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Z/Xストーリー、アクティベート! 第23回 「各務原あづみ編3 窮地の二つ星」

皆さん、こんにちは。GRRRです。
今回もあづみ達の本編での活躍をお話ししていこうと思います。
繰り返しになりますが、各キャラのストーリーの大まかな流れは、公式HPのおもな登場人物の軌跡を見ればわかりますので、そちらもご参照ください。

それでは、始まり!


1.絶望の帰還

東北から九州まで、千歳・龍膽と共に長い旅を続けていたあづみ達。
全ては彼女の病気を治療することができるという神木、モウギを手に入れるため――だったのですが、最後の最後でその話は嘘だったことが判明します。
徳叉迦に騙されていたことを知った直後に、あづみは再発した重度のリソース症候群で倒れてしまいました。
彼女を抱えて飛び立ったリゲルは、唯一今のあづみを治療できる場所を目指しました。

その場所とは、青の世界の拠点
あづみを救うために、リゲル自ら裏切った場所でした。

かつて自身も所属していた青の世界の空戦部隊、ジズに投降したリゲル。
当然、裏切り者であるリゲルに対する青の世界側の態度は冷たいものでした。
彼女は武装を解除されたうえで、両手を拘束されてベガの前に引き出されます。

そのジズの隊長こそがリゲルの直接の
オリジナルと言える、Type.Ⅱです。

あづみが生命維持装置の中に入れられる中、リゲルはベガに懇願します。

「お願いします。私はどうなっても構いません。あづみを助けてください」

ボロボロの姿で自身に頭を下げるリゲルを、ベガは冷たく睥睨しながら離反した彼女をなじります。
しかし、なおも必死の懇願を続けるリゲルに対し、ベガは青の世界への絶対服従と引き換えに、あづみを治療することを約束しました。
ハッと顔を上げるリゲル。
ですが、直後のベガの言葉――裏切った自分自身に対する処分を告げられて、言葉を失います。

ただし、貴女の記憶(メモリ)は消去します

それは文字通り、今までのリゲルが――彼女の思い出が、心が、愛が失われる――考えようによっては、死に等しい処分でした
文字通り、絶望的なその処分を、リゲルは受け入れます。

――すべてはあづみを救うために

記憶を抹消すべく、治安部隊に連れられて退出する中、リゲルは一人呟くように最愛のパートナーへの別れを告げました。

「さようなら、あづみ」

そして、彼女が退出した後、ベガは生命維持装置の中のあづみを恨めしそうに見つめながら、呻くように呟きました。

なぜ! 私のあの子は死んだのに、どうして、この娘は生きているの……!

私のあの子

ベガが呟いたその言葉は、深い意味を持っています。
この言葉だけ聞くと、まるでベガが自身の娘とあづみを同一視しているよう――ベガがあづみの母親のように聞こえますが、実際は異なります

ベガの過去については以前、発売された公式同人誌に載っていました。
この同人誌が販売されたのは2016年のゼクストリーム。
この記事執筆時点で8年(!!)も前なので、これに記載されていた内容をご存じなかった方もいるかと思いますが、つい最近になって公式ホームページにも掲載されました。
改めてこちらでも紹介しましょう。

参考資料
蒼の追憶

こちらがその同人誌の表紙。
ベガの過去話だけでなく、ニーナと
メインクーンが出会った経緯も明かされて
いるので、そちらもまた紹介します。

2.蒼の追憶

本編より少し未来――青の世界に続く未来世界にて。
人間だった頃、ベガは母親と二人で暮らしていました。
父親は彼女が物心がつく前に家を出ており、そして母親もまた自身の『研究』に没頭するあまり、ベガを顧みることはなく、直接彼女に会った時も冷たい態度を取っていました。

ベガの幼い頃の記憶では、母親は優しく自身に接してくれていたはずでした。
母親が今の自分に辛辣な態度を取る理由は自分が未熟だからだと考えたベガは、猛勉強の末に母親の母校の難関校、九頭竜学院大学に入学します。
しかし、それでも母親のベガに対する態度は変わりませんでした。
変わらぬ母の態度に落胆しながらも、ベガは大学に通うために一人暮らしを始めます。

