配してくれた仲間達に不器用に感謝を告げると、ズィーガーが随分と丸くなったとからかってきました。
そんな相棒にムッとした綾瀬は、この店のメニューにあるであろう特製の猫缶を注文してあげないと宣言。
思わぬ綾瀬の報復にズィーガーが絶叫し、そんな彼女達のやり取りにようやく仲間達の空気も緩みます―――が。
その直後、おぞましいほどの殺気が周囲を包み込みました

異常な気配に仲間達が戦闘態勢をとる中、またしても綾瀬は呆然としていました
綾瀬の異常な状態は不可視の斬撃ではなく、この気配の主のせい。
そうズィーガーが分析するのと同時に、フィエリテもまた綾瀬が何者かの精神攻撃を受けていると発言。
そうこうしている間に綾瀬は何かに取り憑かれたかのような様子でふらふらと歩きだし、ガムビエルちゃんが引きこもった店の奥へと歩み始めました。
飛鳥達が慌てて彼女を追いかける中、綾瀬は店の奥――バックルームの中へと足を踏み入れ、そして――。


4.復讐の輪廻

まず、綾瀬達の目に飛び込んできたのは、血まみれで力なく倒れ伏したガムビエルちゃんの姿
飛鳥が彼女の容態を確認したところ、命に別状はないようでしたが、綾瀬はそれどころではありませんでした。
それまで以上の強烈な精神汚染が彼女の思考を蝕んでいたからです

そんな中、フィエリテが異常な気配の持ち主に姿を見せるように叫ぶと、何もない虚空から一人の少女が姿を現しました。
――綾瀬と全く同じ顔立ちの少女が

「……私が呼んだのは綾瀬だけ。
部外者は出てってくれる?」

壁に手をつき、苦しみながらも綾瀬が自分そっくりの少女に名を尋ねると、その少女は笑みを消して激しい口調で叫びます。
自分は綾瀬の持つ嫉妬の感情から生まれた存在
繰り返される黒の世界の滅びのシミュレーションで幾度となく家族を失い、他人の幸せな家庭を見て妬み嫉み僻み恨みを募らせた
その数多の世界で破滅を迎えた綾瀬の負の感情が星界という何もない世界で集うことによって誕生し、永劫の孤独に苦しんだのが自分という存在なのだ、と。
そして、少女は名乗ります。
自分の名はプリンセス・マギカレヴィー
嫉妬の神祖の魔人と化した綾瀬――レヴィアタンの名を冠す存在だと。

レヴィーは五つの未来世界、すべての未来で
不幸な結末を迎えた綾瀬の記憶を持っています。
その中でも、黒の世界はループの回数が多かったため、
レヴィーは黒の世界の綾瀬の要素が強くなっています。

レヴィーの言葉を綾瀬は必死に否定しますが、その口調はあまりにも弱々しいものでした。
綾瀬自身、レヴィーの悲痛な叫びに思い当たる節があったからです。
動揺を露にする綾瀬にレヴィーはゆったりとした動きで近づくと、彼女を背中から抱きしめ、その耳元で何かを囁きました。
その途端、さらなる精神干渉を受けた綾瀬は先ほどまで以上に苦しみ始めます

パートナーを苦しませるレヴィーに、ズィーガーは怒りの咆哮と共に飛びかかり、他の仲間達も攻撃を行おうとしましたが、そんな彼らに白の世界に到着した直後と同じ不可視の斬撃が襲い掛かりました

ズィーガー達が不可視の斬撃に苦戦する中、レヴィーによって精神を汚染された綾瀬は朦朧とした様子で不穏な言葉を口にしだします。

「パパやママは二度と戻らない。私だけが報われない。いっそ全部消してしまえば復讐になるかしら?

虚ろな表情で涙を流す綾瀬。
彼女の世界全てを呪う言葉にレヴィーは笑みを浮かべますが、そこで飛鳥が怒りの叫びと共に立ち上がりました

普段は温厚な飛鳥ですが、仲間を傷つけられた
際には怒りを露にすることもしばしばです。
関西弁も相まって、結構な迫力です……。

ズィーガーも同様に戦意を奮い立たせてレヴィーに対峙します。
一方のレヴィーはそんな彼らの怒りにも動じず、世界全てを自分がかつていた世界、星界に送ることで『すべてをなかったことにする』と危険極まりない目的を口にします。
その言葉を聞いた出雲は彼女をこの場で討滅すべきと、カードデバイスを取り出しました。
同時に飛鳥もデバイスを取り出し――その直後、彼らの手の中のカードデバイスが砕け散りました
愕然とする飛鳥達に対し、レヴィーは平然と告げます。

「私が〝不要〟と思えば、それは存在意義を失う。
いまこの瞬間、世界中のカードデバイスは同時に
消失し、世界中の人間の記憶から消えてゆく。
最初から〝無かったこと〟になるの

