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Z/Xストーリー、アクティベート! 第10回 「天王寺飛鳥編7 そして再び運命は巡る」

皆さん、こんにちは。GRRRです。
前回までに引き続き、飛鳥達の本編での活躍をお話ししていこうと思います。
今回は渾沌竜姫編の話ですね。
X(旧:twitter)ではこの辺りの話まではしていなかったので、今回はほぼすべてが新規の内容になります。ご了承ください。

繰り返しになりますが、各キャラのストーリーの大まかな流れは、公式HPのおもな登場人物の軌跡を見ればわかりますので、そちらもご参照ください。

それでは、始まり!


1.三人目の飛鳥、登場

幻夢郷から現代世界へと出発したフィエリテ達を見送ったウリエル。
まだ十分に体調が治っていなかった彼は、引き続き王城の一室で休養していたのですが、ある日、彼の部屋にうららがやってきました。
なんでも、彼を迎えに来た一団が白の世界からやって来たというのです。

うららに案内されて部屋に入って来たのは白の世界のゼクス達の一団。
ギルド"暁"と名乗ったその一団は、双極天使ミカエルからの依頼を受けて、ウリエルを迎えに来たと説明します。

この頃、白の世界はガムビエルの叛乱やダークウリエルと神々の軍勢の襲撃などの事件が立て続けに起きたことにより、凄まじい被害が発生していました。
この事態に双極天使ガブリエル(元ハナエル)はギルドシステムを設立
種族や肩書を問わず、白の世界に所属するゼクス達で少人数のギルドを結成させ、復興の促進や外敵の排除といった依頼を与えるようになったのです。
もちろん、依頼が達成されれば報酬は支払われます。

そのギルドの中でも特に活躍が目覚ましかったのがギルド"暁"で、そのことを知ったミカエルが、彼女達にウリエルの探索と救出を依頼したのでした。

ここでギルド"暁"のメンバーを紹介します。
明るく気弱なエンジェルの勇者、アンジュ
本来の名前は暁のオーブですが、勇者となった
ことで、アンジュの名前が与えられました。
大人びた妖艶なガーディアンの魔女、レーニア
本来、鎧を構成する精神力を魔法のように操る
術を編み出したギルド"暁"のお姉さんです。
セイクリッドビーストと共闘する人間の巫女、エレーナ
幼い見た目ですが賢く、ギルド"暁"のブレーン担当です。
天使でも守護者でもない人間が参加している辺りに、
種族を問わないギルドシステムの在り方を体現しています。
武骨で屈強なケット・シーの傭兵、アシェラ
ギルド"暁"のタンク担当で、その体は傷だらけです。
ちなみに報酬は敵一体につき高級鰹節一本とのこと。
そして、エンジェリックドラゴンのアドベントサイン
ギルド"暁"の乗騎としてミカエルから紹介された存在で、
ドラゴン形態と竜人形態に変身できるメスのドラゴンです。
ニノのパートナー、イノセントスターの許嫁でもあります。

ミカエルからの依頼を受けたギルド"暁"の面々は、ある人物からウリエルが幻夢郷にいることを教えられ、双極天使の二人の力を借りて、この世界に転移してきたのでした。
では、そのウリエルが幻夢郷にいる事を教えたのは何者なのかと言うと――。

その時、ギルド"暁"の面々の後ろから、一人の青年と少女が現れました。
その青年を見たウリエルは目を丸くします。
なぜなら、その青年は自分と同じ顔をして、どういうわけか兄と同じ気配を纏っていたのですから

ウリエル「兄ちゃんや! 兄ちゃんの気配がする!」

喜びと困惑がない交ぜになった表情を浮かべるウリエルに対して、謎の青年はアトマスカヤと名乗ります。
黒の世界の安全地帯、墓城の開祖であり、訳あって今は白の世界に協力している、と。

アトマスカヤの大まかな来歴については、第三回の時にしていますので、そちらを参考にしてください。
ここからは、本編でのアトマスカヤの動向についてお話ししていこうと思います。

黒の世界にて、安全地帯、墓城を作り上げた彼は、自分が救った少女達、墓城七姫達に盟主の座を譲った後も、長いことその領域を守り続けていました。
そんなある日、墓城に珍しい客人がやってきます。
彼らはなんと現代世界からの来訪者――黒崎春日倉敷世羅剣淵相馬達でした。
以前、お話ししたように、春日の兄、黒崎神門はサタンとの戦いで行方不明となってしまいました。
兄の居場所の手がかりを探す黒崎春日は、墓城に未来が見える魔導書、ネクロノミコンがあると聞いて、それを求めてやってきたのです。