九頭竜学院大学の名前をどこか別のところで見たような
気がする、という人もいるかもしれません。実はリルフィ
登場したCOBの舞台となった学校の名前も九頭竜学園
ちょっと名前が違いますし、設定も異なってますね。

結果的に母親の冷たい眼差しから解放されることとなった彼女は、充実した大学生活を堪能します。
勉強に熱心に取り組み、様々な人たちと出会い、生まれて初めての恋も経験しました。
いつか自分が誰かと結ばれたら優しい母親になって、幸せな家庭を築きたい――。
そんな夢も思い描きました。

……ですが、そんなつかの間の幸せな日は、ある時、終わりを告げてしまいます。

ある日、ベガの元に母親が倒れ、危篤状態にあるという連絡が入ったのです
病室に駆けつけたベガに対して、母親は弱々しく――しかし、冷たい言葉をつぶやきました。

「やっぱりおまえは、《私のあの子》じゃなかった……」

その言葉の意味を、ベガは直後に知ることになります。
母親の死後、彼女の研究所で遺品を整理する中で、ベガはあるものを見つけてしまいます。
それは母親の禁断の研究データのすべて
母親がかつて亡くした娘――《私のあの子》のパーソナルデータと記憶。
そして、それらを植え付けたクローン人間の観察記録
そのクローン人間とは、他ならぬベガの事でした

そう。
上記したベガの母親が行っていた研究とは、人間のクローニングの研究だったのです

死亡した大切な人物を復活させるために
クローン技術を用いる……奇しくも
それは黒崎神門と同じ行動です。

なお、神門はクローン技術を学んだ結果、『今の技術力では “最愛の妹のようなもの” の創造なら可能かもしれないが、完全な復活は不可能』と判断していました。
その後、彼は赤の世界のブレイバーの技術に希望を見出すのですが、それでも、故人を復活させるにはその人物の魂が必要という問題がありました。

おそらく、ベガの母親は《私のあの子》のパーソナルデータと記憶をクローン人間に入れることで、魂の問題を解決しようとしたのでしょう。
彼女がいかなる方法で愛娘の記憶を保管していたのかは謎ですが、それでも、それだけでその人の人格を完全に復活させるのには無理がありました。
ベガの母親がベガを疎んじてきたのは、《私のあの子》と同じ姿と記憶を持ちながら、違う人格を持っていたから――完全な《私のあの子》ではなかったから。
……なんだか、あづみ達のメインイラストレーターである藤真先生とも深く関係のある某魔法少女とその母親であったはずの女性を思わせる関係です。

その真実を知ったベガは深く、深く、絶望します。
しかもクローニングの不完全さが原因なのか、ベガは生殖能力を持っていませんでした
先程述べた彼女の夢想――幸せな自分の家庭を作ることすらままならない。
失意のままに、彼女は九頭竜学院大学に戻りました。

第二回でも述べましたが、バトルドレスを含む青の
世界のクローン人間達は生殖能力を持っていません。
工場で生産されるから不要、というだけでなく、
クローニング技術の限界もあるのかもしれません。

絶望と共に自室に戻ったベガは、半ば日常の行動に縋るようにメールを確認し、その中で見知らぬ人物からの怪しげなメールを見つけます。
そのメールの送り主の名はソル

ここから彼女の運命は、さらなる激動の時を迎えることとなります。


3.昏き織姫星

ベガの元に届いたソルと名乗る謎の人物からのメール。
その内容は、人類のすべてを記録するスーパーコンピューターを造るという壮大なプロジェクトへの勧誘でした。

得体の知れない相手からの途方もない規模の仕事への勧誘でしたが、全てを失ったベガは、その誘いに乗りました。
何か打ち込めるものがなければ、心が壊れてしまいそうだったから。

……後に明かされたソルの正体を考えると、彼は九頭竜学院大学の人員を調べて、ベガの存在とその才能を見抜いたのでしょう。
彼も同じ九頭竜大学に所属していたのですから。

