Z/Xストーリー、アクティベート! 第24回 「各務原あづみ編4 神と二つ星の交錯」
皆さん、こんにちは。GRRRです。
今回もあづみ達の本編での活躍をお話ししていこうと思います。
前回の続きということで、絶望のどん底からのスタートになりますので、鬱展開が苦手な方は注意です。
語る側の私としても気が重いですが、頑張ってお話ししていきます。
繰り返しになりますが、各キャラのストーリーの大まかな流れは、公式HPのおもな登場人物の軌跡を見ればわかりますので、そちらもご参照ください。
それでは、始まり!
1.悪辣なる『王威』
緑の世界への侵攻戦からしばらく経った後、再びアドミニストレータ アルクトゥルスが音声のみであづみにコンタクトを取り、命令を下そうとします。
ですが、その命令にあづみは反発。
さらにはリゲルの記憶をモノ扱いするアルクトゥルスに、普段の彼女の姿からは信じられないほど激昂します。
そう、この時のあづみの姿は、これまでの彼女とは大きく異なる痛々しいものでした。
それだけ、今の状況に彼女が心を痛めていたのでしょう。
その様子は公式ショートストーリーで確認できます。
参考資料
B16 神域との邂逅 side.AZUMI
そして、その会話の中であづみはアルクトゥルスを怒らせてしまい、さらにはリゲルにまで部屋から出ていくように叫んでしまいます。
アルクトゥルスは怒りと失望と共にあづみ達に追って処分を下す、と言って消え去り、リゲルもその場から去りました。
あづみに対する別れの言葉を残して。
―― 一人になったあづみはその場で崩れ落ちます。
リゲルに対して八つ当たりのように叫んでしまったことへの自己嫌悪。
誰も自分の側にいない孤独感。
どうしようもない絶望的な状況に、思わずあづみは叫びました。
――その悲痛な願いは確かに届きました。
本物の神に。
世界を滅ぼす神に。
あづみの絶叫に応えるかのように、『彼』は彼女の前に姿を現しました。
澄み渡る『王威』マルドゥク。
自身のことを真なる神、ディンギルと名乗るマルドゥクはあづみに告げます。
自分達、神の眷属となるのであれば、一つ願いを叶えてあげましょう、と。
突如、現れた神を名乗る謎の存在からの、怪しげな誘い。
普段のあづみならば警戒したかもしれません。
実際、他の神と邂逅したプレイヤーやパートナーゼクス達も大なり小なり警戒しています。
……ですが、既に絶望的な状況に陥っていたあづみは、ほとんど躊躇なくその誘いを受けました。
果たしてマルドゥクに願ったあづみは、彼の眷属、《叶えし者(キラツ)》となりました。
当初、彼女はリゲルの力になることを願おうとしたのですが、彼女が側にいないことから、既にリゲルが『処分』されたのだと思い込んでしまいます。
その結果……彼女の願いは破滅的なものとなってしまいます。
――青の世界の滅び。
それがあづみの願いとなりました。
マルドゥクは信者の願いに応え、彼女に力を与えました。
そして、あづみは青の世界に対する憎悪のままに行動を開始します――。
さて、一方のリゲルは、あづみが《叶えし者》となった影響で、その胸元に神の紋章が出現していました。
彼女はこれが処分対象に対する刻印なのかと、首をかしげます。
……彼女がその紋章の意味を知るのは、もう少し後のことになります。
2.失楽園から来たりし者達、ディンギル
さて、あづみの前に現れたマルドゥクをはじめとした神々――ディンギル達。
彼らが人々やゼクス達にとっての敵であることは、すでに飛鳥達や綾瀬達の物語でも触れてきましたが、彼らの詳細な説明については今まではしてきませんでしたね。
ここで一度、しっかりと紹介していこうと思います。
現代世界の一つの可能性である各色の未来世界からやってきたゼクス達と異なり、ディンギル達は神域(デュナミス)と言う現代世界とは全く別の異世界で暮らしていた存在でした。
その世界は楽園とも呼ばれるほど穏やかな世界だったのですが、別の世界――零域(エンテレケイア)からの侵略者によって神域は壊滅。
