それぞれが人生の金メダリストなんだ
小学校に上がったばかりのみきは、ほかの子供たちが自分よりずっとできがいいと思うと、恐くてほかの子供たちの輪に入れずにいました。どうしてこう思うようになったかというと、みきは体育の時間の着替えがクラスで一番遅かったし、お絵かの時もいつもみんなとちがう絵を書くことが多く、先生にほめられたことがなかったからです。
ずっとお父さんやお母さんにもこの不安をうち明けることもできずにいました。
でもいつまでもこの不安を一人で抱え込むことができず、ついにお母さんにこの不安を打ち明けました。まさかわが子がここまで追い詰められていたとは思ってもいなかったお母さんは、とっさにこう言うのが精いっぱいでした。「みき、あなたが一生懸命に努力しているのだから、それでいいじゃないの。」でもみきの心はスッキリしませんでした。
お母さんも自分の答えに引っかかるものを感じて、仕事から帰って来たお父さんにもみきの不安をうちあけます。
お父さんは真剣な面持ちでじっと考えた末にこう答えました。「オリンピックでメダルを取る選手を見ていると、本当に感動するしすごいよな。でもその裏ではものすごい努力をしているんだよな。トップに立つ人ほどものすごい努力をしている。努力する人が最後には勝つのさ。みきも努力すれば必ず上手になっていく事を教えてやってほしいいんだ。
「そうだみきに大事な事を教えてやってほしい。」
いいかい、人は誰にでもすごい才能が備わっているいるんだよ。
そうだな目に見えない金メダルと言ってもいいかもしれない。
その才能をどうやって引き出すか。
それは自分が好きな事を一生懸命にやることだよ。
そしてもっと大事な事はどんな状況でも、自分を最後まで信じ抜くことだよ。
これができないと何をやっても挫折してしまう。
人と比較させないで今日の自分と昨日の自分とを比較するんだよ。
人から学ぶことは多いけど、人と自分を比較してはいけないよ。
たとえ自分が相手より優位に立っていたとしてもね。
お互いに称え合うことが大切だよ。
なぜってみんなそれぞれが素晴らしいものを持っているからね。
だってこの世に生まてくれるすべての命は、たくさんの細胞の中で一番優秀な細胞で作られるからさ。誰だってみんなすごい力を持っているんだよ。だからみんな生まれながらの人生の金メダリストなのさ。
そしていいかい、みきにそれはあなたは無理と言ってはだめだよ。
せっかくの才能の芽を摘んでしまうからね。」
お父さんのその言葉に涙を流してうなづくお母さんでした。
翌朝お母さんはお父さんから聞いた事をみきに話します。
それを聞いたみきの瞳はキラキラと輝きだした。
そしてお母さんはみきを笑顔で学校に送り出します。
「みきの中の金メダルを信じているからね。みきは素直でとてもいい子だよ。
人と比べないで今日の自分と昨日の自分を比べるのよ。」
「さあいってらっしゃい」
みきは「今日の自分と昨日の自分」とつぶやきながら、元気に家を出て行った。
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