もしかすると、形はどうあれ、ベガの母親も
また優秀な研究者であったことから、早い
段階で目を付けていたのかもしれません。

かくして始まったスーパーコンピューターの開発のプロジェクト。
当初の参加者はソルとベガの二人だけでしたが、しばらく後にポラリスアルクトゥルスと名乗る二人も開発に加わりました。
おそらく、彼女達もソルに誘われたのでしょうね。
ベガ達は直接生身で会うことはなく、ネット上のみの交流を続けながらスーパーコンピューターの開発を続けました。
ちなみに、開発費や資材は全てソルが用意したそうです。

さらに、四人だけでの開発が行き詰りかけたある時、ベガはある人物をプロジェクトに誘うことを考えました。
その人物とは、九頭竜大学で障害者用のパワードスーツについて研究していた後輩の青年――そして明言はされてませんが、ベガの初恋の相手でした。
彼はベガの誘いに乗って、アルタイルの名でプロジェクトに参加。
さらに彼は、自身の友人であるカノープスデネボラもプロジェクトに誘いました。

ご存じの方もいると思いますが、ベガは織姫星
アルタイルは彦星の学名です。アルタイルは
何を思ってその名を選んだのでしょうか。

合計で7人となった開発者達――後にアドミニストレータと呼ばれる人物達の英知を結集させて、遂にスーパーコンピューター、シャスターは完成しました。
そして、シャスターはソルによって起動され――青の世界の滅びは始まりました
シャスターが制御する無人戦闘機が人々を襲い始めたのです。

無人戦闘機が人々のデータを採取し、不要となった肉体を廃棄していく中、ベガの体にも異変が起こりました。
シャスターの暴走直後、気を失った彼女は、次に目が覚めた時、自身の肉体が失われ、自身の記憶だけがデータとして残ったデータ人間と化していることに気づきました
常人ならば、少なからずショックを受けそうな状況、なのですが、ベガは違っていました。
元より自分は、クローン技術で作られた人ならざる存在。
自身の不完全な肉体に愛着はなく、せいぜい自身の見た目であるアバターを自由に変えられるようになったという認識でしかありませんでした。

例えば、同じアドミニストレータのデネボラも
いくつか自分専用のアバターを用意して
利用していました。今は人間だった頃の
自分が成長した姿のアバターを使っていますね。

そして、ベガは改めて自身のおかれた状況を確認します。
データとなった自身が記録されているのは、山中に隠されたシャスターのミラーコピー
同じアドミニストレータ達も他のシャスターのミラーコピーに記録されているであろうことは容易に想像ができました。

そしてベガは無限にも等しい時間を持つデータ人間となった状況を利用し、ある計画を発想、実行に移しました。

それは、母の大願であった完璧な《私のあの子》を作り上げること

自身のシャスターを管理しながら、さっそく彼女はその研究にとりかかりました。
ほどなくしてベガは、自身の妹と呼べるクローン達を造り上げます
そのうちの半数は各アドミニストレータの護衛となり、残りの半数は治安維持部隊の隊長として各地に派遣されました。

そのクローン達が第20回で紹介したオリジナルⅩⅢ
奇数ナンバーがアドミニストレータの護衛を担当して
おり、こちらのType.Ⅴは上記のデネボラの護衛です。

そして、ベガ自身の元には彼女にとっての最高傑作と呼べる人物を残しておきました。
その最高傑作の名は、Type.Ⅰ”A-Z”
ベガは、自身の母でも《私のあの子》と見分けがつかないだろうと語っています。

もっとも、作中でのA-ZはオリジナルⅩⅢの中でも
特に機械的で、以前、リゲルが評した通り、中身は
あまり《私のあの子》に似てない気もするのですが……。

ちなみに、このオリジナルⅩⅢ開発計画、肉体面はベガが一人で作り上げたようですが、精神面――感情を出せるようにするカスタマイズを同じアドミニストレータであるカノープスとポラリスが施したりしています。