唯一残った最後の神は異世界の存在への強い怒りと怨みを抱きながら、自らの命を犠牲にすることで、自身の子供達である新たな神々を創造しました。
新たに誕生した神々は母の憎悪と怨みを受け継いだ結果、一部の例外を除き、神域以外の世界とそこに住まう者達に対して強い敵意を抱いています。
やがて、人類が存在する世界――竜域(エネルゲイア)の存在を知った神々は、その憎悪のままに竜域に破滅をもたらそうとします。
他の神々に先んじて竜域の存在に気づき、そこにいたある少女と交流を交わした慈悲深き神――エンキは神々の侵略から竜域を守ろうとしましたが、神々の猛攻の前に竜域は多大な被害を被ります。
それでも、最終的には全力を賭したエンキと彼の最強の同胞たるエルダードラゴン達によって神域と竜域を繋ぐ門、神門が封印され、辛うじて竜域は守られたのでした。
そして、竜の姿となって力尽きたエンキは海の底で眠りにつき、長い年月をかけて彼の体の上に土が積もった結果、竜を思わせる形状の島国――日本が出来ました。
一方、エンキ達の抵抗によって、竜域への直接的な侵攻ができなくなった神々は別の方法を考えます。
それが、竜域に干渉することで五つの滅びの未来――各色の世界を生み出すこと。
自分達の干渉によって人々が滅び行く姿を楽しみながら、彼らは人類滅亡のシミュレーションを幾度も繰り返した末に遂に本番を始めます。
それこそが、五つの世界と現代世界(竜域)が繋がり、五つの世界が相争う現代世界――本編のZ/Xの世界です。
そして神々は五色の世界と現代世界を繋ぐ門――ブラックポイントによって生じた歪みを利用して再び竜域に降臨し、暗躍を始めたのでした。
……繰り返しになりますが、神々が現代世界で人々やゼクスに干渉し、世界を滅ぼそうとするのは、かつて自分達の世界が異世界からの侵略者に滅ぼされたため、異世界に対して強い敵意を抱いているからです。
ですが、その異世界は現代世界(竜域)とは別の世界であるため、彼らのやっている事は身も蓋もなく言ってしまうと、八つ当たりも同然の行いです。
他のとあるカードゲームのフレーバーテキストで「『神』を名のるヤツにロクなのはいないから。」というセリフがあるのですが、まさしくこの言葉通りでしょう。
さて、竜域に降臨した神々はまずは人類やゼクス達を自分達の信徒に変えることで、手駒を増やしつつ、世界にさらなる混乱を振りまく方針で動きます。
コンセプト的には五つの未来世界を生み出した時と同じく、自分達が直接戦うのではなく、間接的に世界に干渉して滅びをもたらそうとしていると言えるでしょう。
神々は何らかの強い願望や絶望を抱いているゼクスやゼクス使い達のことを《願う者(ヒツ)》と呼び、彼ら彼女達を自分達の眷属にしようと動きます。
上記の場面でマルドゥクがあづみに目を付けたのは彼女もまた《願う者》……深い絶望を抱き、神の眷属になり得る者だからです。
飛鳥の物語で彼に神の一柱、ルルが接触したのも、飛鳥もまた《願う者》だからです。
彼の願いというと、やはり家族絡みでしょうか。
そして、神に願いを訴え、《叶えし者》となった者は、大なり小なりその心を神によって蝕まれ、その浸食度は5段階のレベルで表現されています。
ずばり、カードにおけるディンギルレベルがそれです。
この数字が大きくなるほど、思想がどんどん神に染め上げられてしまいます。
例えば、あづみと同じプレイヤー達の場合、あくまで神の力を利用しているというスタンスの出雲と願いの内容が比較的単純なきさらはレベル1。
八千代の事で深く悩んでいたさくらでも、当初はレベル2程度でした。
もっとも、さくらはどんどんレベルが上がってしまうのですが……。
それに対して、自身の状況への深い絶望感と青の世界に対する強い憎悪を抱いていたあづみは最初からレベル3。
願いが青の世界の破滅という大規模なものであることも、原因だったのでしょう。
その影響で、マルドゥクと契約した直後から、あづみの人格の崩壊が始まってしまいます。
虚ろな表情で歩みだす彼女を見つめるマルドゥクは邪悪な笑みを浮かべていました。