春日はネクロノミコンを所有する墓城七姫 六の姫ネイと交渉し、彼女とパートナー契約を結びました。
春日はネイをパートナーにした後、墓城を出発する前にアトマスカヤの元に挨拶に訪れたそうです。
つまり、春日(とネイ)は飛鳥やウリエルより先にアトマスカヤに会っていました。
前回、春日が飛鳥と会って驚いたと思う、と記載したのはこのためです。

面倒くさがりで引きこもりな墓城七姫の六の姫ネイ。
春日は神門の権限を使えば彼が通う九頭竜学院の
貴重な蔵書が読める、という条件でネイを誘いました。

こうして、春日達と共に出発するネイを見送ったアトマスカヤでしたが、その直後、思わぬトラブルが墓城を襲います。
七大罪の一人怠惰のアセディア黒剣という不気味なトーチャーズの軍勢を引き連れて、墓城に襲撃を仕掛けてきたのです。

こちらがその怠惰のアセディア。
本来、結界が展開されているはずの墓城に
なぜ、彼が攻め入ることができたのかというと……
イタズラ好きな墓城七姫 四の姫サリアがアセディアを
挑発。彼を墓城領域に引き入れたのでした。
……いや、イタズラってレベルじゃねーぞ!!

墓城七姫が中心となった墓城勢力とアセディア率いる黒剣軍団の戦闘が勃発する中、アトマスカヤは状況を静観します。
彼が直接出向けば、早々にアセディアを撃退できたと思われますが、墓城の面々に戦闘の経験を積んでもらおうと思っていたのかもしれません。

戦闘に不慣れな墓城側は苦戦を強いられますが、墓城の危機を察した春日達が戻って来て、墓城側に加勢。
戦闘慣れした世羅や相馬達の活躍によって、墓城側が戦況を巻き返すことに成功。
その後、他の七大罪のイラルクスリアが墓城に駆け付けて戦闘を調停したことで、戦いは収まりました。

憤怒の七大罪のイラ。普段はクールで真面目な
性格ですが、怒ると語気が凄まじく荒くなります。
色欲の七大罪ルクスリア。扇情的な衣装の通り、
大胆で小悪魔的な一面もありますが、黒の世界の
住人の中では良心的な人物でもあります。

このように、墓城の戦いはさほどの被害を出さずに終結しました。
ですが、神々との戦いが終わった後、アセディアは懲りずに度重なる戦いで疲弊した白の世界と青の世界に黒剣達をけしかけた上に、その途中で黒剣のコントロールを何者かに奪われるという失態を犯します。

黒剣のコントロールを奪ったのは鉄血の鎧、
アヴァンツ。彼女自身も黒剣のようなのですが、
その正体・目的は謎に包まれています。

状況を重く見たアトマスカヤは事態の収拾のために自ら動くことを決意。
墓城七姫達にも召集をかけ、特に黒剣に苦戦している白の世界に向かいます。
ですが、墓城七姫のうち、彼の招集に応じてくれたのは素直な性格の五の姫ハーシェルだけ
これにはアトマスカヤはがっくりと肩を落としました。

アトマスカヤ「招集に応じてくれたん、五の姫ちゃんだけ。
んなことある? 僕、仮にも君らの恩人やで?
なんでこないなってもうたんや……。」

……墓城に残っていた墓城七姫のうち、真面目な性格の七の姫ブルーティアまでついてきてくれなかったのは、恐らく問題児ばかりの残りの墓城七姫達に城を任せるのが不安だったからだと思われます。
実際、アトマスカヤ達が白の世界に向かってしばらくしてから、墓城にとある客人がやってきた際には、ブルーティアが代表代理として対応していました。
逆に言えば、その問題児組は素でアトマスカヤの招集を無視したということですが。
アトマスカヤが落ち込むのもむべなるかな。

さらに白の世界に着いた後もアトマスカヤの苦労は続き、黒剣の仲間と誤解されて白の世界のゼクス達に攻撃されたりウリエルの部下の天使に殴り掛かられたりと散々な目にあいました。
まさに、なんでこないなってもうたんや。

「ふむふむなるほど……ノスフェラトゥ。
悪の親玉は死ねえ!!
アスモデル「十二使徒大結界を抜けたのか?
姿もウリエル様そっくりだし。人間のあたしなら
こんな時どうしただろう。……とりあえず殴るか!