話をベガに戻しましょう。

オリジナルⅩⅢ開発の後、彼女はブラックポイントが開き、青の世界と過去の世界が繋がったことを知ります。
そして、過去の世界を調べていた彼女はある人物を見つけました。

未だに生存している《私のあの子》を

そしてベガは、存命の彼女――かつての自身と同じ名前を持つ少女、各務原あづみを自身の計画に利用することを目論見ます。

まず、リソース症候群で倒れた彼女に特殊なナノマシンを埋め込むことで、彼女のデータを取ると同時にリソース症候群を重体化させる状況を作り上げます
そして、ベガはそのナノマシンの症状を抑えるための薬も開発。
あづみを青の世界のために従わせるための状況を作り上げた上で、彼女の護衛兼篭絡用のバトルドレスを彼女の元に送りつけました。
それによって得られたデータを利用して、いずれは完璧な《私のあの子》を造りあげるために。

しかし、その送り込んだバトルドレス、リゲルはポラリスによって密かに感情をカスタマイズされていたこともあり、青の世界に対して叛逆。
過去世界の《私のあの子》、各務原あづみと共に脱走してしまいました。
……その後の顛末は、これまで説明してきた通りです。

ベガの過去についてはこれでだいたい話したのですが、あともう少しだけ。

先程、アルタイルがおそらくベガの初恋の相手だと述べましたが、これは蒼の追憶の中では明言されていませんでした。
ですが、後のストーリーでアルタイルがシャスターに叛逆するも、それに失敗して青の世界の治安維持部隊に捕らえられてしまうという展開がありました。
その後の、こちらのカードのフレーバーテキストでは……

ベガ「やっと手に入れた。私のアルタイル。」

……後にドラマCDでオリジナルⅩⅢの一人からヤンデレ呼ばわりされるのも納得の病みっぷりです。
彼女のこの拗れた想いの行きつく先については、また後程お伝えします。

また、少し気になるのはベガ、というかあづみの両親についての記述。
本編世界でのあづみの両親については少しあづみが言及していますが、特にそこからは変わった家庭であるような印象は受けませんでした。
父親が家を出て行った様子もありません。

漫画版のCode reunionでも、あづみの両親らしき人物が
登場している場面がありました。その時もあまり
変わった家庭という印象はなかったのですが……。

となると、ベガの父が家を出て行った理由は、《私のあの子》を復活させるために研究に没頭した妻についていけなくなったから、なのでしょうか。
この辺りは公式からの言及がないので、何とも言えないところですが。
また、《私のあの子》が死ぬことになった理由は謎の不治の病が原因であり、それはリソース症候群そっくりの病状だったようです。
やっぱり、リソースの影響だったのでしょうか。

少々、重めの内容が続いたので、少しだけ軽い話を。

先程も言った通り、アルタイルに強い思いを抱いているベガ。
彼女のアバターは非常に胸が大きいデザインになっていますが、ひょっとするとアルタイルの好みに合わせた結果である可能性があります。

ベガがアバターを使う以前の生身の姿……
事実上のあづみが成長した姿は未だに不明
です。どんな体形だったんでしょうね?

また、英雄達の軌跡 第二話 大惨事乙女大戦では、アイドルになることに憧れる場面が描かれていました。
ベガ様にも微笑ましい一面がある、と言えるのかもしれませんね。

ちなみに、実際にアイドルコンテストに出ることに
なったのはType.X。最初に登場したオリジナルⅩⅢ
だけあって、彼女はかなり出番が多めです。

これでこの時点で話せるベガの設定について一通り説明しました。
最初は私も《私のあの子》発言から、ベガの正体があづみの母親かと思っていたので、公式同人誌を読んだときは驚きました。
ていうか、この人の設定の重さも大概です。

その後のベガの動向については、これからのあづみの物語に合わせて紹介していきます。
そして、ここからは再びあづみの視点に戻って、彼女とリゲルの物語を追っていきたいと思います。


