君はメカンおじさんのメカンを買うか?
これは、自分の作品が手に取ってもらえないクリエイターへ送る、メカンおじさんのお話。
君が散歩していると、ふと看板が目に入る。
”メカン買ってください!”
そこでは、君とは全く縁もゆかりもないおじさんが、メカンとやらを売っていた。
見た感じ、メカンはどうやら果物らしい。
形を見ると、パイナップルをもう一回りくらい分厚くした皮を持っている。家にある包丁じゃあ、とてもじゃないが切れなさそう。
専用のノコギリか何かが必要そうだ。
(だからといって、ノコギリは併売されていない)
おじさんは「メカン買ってください! 美味しいのでメカン買ってください! 買ってくれないと困ります! メカンの苗が育てるお金がないんです!」と必死に叫んでいる。
メカンの値段は、サイズによってマチマチだが、500〜1000円程度だろうか。
試食などは置いていない。おじさんが、メカンを手に叫んでいるだけだ。
さて、君はメカンを買って食べたい、と思うだろうか。
あなたが、果物と見ればなんでも買う果物マニアか、石油王のようにお金と時間と暇を持て余してでもない限りは買わないだろう。
実は、ここに作ったモノが人の手に取られない理由が、全て詰め込まれている。
ではメカンおじさんが何者かにも、少し考えてみよう。
メカンおじさんは、果物が好きで、特にみかんとメロンが好きだった。
ある日、メカンおじさんは考えた。みかんの甘さとメロンの芳醇な果肉感を合わせたら、とても美味しいのではないかと。
メカンおじさんは仕事の合間を縫って、新たな果物生み出すことに注力した。
おじさんの努力の甲斐あり、それは見事に完成し、みかんとメロンといいとこ取りをしたメカンが完成した。
メカンは、友人のおじさん達に食べさせると大変好評だった。お母さんだって絶賛してくれた。
あまりに良い出来であったし、おじさんは、メカンを友人だけじゃなくて、世間にも売ってみたいと考えた。
貯金を投げ打ってメカンを大量生産し、出店でメカンを売り出したのだ。
しかし、結果はご覧の通り。ほとんど、買ってもらえず、おじさんは家に帰って一人「メカン……こんなにも美味しいのにな」と涙をこぼす。
これがメカンおじさんの正体である。少しは買いたい気持ちが湧いたかもしれないが……最初にメカンを見たときの気持ちを忘れないでほしい。
このメカンは、買われない。
メカンの味は、素晴らしいにも関わらず、だ。
まず、ここで一つ伝えたいのは「頑張って良いものを作った」ことと「人の手に取られる」ことは全く別の話であるということだ。
「良いものを作れば」「多くの人に見てもらえる」という幻想を捨てねばならない。
では、視点をメカンおじさんから通行人に戻す。
なぜ、このメカンを君は買わなかったのか。ざっと下記の要因が考えられるだろう。
・知らないおじさんだから※
・メカンがなんなのかわからない
・食べるのに専用のノコギリが必要
※昨今のジェンダーに沿って言えば、おばさんでも変わらない。子ども、アイドル等存在に価値があるモノ以外と認識してくれていい。
これは非常に由々しき事態である。なぜか? 順に説明していこう。
少し気になった商品を見たとき、通行人は購入するか悩む。
しかしながら、当然、時間やお金は有限である。
お金は血と涙の結晶である。毎日頑張って頑張って働いて、ようやく浮いた自由に使えるお金。
そして、残業もある中どうにかして手に入れた余暇。
あなたが石油王や御曹司や令嬢でないなら、あなたにも身に覚えがあるだろう。お金と時間の価値の重さを。
その血反吐を吐いて得たお金と時間を「払うに値するのか?」とユーザーは常に問うてくる。当たり前だ。考えなしに浪費しないし、考えなしで買ってくれることを前提に行動するのは、株を守って兎を待つ人と同じである。
これをまず心に刻んで欲しい。
本当に決して大袈裟ではないことを認識して欲しい。
