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あなたの生活の一部になってみたかった

それは温かくて私の心を満たしてくれている気持ちだったのに、不思議ですね。口から零れた瞬間に毒のように広がって、あなたとわたしのおはようからおやすみまでを壊していくような気がしています。少しずつほつれていく手と手の絡まりは、だんだんと冷たさをおびながら、握りなおす手の力さえ抜け落ちていて、正解を見つけることができませんでした。痛くて、身動きが取れないのに、欠伸が伝染させる空気の生暖かさが余計に苦しくさせます。
あなたの生活の一部になってみたかったなあ、あなたの、日常の一瞬になりたかったなあ、あなたの、あなただけの夜に混ぜてくれたらなあ。いまはもう、水中にいるような浮遊感で足もつかず、ただ、私が吐いた小さい呼吸の、水面にのぼる小さい泡を見上げながら、ひかりに反射するきれいな泡のゆらゆらとした表情がまぶしくて、愛しいなと思ってしまったんです。ああ、わたしはあなたに見つけてもらおうとしてしまう女々しさだけで、なんとか息をしていたんだね。

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