……あづみファン、いえ、例えあづみに特別な思い入れが無いプレイヤーでも、このマルドゥクのセリフを見て、怒りを覚えたのではないでしょうか。
彼らディンギルが言うように、確かに人類は愚かかもしれませんが、それならば、その運命を弄んで悦に浸る神々は悪趣味です。
また、《叶えし者》となった者には、神からその願いを反映させた力が与えられるのですが、あづみのその力の名は《共振崩壊》。
彼女が嘆きの叫びを上げるたびに、周囲の機械を破壊する力です。
そう、機械を破壊する力。
あづみの青の世界に対する憎悪そのものと言ってもいい力です。
ところで、さっき言ったように、あづみが深度Ⅲ、つまりディンギルレベル3相当なのに、パートナーであるリゲルのカードは先ほどの画像のようにレベル1です。
これはリゲルが神に願ったわけではないから……というだけではなかったりします。
ディンギルレベル持ちのパートナーゼクス達のカードで表記されるレベルは、パートナーであるプレイヤーの深度との平均値となります。
リゲルは後の展開を踏まえて、-1として計算されています。
3と-1なら、確かに平均値は1ですね。
青の世界の戦闘機械となってしまったリゲル。
そして、神の信徒と化して破滅に向かうあづみ。
ですが、彼女達が無事に救われたのは、皆さんご存知の通りだと思います。
どのようにしてその結末に至ったか、それをこれからお話ししていきます。
3.かけがえのない友達だから
《叶えし者》と化したあづみは、リゲルを奪い、自分の心を踏みにじった青の世界への憎しみのままに行動を始めます。
まず彼女は自分と同じように《叶えし者》となったゼクス達と合流すると、青の世界に反旗を翻します。
あづみが中心となった《叶えし者》達の混成軍。
種族も能力もバラバラで統率も取れていない彼らでしたが、その代わりに神から授かった強大な力を持っていました。
その力は、鎮圧に向かったオリジナルⅩⅢ率いる青の世界の正規軍である治安維持部隊すら苦戦させるものでした。
空戦部隊《ジズ》を率いるType.ⅡとType.Ⅳは想像を超える《叶えし者》の軍勢に押され気味となってしまいます。
同様に陸戦部隊《バハムート》も劣勢に陥り、海戦部隊《リヴァイアサン》に至っては《叶えし者》のみならず、別勢力まで相手にしなければなりませんでした。
その別勢力とはマーメイド軍。
一度はシャスターに対する反攻作戦に失敗した彼女達が再起したのです。
マーメイドに力を与えるディンギルは、人間やゼクスに友好的な異端の神、ナム。
もしかすると、その影響でマーメイド軍はディンギルによる影響が少なかったのかもしれません。
そして、《叶えし者》の混成軍の中で圧倒的な力を発揮したのがあづみでした。
先述の通り、彼女の《叶えし者》ととしての力、機械を破壊する嘆きの叫び《共振崩壊》は青の世界の天敵といってもいい能力。
その力で青の世界の軍勢に多大な被害を与えました。
しかし、強大な力の反動であづみはさらに神の力に心身を蝕まれ、深度Ⅳにまで達してしまいます。
カード的に言えば、ディンギルレベルの最高値といってもいいでしょう。
なぜならば、ディンギルレベル5、深度Ⅴとなった《叶えし者》とが待つ運命は魂の焼失。
この世からの消滅です。
そして、深度Ⅴとなった《叶えし者》の残酷な運命は直後に示されました。
青の世界の正規軍と《叶えし者》軍の戦場に、突如、黒い灰のようなものが降り注いだのです。
その灰に触れた《叶えし者》達は突如、とてつもない力で暴れた後、動きを止めて、黒い彫像へと変わりました。
降り注ぐ灰の正体は、強大な邪竜の骸が変化した死灰。
神気に侵され、その力をため込んだ邪竜達は、死亡するとその体を無数の灰に変え、地上に降り注ぎます。
死灰に触れた《叶えし者》達は、死灰に含まれる強大な神気によって一瞬で深度が上がってしまい、その魂を焼失させてしまうのです。
邪竜達を神域から現代世界へ解き放った張本人、ギルガメッシュの狙いは死灰にありました。