そのように四苦八苦しながらも、白の世界の上層部に接触できたアトマスカヤは彼女達に事情を説明。
同時に現在、行方不明になっているウリエルが幻夢郷にいる事を伝えます。
それを聞いたアンジュから自分達に協力してほしいと頼まれたアトマスカヤは、その案を受け入れて自分達も幻夢郷に向かうことにしたのでした。

「裏付けが取れました。標となる糸を手繰り、
双極天使様が転移術を行使されます。贖罪と
仰るなら、アトマスカヤ殿もご同行願えますか?」

そして、アンジュの言葉通り、ミカエルとガブリエルによる転移術が発動し――そして、冒頭の場面に続きます。
ク・リトの王城でウリエルの無事を確認できたアトマスカヤは、ギルド"暁"の面々や一部のク・リト達、そして投降したソル側の一部のゼクス達と共に荒廃した幻夢郷の復興の手伝いをしつつ、ウリエルの看護をします。
ですが、その中で彼はある異常に気付きます。
ある時から自分以外の誰もが――自分に同行していたハーシェルすらも――墓城の存在を忘れ去っていたのです

アトマスカヤ「墓城を知らんて……?
ハーシェルちゃんなに言うてん! 僕が
おかしゅうなったんか? ウリエルはん助けてえな!」

アトマスカヤは知る由もありませんでしたが、この現象は上記の画像に映る少女――竜の姫君の仕業でした。
彼女によって墓城はとある空間へと飛ばされてしまい、同時に人々の記憶からも消え去ってしまったのです。
突然の状況に困惑しながらも、アトマスカヤはしばし幻夢郷に滞在してウリエルの回復を待ちます。

やがて、熱心な看護を受け、十分な休息を取ったウリエルはようやく復活
幻夢郷の面々に感謝の言葉を述べ、ギルド"暁"の面々と共に白の世界へと帰還しました。

ウリエル「幻夢郷の皆さんには大変お世話になりました。
お礼はいつか必ず。それでは帰りましょうか。
私たちの、白の世界へ……!」

白の世界へと帰還したもう一人の自分を見送ったアトマスカヤはようやく一仕事が終わったと息をつきます。
そして、墓城を元に戻すべく、彼もハーシェルと共に黒の世界に戻ろうとして――愕然とします。
なんと、黒の世界そのものが消滅していたのです

アトマスカヤ「僕らも帰ろか! 墓城の存在を
きっちり証明せな―― ……ない。嘘やろ。
なんも感じん。僕らの、黒の世界を……!」

これは、先ほどの墓城が消滅したものと同じ現象によるもの。
しかし、墓城の一件が竜の姫君の誤解と善意の暴走によって引き起こされたのに対し、こちらはある存在の明確な悪意によって引き起こされた事態でした。
その人物の正体とは―――。


2.廃墟の街を征く

ウリエル達の帰還から少し時を遡ります。
前回記載した通り、ウリエル達より一足早く現代世界に帰還しようとした飛鳥達ですが、どういうわけか飛鳥達がたどり着いたのは白の世界
しかも、多くのゼクス使い達と共にゲートを潜ったのに、その場にいたのは飛鳥達と綾瀬達、出雲達だけでした。

予想外の事態に困惑する飛鳥達ですが、さらなる異常が彼らを襲います。
突如、何の気配もないところからカマイタチのような斬撃が発生したのです。
目に見えない斬撃は肉体こそ傷つけなかったものの、飛鳥達の衣服を切り裂き、同時に肉体的にも精神的にも疲弊させます。
しかも、防御に長けたフィエリテの結界すらも見えない斬撃を防げず、やむなく飛鳥達は見えない脅威に耐える他ありませんでした。

不可視の斬撃を受けた直後の飛鳥。
かなりぼろぼろになりながらも
飛鳥はどうにか自分を保てましたが……。

しばらくすると、不可視の斬撃も止み、飛鳥達はその場を離れます。
ですが、飛鳥は疲弊しながらも、落ち着いていましたが、他の面々は謎の斬撃の影響で躁鬱じみた状態になっており、ひどい有様になっていました。

くっ… 殺したらどうなの! 手加減なんかせずに!
くっ… 殺したらどうですか! 手加減などせずに!