4.Mobius Loop

青の世界の施設で治療を受け、一命を取り留めたあづみは、一時的に引き離されていたリゲルと再会します。
しかし、そのリゲルの様子は今までと全く異なっていました。

ほとんど表情の変わらない顔。
淡々とした無機質な言動。

まるで機械のようなリゲルの態度にあづみは戸惑います。
そう、ベガの通告通り、リゲルはメモリーを消去され、これまでの記憶――あづみや他の人々との思い出を失っていたのです

リゲル「友情? 意味不明です。各務原あづみ、
青の世界のために戦いなさい。」

戸惑うあづみの耳に、突如何者かの声が響きます。
姿を見せないその人物はアルクトゥルスと名乗ると、あづみにある提案をします。

キミが素直に我々のために働くというのなら、リゲルに元の記憶を返してもいい。
ただし、その場合、キミはかつての友と殺しあう事になるかもしれない、と。

記憶が戻ればリゲルは以前の彼女に戻る。
確かに、それはあづみにとって嬉しいことでした。
ですが、その不穏な条件、そしてアルクトゥルスの声にどこか楽しんでいるような雰囲気を感じ取ったあづみは、ひとまずその提案を断ります。

現行のストーリーでも青の世界の悪役として
暗躍しているアルクトゥルス。初登場した
初代漫画版からその立場は全く揺らいでません。

アルクトゥルスの接触から、しばらく後のこと。
リゲルは自身のウェポンクラウドから取り出した『あるもの』をあづみに見せます。
それらはリゲルがあづみのために用意した様々な衣装――あづみにとってはリゲルとの思い出の品
中にはあづみが初めて見るものもありました。
しかし、記憶を失ったリゲルにとって、それらは全て邪魔なモノ
全て処分する、というリゲルを、あづみは涙目になって制止します。
様々なコスプレ衣装を守ろうとするあづみに、リゲルは冷たく言い放ちました。

「各務原あづみの趣味嗜好に関する認識を、改める必要がありそうです」

確かに、あづみ自身もコスプレは嫌いじゃない、
どころかノリノリで仮装したこともありましたが……。

……「もともとはお前が集めたものだよ!」というツッコミ待ちの状況ですが、冷淡なリゲルと哀しむあづみの姿が悲壮過ぎてあまりに笑えません。

それからしばらく後、上層部からの指令が届き、あづみはリゲルと共に緑の世界の領土へと出撃しました。
しかし、彼女達が向かったライカンスロープ達の村落付近の森林帯――かつてあづみ達が千歳達と初めて会ったその場所は、今再び苛烈な戦場と化していました
血みどろの戦いの中、リゲルもまた無慈悲に緑の世界の住人を次々と屠っていきます
その姿に、あづみは悲しみの絶叫をあげました。

ここまでして……私、生きたくない!!

……かつてあづみは命を奪い合う恐怖に怯えながらも、それでも自分の病を治すために、自分が生きるために戦いに臨んでいました。
そんな彼女が『生きたくない』と叫ぶ……。
余りにも重く、いかにこの時の彼女が苦しんでいたかがわかります。

ですが、そんな悲痛なあづみの言葉すら、今のリゲルには届きませんでした。
それどころか、なぜ自分が戦意のないあづみと組まされていることに疑問を持つ始末。
青の世界に非協力的な態度を淡々と非難するリゲルに、あづみは泣き崩れてしまいます。

リゲルが以前、ソトゥミサ放送局にゲストとして招かれた際に、あづみと出会う前の自身について言及する場面があり、そこで彼女は当時の自分を『冷酷な機械人形』と評していました。
もう二度とあの頃のような自分には戻りたくない、とも。
しかし、運命の皮肉か、あづみの命を救うためとはいえ、再び彼女は『冷酷な機械人形』と化してしまいました

何かと残念なイケメン・美女なキャラが多い
Z/Xですが、彼ら・彼女らから残念な要素が
無くなる・薄れる展開になることもあります。
たいていは悲劇的な理由で。リゲルもその一人です。

話を戻しましょう。
戦いの中でリゲルはライカンスロープ達の村落の方に向かい、その住人のうちの一人に狙いを定めます。
あづみの制止も無視し、容赦なくその手の刃が振り下ろされ――割り込んできた刃に受けとめられました
リゲルの前に立ち塞がる女傑の名は月下香
かつてとある竜をも退けた凄腕の剣士です。