半神半人として神々の中でも最下層に位置付けられた彼は、それ故に自身に流れる人類としての血筋を憎み、人類そのものに対しても特に強い敵意を抱いていたのです。
そこでギルガメッシュは邪竜達を解き放って人類を殺戮させると同時に、ゼクス使い達に邪竜達を殺させることで死灰を降らせ、そこに含まれる神気を取り込むことで、真なる神になろうとしたのです。
果たして、ギルガメッシュの目論見通り、邪竜の一体、リヴァイアサンはあるゼクス使い達によって倒され、死灰が降り注ぎました。
死灰をその身に浴びたギルガメッシュは真なる神へとその身を近づけ――そして、それに巻き込まれた《叶えし者》達は次々と魂を焼失させていきました。
そして、死灰を浴びて焼失する直前の《叶えし者》達が放つ暴走状態の最期の攻撃によって、青の世界の正規軍の被害も甚大なものとなりました。
Type.Ⅳも飛行ユニットを損傷したことから、Type.Ⅱは撤退を決意。
部隊を後退させつつ、あづみの元へ向かわせていたリゲルに連絡を取ります。
既にあづみの元に辿り着いていたリゲルに対し、Type.Ⅱは《叶えし者》となったあづみを止めるべく、リゲルにオペレーションオメガ……自爆によるあづみの殺害を指示。
Type.Ⅱ自身は仲間を率いて戦場を離脱しました。
しかし、記憶を抹消された状態にも関わらず、リゲルはその指示に従いませんでした。
機械的な口調と思考のまま、ですが、何度も彼女はあづみに投降を促します。
激戦の影響で、ボロボロになったあづみの身を心配するかのように。
一方、神気に侵され、青の世界への復讐に囚われたあづみはリゲルの言葉を拒絶し、彼女にすら《共振崩壊》の力を放ちます。
その叫びにより、リゲルの機械部分の各部は破損。
ですが、完全に破壊されることはありませんでした。
なぜならば――あづみが限界に近づいていたから。
力なく仰向けに倒れ、死灰の影響で足から徐々に黒い彫像へと変わり始めていたあづみは投げやりに呟きます。
「わたしのことは放っておいて。もう……疲れちゃった」
その拒絶の言葉に構うこととなく、リゲルはあづみのボロボロの体から死灰を払い、彼女の身を抱えます。
青の世界に対する反逆者であるあづみを守ろうとする自身の行動に、リゲルは疑問を覚えました。
「私はなぜ、命令を無視して、彼女の身を案じているのでしょう。」
「それが、絆と呼ばれるものです。」
自身の独白に答える言葉に驚き、リゲルが振り向いた先にいたのは――
オリジナルⅩⅢ Type.ⅩⅠ。
マーメイド達、反乱軍側に加担する裏切り者のオリジナルⅩⅢ。
そう認識するリゲルに対し、Type.ⅩⅠは問いかけます。
あなたは今どうしたいのか、と。
その問いに対して、リゲルは驚くほどすんなりと答えました。
「……救いたい。あづみを助けたい。」
その返答にType.ⅩⅠは微笑み、リゲルの頭にその手をかざします。
するとリゲルの感情制御回路は解放され、そして――
「そしてこれが、あなたの記憶です。受け取ってください。」
そのType.ⅩⅠの言葉と共に、暖かな光体――リゲルの記憶が送られ、リゲルはその心を取り戻しました。
さて、あづみとリゲル視点だと、唐突にリゲルの記憶を持って現れたType.ⅩⅠ。
彼女がリゲルの記憶を持っていた経緯は、別の場面で語られていました。
時はあづみがマルドゥクの信徒となった頃までさかのぼります。
Type.ⅩⅠの主であるポラリスは、危険を承知で青の世界のメインコンピューター、シャスターの管理する電脳空間からリゲルの記憶を奪取しました。
ポラリスは現実世界に戻って、リゲルの記憶をType.ⅩⅠに託して脱出させると、自身は囮となって青の世界の治安維持部隊に捕縛されたのです。
そして、そのままポラリスは反逆者として処刑――データ人間である彼女はバックアップを含めたデータ全てを抹消されてしまいます。
しかし、さすがのシャスターも神出鬼没の竜の巫女の確保はできず、彼女のバックアップによってポラリスは復活しました。
話をリゲル達に戻しましょう。