世の中には、果物づくりのプロがいて、甘くて安心美味しい果物が山程あり、「美味しい果物」を食べるだけなら安全な選択肢がたくさんある。そこにお金や時間を使わず、なぜわざわざメカンを買わねばならないのか。
そんな、大事なお金と余暇をいただくために「これは価値のあるものだ」と伝え無くてはならない。あなたの血と涙の結晶に応えうるものだと、クリエイターにはそれを説明する義務がある。
なのにメカンおじさんは何をしていた? 何もしていないのと同義である。
ユーザーは「買わない理由の加点方式」を無意識に行う。
そうして、許容量を超えたとき「買わないでおこう」という結論がくだされるのである。
「知り合いからのススメか…?」
No→買わないpt+20点
「美味しそうなモノか?」
よくわからない→買わないpt+20点
「ちょっと食べてみようかな?」
専用の道具がいるのか…試食もないのか……→ 買わないpt+20点
「タダなら…」
良い値段する→+20点
さて、この通行人の許容量は50点までだった、オーバーキルである。一瞥しただけで立ち去ることだろう。そんな危ないモノに、金と時間は提供できない。現代にはメカンを食べずとも美味しい果物が溢れているのだし。
「食べるのに苦労するし、値段もかかるが、めちゃくちゃに美味しいのだから食べてくれるだろう」とメカンおじさんは考えていた。
しかし、美味しいと知っているのはメカンおじさんだけである。
通行人からしたら、「美味しいかどうかわからない」モノであることを念頭に置かないといけない。自分が知っていることは人も知っていると錯覚しがちである。
おじさんの間違いはここにあった。
では、みんなメカンおじさんにアドバイスをしてほしい。どうやったら、このメカンおじさんの商品を手に取ったか。
メカンおじさんの友人やお母さんの立場になってはならない。通行人として、どうしたら買ったのか。
それこそが、メカンを売る秘訣である。
一応、補足だが「メカンを作る作業が楽しい」人はアドバイスなんて考える必要はないだろう。これらの話はあくまで「作ったメカンを多くの人に手に取ってもらいたい」と考えるメカンおじさんに向けての話である。
メカン作りが楽しくて、友人やお母さんに美味しいと言ってもらって満足するならそれで充分である。
これは煽りでもなんでもなく、趣味活動そのものだから、これで充分なのだ。
さて……メカンおじさんへのアドバイスは出てきただろうか?
そんなアドバイス考えるの面倒くさい! という方向けに、ここから有料記事(公開12時間後以降)で、メカンおじさん改造計画をお話する。面倒くさいはお金で買えるのです。
大前提として、
メカンおじさん=クリエイター
通行人=購入するか迷っているユーザー(クリエイターのファンではない)
メカン=作品(出来は良い)
メカンおじさんの友人やお母さん=クリエイターの身内で、無条件に評価購入してくれる人ら
の比喩だということはご理解いただけているものとして解説していく。
1.購入してもらうために必要なメンタル
ここから、メカンおじさんをボコボコにしていく。皆さんは、メカンおじさんのがどこだと感じただろうか?
「メカン買ってください! 美味しいのでメカン買ってください! 買ってくれないと困ります! メカンの苗が育てるお金がないんです!」
第一ポイントはここである。
このメカンおじさんに対する正直な声を言うならば「知ったことか」である。九割方の人間はメカンおじさんの事情なんて汲んでくれない。
中には、善良な道徳心を兼ね備えた美しい人もいる。こういった慈悲の精神で購入されることもあるだろう。だが、我々はクリエイターである。施しで作品を購入されてどうする? 違うだろう。
第一、施しを前提には基本的に未来はない。その場しのぎの物乞いに過ぎない。
これらの解決方法を紹介する前に……
「他人に行動させたい」とき、どうすればよいか、皆さんは御存知だろうか?
簡単に言えば2つある。
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