月下香が手にする巨大な七支刀は先代の八大龍王
娑伽羅
が振るった宝具、七枝刀(ななさやのたち)
模した一振り。娑伽羅一門の中でも屈指の実力者
だけが、そのレプリカを授かることができます。

月下香はリゲル(あるいは青の世界の軍勢全体)を機械と評しますが、その言葉にあづみが反応しました。

「リゲルは機械なんかじゃない…!」

その言葉を合図に、二人の女剣士の激闘が幕を開けました。

また、あづみ達は知らないことでしたが、あづみ達が地上で戦っているのと同時期に、緑と青の龍の巫女、そして彼女達のパートナーであるドラゴン達もまた、その戦場の上空で睨み合っていました。

当時は竜の巫女達も自分達の世界こそが至高と
考え、敵対していました。特に赤・青・緑の
竜の巫女達はライバル意識が強かったですね。

地上では剣戟の音が響き渡り、上空では竜達の咆哮が轟く激戦地。
その激闘の結末は――緑の世界の勝利でした

リゲルもまた月下香に退けられました。
それはあづみの声に剣筋が鈍ったためか、単に月下香の力に圧倒されただけなのか、真実は誰にもわかりません。
敗走する中で、あづみは、そしてリゲルは何を思ったのでしょうか。

ちなみに、この戦いには以前、ソトゥ子を通じて
徳叉迦達の危険性をリゲルに伝えてくれた
剣淵相馬達も緑の世界側で参戦していました。
あづみ達は彼らとニアミスしたようです。

失意の中、青の世界の拠点に帰還したあづみ達。
このリゲルとのすれ違いと凄惨な戦いの日々は、あづみにとって余りにも過酷なものでした

Z/Xの物語で、主人公達が様々な苦難に見舞われるのは決して珍しいことではありません。
まあ、物語である以上、山あり谷ありなのは当たり前かもしれませんが。
ですが、そういった苦難にたった一人で立ち向かう羽目になるということはあまりありません

例えば、同時期に戦斗怜亜を始めとする神器のパイロット達も、青の世界の造反者として追われる身となっていました。
こちらも色々と大変な事態になりつつも、三人と三機で一緒に行動していることもあり、苦労はしていてもどうしようもないほどの絶望的な雰囲気ではありませんでした。

この三人が本格的にトリオとして行動する
ようになったのはこの辺りからでしたね。

そして、ゼクスの主人公であるプレイヤー達はパートナーゼクスとの二人三脚で歩むもの
上柚木綾瀬の場合、当初は他のプレイヤーと共に行動することがほとんどありませんでしたが、その隣には、暴力的でスケベな、ですがいざという時には頼りになるパートナー――ズィーガーが常にいてくれたことは既にお話した通りです。

特に嫉妬のBAD END前後――レヴィーの依り代に
されていた時期に綾瀬がどうにか耐えられたのは、
ズィーガーが彼女を支えてくれたおかげでした。

まあ、時にはパートナーと離れ離れになってしまう状況があったプレイヤーもいますが。
ですが、そういった面々の場合でも、大抵は誰かが一緒にいたり、ちょっかいをかけてくることが多かったでので、完全に孤独ではなかったと言えるでしょう。

――ですが、この時のあづみは余りにも孤独でした
記憶を奪われたリゲルは冷酷な機械人形と化し、他に頼れる人は誰もいない……どころか、自分やリゲルのことを悪意を持って利用しようとするものばかり
誰も信じることができない状況に、あづみの心は軋み続け、そして――。


5.次回に続きます

ここまででだいたい第12弾から第16弾くらいまでのあづみ達の物語となります。
前回とは一変して、ベガの悲劇的な過去に、心を失ったリゲルとそれに苦しむあづみと重い回となってしまいました。
この後、世界を歪ませるある存在が降臨したことによって、あづみはさらなる窮地に追いやられます
ですが――。

ここから先の話は、また次回に。
それではまたお会いしましょう!

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