自分の記憶を取り戻したリゲルは、心のままにあづみに呼びかけます。
一方、神にその魂を侵されたあづみは、リゲルが元の彼女に戻った事にも気づけず、なおも《共振崩壊》の力でリゲルを攻撃してしまいます。
ですが、機械部分を損壊させられても、もうリゲルが止まることはありませんでした。
彼女はあづみの瞼を閉じさせ、その体を優しく抱きしめました。
あづみの体は、半ばまで黒い彫像と化していましたが、不思議とそれ以上の浸食は起きていませんでした。
様子を見守っていたType.ⅩⅠは、あづみが黒い彫像と化さないのは、リゲルとの絆のおかげだと推測。
そして、Type.ⅩⅠは他にも自分にはやらなければならないことがある、とその場を後にしました。
あづみを惑わした神の撃破を、リゲルに託して。
果たしてType.ⅩⅠが去った直後、邪悪な笑みを浮かべたマルドゥクがリゲル達の前に現れました。
挑発するかのように問いかける傲慢な神に対し、リゲルは《共振崩壊》によるダメージを押し殺して、立ち上がります。
そんなリゲルの決意に応えるかのように、それまで彼女の胸元に浮かんでいた神の刻印を打ち消して、竜の刻印が現れました。
ウェイカーとして覚醒したリゲルは、機械部分の損傷による能力低下にもかかわらず、怒涛の猛攻でマルドゥクを撃破しました。
激闘の後、リゲルはあづみに持ち合わせの薬を飲ませす。
それによって、なんとかあづみは一命を取り留めました。
また、リゲルがマルドゥクを撃破したことによって、あづみは神の呪縛から逃れることができました。
具体的に言うと、《叶えし者》としての深度がゼロになりました。
ですが、無理して戦い続けた反動とリソース症候群によって、あづみは憔悴しきっており、水色だった髪の毛はさらに色素がおち、真っ白になっていました。
ボロボロになったあづみを抱きしめ、リゲルは涙を流しながら二度と彼女の元から離れないと誓います。
そして、リゲルはあづみを抱えたまま黒い彫像だらけと化した戦場から飛び立ち、安全な隠れ家へと向かいました。
4.ふたりの世界を探しにいこう
《叶えし者》として力を振るった反動で憔悴しきったあづみ。
Type.ⅩⅠの手によって記憶が戻ったリゲルは、傷ついたあづみを抱えて安全な隠れ家に辿り着きましたが、あづみは数日もの間、目を覚ましませんでした。
その間、リゲルは気が気でなかったでしょう。
そして、ようやく目を覚ましたあづみに対して、リゲルは心配そうに体調を尋ねます。
その質問に対する返事は予想外のものでした。
なんと、これまであづみの身を蝕んでいた病状が嘘のように消え失せていたのです。
これにはあづみ自身やリゲルも驚きを隠せませんでした。
彼女達の様子を確認しに訪れたポラリスもこの現象の理由はわからず、ただ『奇跡』としか言いようがないと評します。
その結果、あとはあづみの体力の回復を待つのみとなりました。
さて、作中では奇跡と評されたあづみの回復。
ですが、ここまでのあづみの物語を見てきた結果、この奇跡の原因に心当たりがある方もいるのではないでしょうか。
前回もお話ししましたが、あづみのリソース症候群が重篤化する原因はベガにあります。
三年前のブラックポイントが開いた日に、ベガが『私のあの子』の病状を現代世界のあづみで再現しつつ、彼女のデータを取るために、彼女の体にナノマシンを仕込んだのです。
そして、これも繰り返しになりますが、絶望したあづみがマルドゥクから授かった力は《共振崩壊》。
彼女の嘆きの声によって、周囲の機械を破壊する力です。
周囲の機械を。
そう、《共振崩壊》によってあづみの体内のナノマシンも破壊され、機能を停止したのです。
皮肉な話ですが、神の気まぐれが結果的にあづみを救ったの一面もあるのです。
ちなみに、Twitterでゼクスの物語を紹介していた頃は、この事実は公式で明言されていませんでした。
ですが、後にソトゥ子さんが明言してくれたことで、情報が確定しました。
話を戻しましょう。
あづみ達の様子に安堵したポラリスはその場を離れ、Type.ⅩⅠ、そしてマーメイド達のリーダー格、ⅩⅠフラッグスの一人、ルートヴィヒに合流して、今後の行動内容を検討します。