仲間達の混乱ぶりに危機感を抱いた飛鳥は、精神力を集中させるとウリエルの剣を天に掲げ、光を空に放ちました
それは、以前、白の世界を訪れた時に教わった天使達が使う救難信号
間もなく、巡回していた天使の一団が飛鳥が放った光に気づいて、彼らの元にやって来てくれました。
その一団の中から一人の少女天使が前に出てきて、モテッツと名乗ります。

モテッツはガムビエルの叛乱で活躍した飛鳥達の事を
知っており、ウリエルそっくりの人間が現代世界にいると
白の世界のゼクス達に吹聴したこともありました。
以前、天王寺家に多数の女性ゼクスが押し掛けた原因です。

飛鳥達はモテッツに事情を説明し、どこか休めるところに案内してほしいと頼むと、彼女はそれを快諾。
仲間の天使達に報告を任せると、モテッツは飛鳥達を近くにあった喫茶店、【 Cait Sith Cafe ~癒やしの猫喫茶~ 】へと案内してくれました。
ニーナが設立し、にゃんこに擬態したケット・シーがお客さんをもてなすというその喫茶店に早速、飛鳥達は入店し――絶句します。
なぜなら、彼らを出迎えた店の制服を着た天使の顔に見覚えがありすぎたから。
その天使の名は――ガムビエル

「な、なんかいっぱい来た……。いらっしゃいませ、
ケット・シーカフェへようこそ! ……って綾瀬さんです!?」

自分達に倒されたはずの彼女がなぜここに―――!?
目を丸くする飛鳥達にモテッツが説明します。
彼女はガムビエルの叛乱の後、ミカエルの慈悲によって転生した天使、ガムビエルちゃんであり、前世の自身の行いや綾瀬や飛鳥のこともミカエルから教わっており、かつての自分の悪行の贖罪のためにここで働いている――と。

説明を終えると、モテッツはガーンデーヴァの手を引いて奥のテーブルに行ってしまい、後には飛鳥達とガムビエルちゃんが残されてしまいます。
憎悪を滾らせ冷たくガムビエルちゃんを睨みつける綾瀬と、自身のかつての悪行を知っているが故に顔を伏せるガムビエルちゃん。
彼女達の間に立った飛鳥は、どうにか二人の間を取り持とうとしますが、それも徒労に終わりました。
やがて最悪の雰囲気に耐えられなかったガムビエルちゃんは、失意の表情で立ち去り、バックルームに隠れてしまいます。

かつての因縁の敵の変わり果てた姿に嘆息する飛鳥。
ちらりと隣の綾瀬の様子を窺うと、彼女は心ここにあらずといった様子で呆然としていました。
転生した仇敵と思わぬ邂逅を果たしてショックが大きすぎたのか、と飛鳥が彼女を心配していると、フィエリテは先ほどの謎の斬撃の影響が抜けていないのでは、と言い出します。
しかし、綾瀬以外の一行は既に斬撃の影響から回復しており、出雲も平静を取り戻していました。
その出雲が真剣な表情で飛鳥に尋ねます。

「先程の、ガムビエルさんとの関係をお伺いしても?」

出雲の言葉に頷いた飛鳥は、ガムビエルと自分達の因縁をかいつまんで説明します。
綾瀬の両親の仇であること。
それ以外にも、様々な悪行を行ったこと。
その果てに自分達に討伐されたが、知らないうちに転生して復活したこと――。

飛鳥とガムビエルの因縁については詳しくは
第5回と第7回をご覧ください。

その最後に、自分も部外者と言えば部外者なのかもしれないけれど、と飛鳥が呟くと、なぜかそこで出雲が首を捻りました。
そのまま、彼が何かを言いかけると――。

私とコイツが、なんだって言うのかしら?