この力で世界そのものを消してしまうことで、全てをなかったことにする。
レヴィーの危険な力とその目的に、ズィーガーはフィエリテと共に戦慄します。
それでも、彼女を止めようとみんなが再び攻撃態勢を整えたとき、突如、うららとアスツァールがやってきました
うららは一瞬、自身の姉、ゆたかが不在なことを残念がったものの、すぐに異常な状況を察してズィーガーや飛鳥達と共に並び立ちました。

現代世界での冒険を夢見てゆたか達を追いかけようと
したうららでしたが、とある事情から白の世界に
やってきてしまいました。その理由も、またいずれ。

この後、飛鳥と綾瀬の関係を勘違いした出雲が余計なことを言ったり、アスツァールがなぜかレヴィーの側に立ったりと、微妙にぐだぐだな展開はあったものの、綾瀬はいまだにレヴィーに捕まったままであり、予断を許さない状況でした。
このままでは埒が明かないと判断したズィーガーは多少は綾瀬を傷つけても構わないから、どうにか彼女とレヴィーを引き離すと宣言
他に策も思いつかなかったことから、仲間達もその作戦に同意しました――が、そこで思わぬ人物が反対しました。
傷つき、倒れていたガムビエルちゃんです
彼女はボロボロの体のまま綾瀬に向かって這いずり、朦朧としたままの彼女に必死に訴えかけます。

「そいつの言葉に、耳を傾けちゃダメ、です……。
昏い感情に、身を任せちゃ、ダメです……。
天使殺しにも、人殺しにも、なる必要は、ない……。
二度と、手を汚す必要、ないんです……!!」

その言葉に、綾瀬はわずかながら反応を示しました。
一方、レヴィーは不愉快そうにガムビエルちゃんを睨むと、彼女へと容赦なく不可視の斬撃を放ちますが、それらの攻撃はうららとアスツァールが防ぎました。
彼女達が時間を稼いでいる間に、ズィーガーもまたガムビエルちゃんや飛鳥と共に綾瀬を正気に戻そうと必死に声を張り上げます。

互いに遠慮なしの発言をすることも多いものの、
いつだって綾瀬に寄り添い続けたズィーガー。
この時も不機嫌そうな口調ながら、
綾瀬に声をかけ続けました。

ぶっきらぼうで無遠慮ですが、誰よりも頼れるパートナーの叱咤。
時には敵として、時には共に戦う仲間としてずっと自分に向き合い続けてくれた少年の叫び。
そして、かつて誰よりも憎み、ですが人間だったころの彼女と同じような善良な存在へと転生した宿敵の訴え。
彼らの声は闇に包まれつつあった綾瀬の心に届きました
僅かに正気を取り戻した綾瀬は、必死に自分へと手を伸ばすかつての宿敵、ガムビエルちゃんに、自身も手を伸ばして――。

助けて…

そう綾瀬が呟いてガムビエルちゃんの手を取った瞬間、レヴィーは怒りの形相と共に嫉妬の闇を展開
自身と綾瀬を闇に包むと、そのままその場から消え去りました
綾瀬を目の前で連れ去られたズィーガーは悔恨の咆哮を轟かせることしかできませんでした

その後、その場に残されたズィーガーについての明確な描写はありませんが、恐らくは飛鳥達と共にガムビエルちゃんや猫喫茶のケット・シー達の救助に協力しつつ、これからどうすべきかを相談していたと思われます。

一方、綾瀬を嫉妬の闇に取り込んだレヴィーは、手始めに最も自身と因果の強い黒の世界を消滅させます
続いて、青の世界も消滅させようと試みたレヴィーでしたが、綾瀬達が白の世界を訪れたのと同じタイミングで青の世界を訪れていた黒崎神門達がレヴィーの存在とその目的を察知
青の世界の住人達や突如別世界から現れたゼクスやゼクス使い達、パニッシャーと共に万全の防衛体制を整えてレヴィーの侵攻に備えていました。

異世界のあづみをはじめとしたパニッシャー達は
みんな、旧世界では青の世界に訪れていました。
平衡世界の住人という不明瞭な点も多い異邦人の
彼女達も黒崎神門は自軍の戦力に組み込んでいました。

レヴィーが自身の手先として送り込んだワールドアバター達はパニッシャー達の迎撃を受けて全滅。
レヴィーは自ら青の世界に乗り込んで世界を消滅させようとしますが、神門達を中心としたゼクス使い達の猛攻を受けて失敗。
彼女達の戦いの余波によって、時空の歪みが臨界点へと到達
その結果、時間の巻き戻りが発生し、新たな世界が誕生することとなります――


5.次回に続きます

ここまででだいたい第36弾から第43弾までの綾瀬の物語です。
幻夢郷で己の中の憎悪に振り回された綾瀬は、白の世界にて自身の憎悪と嫉妬の化身たるレヴィーの干渉を受けた結果、彼女に取り込まれてしまいました。
そして、新たに生まれ変わった世界でも、彼女はレヴィーの悪意に囚われたままであり、かつての世界以上の惨劇の道を歩むこととなります――。

現在、そんな彼女達の新世界での物語が公式ホームページで展開中です。
先が気になる方はそちらもご参照ください。

それではまた次回!

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