竜の巫女からの緊急連絡があり、覇神ギルガメッシュの降臨を知らされたのです。
ポラリスは戦闘の準備を整えつつ、ギルガメッシュに立ち向かう戦力を集めるべく各地を巡っている竜の巫女からの連絡を待つことにします。
――そこにあづみ達が現れました。
あづみの体調はまだ戻っていないことから、絶対安静のはずにも関わらず。
上記の動画の最後にポラリス達の前に現れたあづみ達を見て、あることに気づいた方もいるのではないでしょうか。
あづみの髪の色がいつもと違うことに。
上でも少し触れていましたが、これは神の力の使い過ぎによる反動によるもの。
髪の色が抜け落ちて、真っ白になってしまったのです。
驚きの声を上げるポラリスに対し、先に口を開いたのはリゲルでした。
彼女は改めて、ポラリス達が自身の記憶と感情を取り戻してくれたこと、そして、これまでの旅路の中でも影ながら様々なサポートをしてくれたことへ、涙ながらに感謝を告げます。
「本当に……ありがとうございました!」
そして、リゲルに続いて、あづみも話し始めました。
青の世界を恨んだこと。
恨みを晴らすために、他の人々やゼクスも巻き込んで、青の世界を傷つけたこと。
その贖罪として、今は平和を求めるみんなのために戦いたいこと。
いつも周りに振り回されて、いつも周りに助けられたこと。
その原因が自身の弱さにあったこと。
そんな自分を変えたいと思ったこと。
そして――しっかりと前を向き、歩んでいきたいと思ったこと。
普段は物静かなあづみですが、この時は自然と言葉が紡がれていきました。
上記の動画の7秒から2分57秒までがあづみ達の話になります。
当初はあづみの体調を考慮し、彼女を止めるつもりだったポラリスですが、あづみの言葉と眼差しに決意を見出した彼女はもうそれ以上、あづみを止めませんでした。
代わりに、ポラリスはあづみに問いかけます。
友と同じ、あの言葉で。
そして、あづみとリゲル、ポラリスとType.ⅩⅠ、ルートヴィヒは竜の巫女に神域に誘われて、ギルガメッシュとの決戦に挑みます。
覇神ギルガメッシュの力は圧倒的、ですが、あづみを含めた各地のプレイヤーとゼクスの猛攻に、徐々にギルガメッシュは押されていきます。
リゲルもウェイカーとしての力を振るい、覇神を切り裂きます。
自身の体を散々に穿たれたギルガメッシュは、断末魔の叫びと共に砕け散りました。
ギルガメッシュを討伐できたことの喜びを分かち合う、ゼクスやプレイヤー達。
あづみもその中の一人として満面の笑みを見せていました。
……リゲルは、早々にその場を離れて、久しぶりにあづみとの二人きりの時間を過ごしたかったようですが。
完全に余談なのですが、ギルガメッシュ討伐後の上記の動画で、あづみは
「わたし、こんなにたくさんの人と一緒にいるの、初めて。」
と発言しているのですが、実は彼女はこの場に駆けつけた他のプレイヤー達全員と初対面だったりします。
新鮮に感じるのも当然かもしれません。
一応、黒崎神門や剣淵相馬とはニアミスしていたっぽいんですけどね。
しばらくの歓談の後、竜の巫女の手によって、あづみ達は現代世界へ帰還。
改めて、あづみは体調を回復させるために、しばらく安静にする事になりました。
あづみの長かった悲劇の日々もここまで。
本当の意味で戻ってきたリゲルと共に、彼女は未来に向かって歩き始めます。
5.次回に続きます
ここまででだいたい第17弾から第19弾くらいまでのあづみ達の物語となります。
神の信徒と化して暴走し、青の世界に多大な被害を与え、自身も危うく命を落としかけたあづみでしたが、ポラリス達の尽力とリゲルとの絆によって救われました。
苦難を乗り越えた彼女達は、確かな絆と決意を胸に新たな戦いに身を投じることになります――。
ここから先の話は、また次回に。
それではまたお会いしましょう!
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