いつから聞いていたのか、綾瀬が冷たい笑みを浮かべて出雲の言葉を遮りました。
彼女の怒気に思わず身をすくめた飛鳥ですが、すぐに綾瀬は剣呑な気配を解き、意外と落ち着いた様子で、これ以上、誰かを――ニーナも、あのガムビエルちゃんも――恨むつもりはないと口にします。
その言葉を聞いて、飛鳥は表情を綻ばせますが―――即座にその表情が再び凍り付きました。
未だかつてないほどの異常な気配――出雲曰く、『おぞましい殺気』――を感じ取ったのです。

モテッツからデートについての知識を教わっていた
ガーンデーヴァですが、この異様な気配を察した後は、
すぐに戦闘モードに気持ちを切り替えていました。

離れていたガーンデーヴァも含め、みんなが立ち上がる中、綾瀬だけがまたしても呆然としていました
綾瀬の異常はガムビエルちゃんと会ったことが原因ではない――ズィーガーがそう分析するのと同時に、フィエリテもまた綾瀬が何者かの精神干渉を受けており、同じ綾瀬である自分もその影響を受けている、と顔をしかめます。
飛鳥はフィエリテの体調を気遣いますが、フィエリテは軽く頭を振って表情を改めると、自分もついて行くと宣言し、ふらふらと歩きだした綾瀬の先を指し示しました。

「……気分は優れませんが、私も行きます。
赤の他人ではないのですから。追いますよ」

その先にあったのはガムビエルちゃんが引っ込んだバックルーム
飛鳥達は綾瀬と共にバックルームに突入し―――。


3.彼方の世界から来たりし悪意

真っ先に飛鳥達の目に飛び込んできたのは、血まみれで倒れ伏したガムビエルちゃんの姿でした。
すぐさま駆け寄った飛鳥が彼女の安否を確かめると、重症ではあるものの息はありました。
彼女の周囲には同じく傷だらけのケット・シー達が倒れており、彼らは必死にガムビエルちゃんに逃げるように訴えていました。

傷ついたガムビエルちゃん達の姿を見て険しい表情を浮かべるフィエリテ。
彼女が隠れている何者かに姿を見せるように叫ぶと、その言葉に応えるかのように何もない空間から一人の少女が現れました。
綾瀬と同じ顔を持つ少女が

其は純粋な悪意の化身―――

綾瀬そっくりの少女の出現に飛鳥達が息をのむ中、綾瀬は苦し気な表情でその少女を睨みつけながら、何者なのかと問いかけます。
すると、その問いかけを聞いた少女の顔から笑みが消え、激しい口調で自らの正体を明かしました。
自分は神々が起こしたシミュレーションの中で幾度も両親を殺されて絶望し、他者の幸せな家族関係に嫉妬した上柚木綾瀬の想いが虚数領域、星界にて集積した結果生まれた存在―――プリンセス・マギカ レヴィーなのだと。

特に黒の世界はシミュレーションの回数が多かったため、
レヴィーの性格は黒の世界の綾瀬の絶望の影響が
大きく出ています。レヴィーという名前も魔人化した
綾瀬の名前、レヴィアタンからとったものです。

レヴィーの言葉を綾瀬は動揺しながらも必死に否定しようとしますが、そんな彼女にレヴィーが近づき、さらなる精神干渉を行います。
飛鳥は頭を抱えて苦しむ綾瀬に必死に声をかけ、他の仲間達はレヴィーを止めるために一斉攻撃を試みますが、再びあの見えない斬撃が彼らを襲いました
一方、レヴィーの精神干渉を受けた綾瀬は、朦朧とした様子で恐ろしい言葉を口にします。

いっそ全部消してしまえば復讐になるかしら?

世界を全てを呪う言葉を口にする綾瀬を見たレヴィーは喜色を浮かべますが、一方の飛鳥は激昂と共に立ち上がります。

「復讐をやめて。歩き出して。やっと笑顔を
見せるようになった。……やのに。
あんたなんなん? なにしてくれてんのや!!

飛鳥の怒りやズィーガーの咆哮にひるむことなく、レヴィーは綾瀬と共に世界の全てを虚数領域へと吹き飛ばし、全てを無かったことにすると危険極まりない自身の目的を語ります。
その言葉を聞いた出雲はここで彼女を討伐すべきと進言し、カードデバイスを掲げました。
飛鳥もまたカードデバイスを掲げてフィエリテにリソースを注ごうとして――

それ、邪魔ね?

そうレヴィーが呟くと、二人のカードデバイスが粉々に砕け散りました
愕然とする飛鳥達に対し、レヴィーは語ります。
自分が〝不要〟と思えば、それは存在意義を失い、最初から〝無かったこと〟になる、と。
彼女の言葉通り、この瞬間、全ての世界のカードデバイスが消滅したのです

この時、カードデバイスの中にゼクスが入っていた場合、
流石にデバイスごと消滅したりはせず、強制的に
デバイスからアクティベートされていました。
緑の世界でフレデリカがそんな目にあっています。

レヴィーの無茶苦茶さに怒りと驚き、混乱をない交ぜにして叫ぶ飛鳥に対し、レヴィーはそんな自分の力も飛鳥のような強い意志を持つ存在には効き目が薄いと述べます。
だからこそ、手っ取り早く世界そのものを無かったことにする――そう語るレヴィーの危険すぎる力と目的に、ズィーガーとフィエリテは苦い表情を浮かべました。
話は前後しますが、上述したアトマスカヤが感じ取った黒の世界の消滅もレヴィーの仕業であり、彼女は手始めに因縁深い黒の世界を消滅させたのです

プレイヤーEXでご都合主義的に人体には傷つかず、
衣服だけ破けているのも同じ理屈です。
意思ある生命体は存在表明によって、見えない斬撃に
耐えられますが、意思なき衣服は容易く消滅するのです。

出雲とガーンデーヴァもレヴィーの力に戦慄しますが、だからこそ彼女をこのままにしてはおけないと士気をあげます。
デバイスなしの苦しい状況でも、レヴィーを倒して綾瀬を助ける――。
そう覚悟を決めて飛鳥達が再びレヴィーに攻撃を仕掛けようとした時、新たな二つの人影が戦場に乱入しました。
その影はなんとうららアスツァール
うららはゆたかの姿がないことに少しがっかりした様子でしたが、すぐに状況の異常さを察知して飛鳥達の隣に並び立ってくれました。

頼もしい仲間が駆け付けてくれたことで余裕を取り戻した一行。
しかし、ここで出雲が飛鳥の恋人を助けると宣言した結果、飛鳥が大慌てで綾瀬は恋人ではないと否定する一幕もありました。

「ヤトゥーラさんとアスツァールさんが
加勢してくれるなら百人力です。
力を合わせて飛鳥君の恋人を取り戻しますよ!
……違うんですか? 仲が良いのでてっきり……。」

おまけに、うららと一緒に援軍として駆け付けたと思われたアスツァールがなぜかレヴィーの側に立っているというシュールな状況も発生。
結局、うららに脅されてしぶしぶうららの隣に戻ってきましたが……。

そんな微妙にぐだぐだな展開は挟んだものの、状況は予断を許しませんでした。
愛弓に矢をつがえたガーンデーヴァはずっとレヴィーを狙う隙をうかがっていましたが、彼女は綾瀬のすぐ側に立っており、下手をすれば綾瀬を盾にされる可能性があったのです。
この状況にズィーガーは綾瀬を傷つけてでもいいから一斉攻撃を行うと荒々しい作戦を提案。
他に手もなかったことから、飛鳥達も覚悟を決めて攻撃態勢に入ったのですが――。

「……い、いけません……」

重傷を負ったガムビエルちゃんが床を這いずりながらも綾瀬に近づき、必死に彼女を説得したのです

どうか、みんなの幸せを、祈らせて。
叶うならば、あなたの幸せも。
……上柚木、綾瀬さんッ!!

必死にガムビエルちゃんが綾瀬に手を伸ばす中、綾瀬もまたうつろな表情のまま彼女に手を伸ばします。
飛鳥も彼女を正気に戻そうと必死に声を張り上げ、これまでの自分達の思い出を訴えます。

天使殺しとして活動していた頃の綾瀬から
フィエリテを助けるために戦った
初めて出会った時のこと。
八千代や多くのゼクス使い達と共に
覇神ギルガメッシュを倒した時のこと。
魔王と化した兄を救うために共闘してくれた時のこと。
復活した兄との漫才を披露した結果、
綾瀬から冷ややかな目で睨まれた時のこと。
そして、ラッキースケベをかましつつも、
天王寺兄弟と上柚木姉妹で穏やかな日々を
過ごした時のこと――

ガムビエルちゃんと共に飛鳥が叫び続けていると――一瞬、綾瀬の瞳に光が戻りました
そして、彼女の口から漏れ出た言葉は――

助けて…

―――それが、飛鳥が見た綾瀬の最後の姿でした。
その直後、レヴィーが濃密な闇――嫉妬の闇を展開して自身と綾瀬を包み込むと、その場から消え去ったのです
飛鳥とガムビエルちゃんが伸ばした手は綾瀬には届くも、闇に拒まれ―――綾瀬達が何処かへと消え去った後、飛鳥は無念の叫びをあげることしかできませんでした

その後の飛鳥達についての明確な描写はありませんが、恐らくはガムビエルちゃんや猫喫茶のケット・シー達の救助に協力しつつ、残った面々とこれからどうすべきかを相談していたと思われます。
ですが、青の世界で起こったレヴィーと神門を中心としたゼクス使い達の決戦の結果、時空の歪みが臨界点を迎え、世界の新生が発動
上述したウリエル達はちょうどこの頃に白の世界に帰還したのですが、事ここに至っては彼にもなすすべはありませんでした。

ウリエル「数多の試練を乗り越え、
最良の道筋を歩んでいた世界線の初期化。
巻き込まれる側に立ち、思い知る。時戻しの咎を……!」

ウリエル達やアトマスカヤ達、そして飛鳥達も時空跳躍に巻き込まれ、そして―――。


4.そして新たな世界へ

そして、新たに生まれ変わった世界―――ブラックポイントとゼクスが出現するも、赤・青・白・緑は幾度かの戦闘の後に互いに和解し、協調する一方、黒の世界が全ての世界を壊そうと荒れ狂う世界――にて、飛鳥の周囲の環境は以前よりも恵まれたものになったようです

まず、白の世界はかつてのような階級制度が非常に緩やかなものになっており、高貴な天使達が統率する穏やかな理想郷に生まれ変わっていました
ただ一度の例外を除き、白の世界のゼクス達が現代世界の住人に危害を加えることはなく、むしろ彼らは積極的に現代人達をゼクス達の戦いから守るために動きました
このため、現代世界の住人達からの白の世界のゼクス達への信頼度は非常に高いものとなっています。(また、この影響で天使の降臨を預言していたペンドラゴン協会の信奉者も大きく増えたそうです)

「住みやすさなら、五つの世界で白の世界が
一番かなー? 上下関係は有って無いような
もんだしー? みんな大人って感じー?」

そのため、白の世界の庇護下にある近畿と四国は他の地域と比べて平和で、飛鳥も各地の戦いは遠い出来事のように感じていました。(これは旧世界でも同様ですね)
起きた事件と言えばせいぜい、母親が過労で倒れた(ただし、旧世界より病状は軽度)ことと、大和が傭兵として働くために一時的に海外渡航していたこと、フィエリテがやって来たこと、そして、日本の状況を知って慌てて帰って来た大和が連れて来た少女魔人、アニムスとフィエリテがテレビの取り合いをした結果、飛鳥達が住んでいたマンションの一室を吹っ飛ばしてしまったことくらいでしょうか。

また、彼らが暮らすマンションの隣にペンドラゴン使徒教会の大阪支部が建てられました。
そこへ宣教師として派遣された少女、ニーナ・シトリーが様々な事情から話題を呼び、マスコミが大勢押し掛けて大騒ぎになったのですが、飛鳥自身は自分とは関係ないこととお隣の騒ぎを遠巻きに見ていました。

新たな世界に変わった結果、かつて共に戦った
仲間であったニーナのことも忘れしまった飛鳥達。
ですが……。

しばらくすると、諸々の事情からニーナは宣教師を辞任し、青の世界の治安維持部隊に入隊。
彼女と入れ替わる形で、天竜ゆたかフレデリカが代理の宣教師として大阪に引っ越してきました。
彼女達は宣教師としての活動を行う傍ら、飛鳥の在籍している高校に転入
飛鳥の後輩となりました。

「お隣のマンションに先輩が住んでるじゃないですか。
彼のお兄さんがオモチャの銃を向けて言うんです。
〝飛鳥に近付くなら容赦はしない〟って。愉快な人ですよね!」

ここでゆたかが言っている先輩が飛鳥のこと。
同年代でスタイル抜群の美少女後輩の登場に彼女達と甘い関係を築けたら……と一時は考えていた飛鳥ですが、二人が女性同士ながら親密な関係だったため、早々にお付き合いすることは諦めました。
……そんな彼の心を読んだアニムスがフィエリテにばらした結果、オシオキされる羽目になりましたが。

また、傭兵業から足を洗った大和は一時は専業主夫になっていたものの、先述のフィエリテとアニムスの喧嘩による被害の賠償などで貯金に余裕がなくなったことから、建設業に就職
幸いにも人間関係に恵まれ、順調に仕事を続けています。
さらに、過労で倒れた飛鳥達の母親も体調がよくなってきており、間もなく退院できる見込みとなっていました。

「学校通って馬鹿やって。兄ちゃんが専業主夫しとって。
病院の母ちゃんも快方へ向こうとる。……僕、最高に幸せやわ。」

まさに幸福の絶頂ともいえる状況―――。
ですが、ある時、飛鳥とフィエリテは思い出します。
過去の世界の出来事を
そして、その最後の場面―――こちらに必死に手を伸ばす、儚い少女の姿を

前の世界から新世界に変わるに至って、それぞれのゼクス使いやゼクス達の絆や想いはある程度持ち越している一方で、前の世界の記憶を思い出せる者は数少ないのですが、その数少ない例外が飛鳥とフィエリテでした
他の過去世界の記憶を思い出した者の中には二つの記憶と世界が生まれ変わったことに混乱する者もいましたが、飛鳥は混乱せずにすんなりと過去世界の記憶を受け入れたようです。
もしかすると、時間操作能力を持ち、時には時間遡行すら行ったウリエルの影響なのかもしれません。

一方、フィエリテは今の世界と前の世界の
フィエリテとラファエルの記憶――実質、四人分
記憶を思い出して、流石に混乱したようです。

ですが同時に、綾瀬を救うと誓ったはずなのに、今までのんきに暮らしていたことへの後悔と焦慮が飛鳥の心の中に浮かんできました。
そして、ある夜―――飛鳥は彼らの心を読んだアニムスに見送られる形でフィエリテと共に自宅であるマンションから出立
この世界の綾瀬の捜索を始めました。

「……バレたか。アニムスちゃんは心が読めるんやっけ。
もうひとりの僕の記憶に、助けを呼んでる子がいてな。
だから行って来るわ。兄ちゃんには内緒にしといてや!」
「私はフィエリテ。ラファエルでもあり、
上柚木綾瀬でもあり、レヴィーでもあります。
因縁に決着を付けますよ、飛鳥。」

綾瀬の行方ははっきりとはわかりませんが、彼らの耳に不穏な噂が届いていました。
白の世界のガーディアンを狙う、黒い豹型のゼクスを従えた女性ゼクス使い――守護者殺しの噂を。

上でも少し触れた白の世界のゼクスが一度だけ
現代世界の住人達に危害を加えた事件、発掘村事件
ケィツゥー曰く、突如、一部のガーディアン達が正気を
失って暴れて、多くの人に被害が出たそうですが……。

守護者殺しの正体が恐らくは前の世界と同様にゼクス達の戦いに巻き込まれて両親を喪った綾瀬達だと考えた飛鳥達は、守護者殺しの行方を追います。
おそらく、間もなく訪れるであろう彼らの再会はどのような結果になるでしょうか。

一方、白の世界の飛鳥であるウリエルと黒の世界の飛鳥であるアトマスカヤも過去の世界のことを覚えています
ウリエルは引き続き白の世界のトップとして活動しており、飛鳥のパートナーゼクスとして派遣したラファエル=フィエリテの抜けた穴を埋めるために、新たな四大天聖(新世界での四大天使)の候補を探しているそうです。
一方のアトマスカヤは黒の世界の神祖の魔人達――枢要大罪から人々を守るレジスタンス組織、バシリカ・トゥームのリーダーとなって千葉を拠点として戦っています。
今後の彼らの動きにも注目です。


5.次回に続きます

ここまででだいたい第40弾から第45弾までの飛鳥達の物語――現段階で語れる限りの飛鳥達の物語を紹介したことになります

竜の巫女の導きや運命の出会いと再会からゼクス使いとなり、人類を憎む神々や憤怒に染まった魔人と化した兄、闇の堕天使と化したもう一人の自分と、様々な戦いを乗り越えてきた飛鳥ですが、最後の最後で綾瀬を救うことは叶いませんでした。
新たな世界で、今度こそ綾瀬を救うために立ち上がった飛鳥達。
彼らの行く末に幸あることを祈ります。

さて、飛鳥の話はひとまず終わりなので、次回からは別のゼクス使いの話をしていきたいと思います。
次に話すのは最も飛鳥と関係性の深いゼクス使いのうちの一人、そして、現在最もその安否が心配される少女―――上柚木綾瀬の話をしていこうと思います。

それではまた次回!

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